イギリスに学ぶフェアトレードの取り組み│日本との違いや理由について解説

イギリスに学ぶフェアトレードの取り組み│日本との違いや理由について解説
SOCIETY

途上国と先進国における公正・公平な貿易を目的としたフェアトレード。

「顔の見える商品」や「トレーサビリティの取れた商品」、「SDGs達成への取り組み」などが日本でも注目されている中で、フェアトレードの推進が目指されています。

フェアトレード発症の地であるイギリスの実態や根付いている背景を紐解いていくことで日本にフェアトレード普及させるためのヒントを見つけていきましょう。

フェアトレードの取り組み│イギリスと日本の違い 

ケンブリッジ

イギリスと日本ではフェアトレードへの取り組みにどのような差異があるのでしょうか。

実際のデータなどを用いて両国の違いを紹介します。

まずイギリスフェアトレード認知率は約8割です。うち国際フェアトレード認証ラベルがついている製品の安全性や質を9割の人々が信頼していると言う調査報告もあることから、人々の生活においてフェアトレードが身近であり浸透していることが伺えます。

一方日本のフェアトレード認知率は、2020 年時点で34.2%。

イギリスと比較すると約半分に留まりますが、2012 年の認知率25.7%からは大幅な躍進を見せる結果となりました。

そもそも「認知率」とはその内容について正しく理解している人の割合のことです。

言葉の意味を正しくは理解していないが、見聞きしたことがある人の割合「知名度」を見てみると2020 年は 54.3%。

2012 年の 50.3%から8年の期間があることを考慮すると、フェアトレードを全く知らない層に向けた普及はあまり広まっていないと読み取ることができます。

イギリスのフェアトレードの取り組み

セント・ポール大聖堂 

インターネットから同じように情報を得ることができる現代社会において、なぜイギリスと日本のフェアトレード普及率は開きがあるのでしょうか。

イギリスのフェアトレード活動や背景から、その理由を考えていきます。

教会の存在

イギリスのフェアトレード普及率の高さの一因として、キリスト教の寄付文化が背景にあります。

寄付や募金活動を始め、ボランティア団体や活動などがキリスト教会を中心に盛んに行われてきました。

日曜礼拝に行けば寄付、チャリティーイベントで寄付、富裕層が寄付……

など人々の生活には古くから「施す」文化が浸透しています。

その中心となる「教会」が積極的にフェアトレード商品の販売活動を地道に続けてきたことで、人々の生活圏から自然にフェアトレード文化が広まっていったのです。

フェアトレードスクール

イギリスには「フェアトレードスクール」と呼ばれるフェアトレードに関する授業、イベントや社会科見学などの具体的な行動、学校単位でのポリシーの策定やフェアトレード商品の利用などを通してフェアトレード推進拠点となる学校が1000校を超えます。

意識、行動、達成の3ステップが組み込まれていることで、学生時代にフェアトレードに親しみ、自らアクションを起こす主体性が養われているのです。

フェアトレードタウン

イギリスは、世界で初めて「街を挙げてフェアトレードを推進すること」を目的としたフェアトレードタウンが認定された国です。

フェアトレードタウンは一度認定されれば永続的に資格があるものではなく、2年に一度更新が必須条件のため、おのずとフェアトレードが身近となるように努力を重ねることとなります。

フェアトレードマークのついた製品を行政や市民、地元商店などが一体となり推進する運動は世界中に広がりを見せています。

日本で参考にできること│イギリスに学ぶフェアトレードの取り組み

シティ

フェアトレードスクールの推進

日本のフェアトレードスクールは、現状静岡文化芸術大学がフェアトレード大学として誕生したのみ。

高校以下の学校を対象とした「フェアトレードスクール・プログラム」をフェアトレードフォーラムジャパンは推進するとしています。

現状学園祭でのフェアトレード商品の販売イベントや出張授業などの取り組みは存在しますが、今後義務教育レベルでSDGsなどを交えて継続的にフェアトレードを学ぶ体制作りが求められています。

企業のサスティナビリティ戦略

企業にもSDGs達成のため具体的な取り組みが求められています。

就職活動中の学生や投資家たちも、企業のサスティナビリティへの向き合い方を見て判断をする時代だからです。

販売する商品自体をフェアトレード商品に切り替えること、来客用に出すコーヒーを切り替える、原材料をフェアトレードへと転換させることなどの取り組みがフェアトレード普及と企業のイメージアップにつながり、結果的に双方のメリットとなるのです。

フェアトレードタウンの推進

フェアトレードタウン発祥の街、イギリスのガースタンでは、街の商品をなるべくフェアトレード製品にしようという運動の末、70%まで普及させた歴史があります。

現在国内では6都市がフェアトレードタウンとして認定されていますが、さらに多くの街がフェアトレードタウン運動に加わることでフェアトレード推進は前進することでしょう。

そして日本におけるフェアトレード普及には明るい兆しも見えてきています。

NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパンの発表によると、2021年のフェアトレード市場は前年の2020年と比較すると20%増の結果が出ているからです。

報告の中では、以下3つの理由が市場増加の要因としています。

・コロナ禍を経た家庭用フェアトレードコーヒー、フェアトレードチョコレートの販売増加

・ノベルティなどのコットン製品や紅茶の売上

・小売主要大手各社のサステナビリティ戦略

コロナ渦におけるライフスタイルの変化や、Z世代を中心としてサスティナビリティやエシカル消費の機運は今後も高まると予想されるのではないでしょうか。

まとめ│イギリスに学ぶフェアトレードの取り組み

ロンドン

途上国や生産地の人々の人権保護や労働状況の改善を目的として行われてきたフェアトレード。

先進国であるイギリスの実情から、普及率のまだ低い日本に参考となるポイントなどを探りました。

チャリティー色などが背景にあるイギリスと比べて、寄付文化があまり根付いていない日本ではまったく同じ方法で輸入して普及させるよりは、震災などの災害時に盛り上がりを見せ定着しつつある「応援消費」などの文脈などを訴求するなど独自の方法にアレンジすることでよりフェアトレードが身近な存在となっていくのではないかと思います。

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