フェアトレードは誰が広めた?はじまりや定義を丁寧に解説

フェアトレードは誰が広めた?はじまりや定義を丁寧に解説
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フェアトレードという言葉は聞いたことがあっても、その背景や広めた人物まで知っている人は多くありません。世界各地で行われているフェアトレードは、公正な取引を通じて生産者の生活向上や環境保護を目指す仕組みです。

その始まりは1940年代の慈善貿易活動にさかのぼり、1960年代の「Trade not Aid」という理念や、1988年の認証ラベル導入によって大きく発展しました。

さらに、Frans van der HoffやNico Roozenなどの活動家や、国際認証機構FLOの設立が世界的普及を後押ししました。この記事では、フェアトレードを広めた人物や団体、日本での普及の流れ、そして今後の課題や展望までを時系列で解説します。フェアトレードの歴史と意義を理解し、日々の買い物の選択肢を見直すきっかけにしてみてください。

フェアトレードの定義と基本理念

フェアトレードの定義と基本理念

フェアトレードは、フェアトレード・ジャパンによると、立場の弱い生産者や労働者が安定した収入と人権を守られた環境で働けるよう、取引条件を公正に整える仕組みです。

より良い価格、適切な労働条件、環境への配慮を軸に、消費者・企業・生産者をつなぎ、持続可能な調達を後押しします。認証や基準を通じて第三者が客観的に確かめる点が特徴です。詳しく知りたい方は下記の記事でやさしく解説しているので、併せてご覧ください。

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フェアトレードの仕組みとは

フェアトレードでは、国際基準に沿って取引が行われ、一定の条件を満たした産品に認証ラベルが付与されます。製品価格には、生産者の生活を支える最低価格と、地域の設備や教育に充てるプレミアムが含まれます。

第三者機関がサプライチェーン全体を監査し、基準遵守を確認します。こうした仕組みにより、従来の取引で埋もれがちな小規模生産者の交渉力が高まり、消費者は「背景の見える選択」がしやすくなります。

国際認証制度の基準と役割

国際フェアトレード基準は、労働安全、児童労働の禁止、環境保全、組合結成の自由など、社会・経済・環境の要件を定めています。適用対象は、小規模生産者団体、雇用労働のある農園、トレーダーなどで、対象や産品に応じて要件が調整されます。

審査は独立した認証機関が担い、監査の透明性と公平性を保ちます。これにより、ラベルの信頼性が維持され、企業の責任ある調達と消費者の納得感が両立します。

参考:国際フェアトレード基準と認証制度(フェアトレード・ジャパン)

フェアトレードのはじまりと発展

フェアトレードのはじまりと発展

フェアトレードは、戦後の「慈善貿易」から始まり、支援から自立を促す「開発貿易」へ、さらに市場全体に変化を起こす取り組みへと段階的に進化しました。草の根の販売から専門店の誕生、そして認証ラベルの導入を経て、一般の小売へ広がっていきます。

参考:フェアトレードの歴史(日本フェアトレード・フォーラム)

1940年代:慈善貿易の起点

第2次世界大戦直後、手工芸品を買い取りバザーで販売する活動が芽生え、生活改善を願う「慈善貿易」と呼ばれました。欧米の協力団体が中心となり、難民や女性の手仕事に市場をつくる試みが広がります。

当初は品質よりも支援の意思が重視され、限定的な層に支えられていましたが、のちの運動の母体となる重要な動きでした。やがて、この支援型の取り組みが、構造的な貧困の是正へ視野を広げていきます。

また、一説によると、アメリカの国際協力NGOでボランティアをしていた女性が、プエルトリコの女性たちの手工芸品を買い取り、バザーで販売した活動も、この時期のフェアトレード的な試みとして語られています。

1960年代:「Trade not Aid」の理念

1960年代に入ると、単発の寄付ではなく、継続的な取引で自立を後押しする考え方が鮮明になります。「Trade not Aid」というスローガンのもと、買い手と生産者が対等な関係で結ばれる仕組みづくりが進展しました。

専門の輸入団体や販売ネットワークが整い、後に「フェアトレード」と呼ばれる実践の土台が形づくられます。支援から自立、そして権利の尊重へと、目的が段階的に進化した時期です。

初のWorldshopと欧州での浸透

1960年代後半、欧州ではフェアトレード品を扱う専門店が各地に生まれ、教育や啓発と販売を一体で進める形が広がりました。これらの店舗はボランティアに支えられ、産品の背景や貿易の不公正を伝える拠点として機能します。

世界の消費者が現地の生産者とつながる入り口となり、後の主流市場への展開を後押ししました。専門店の存在は、認証ラベル以前から「買い物で社会を変える」という実感を生む舞台でした

1988年:ラベリングによる普及の転機

1988年、オランダで世界初のフェアトレード認証ラベル「Max Havelaar」が立ち上がり、専門店の枠を超えて一般小売へ展開する扉が開きました。ラベルは基準遵守を第三者が確認した証であり、消費者は店頭で簡単に見分けられるようになります。

コーヒーを皮切りに、認証対象は農産品へ広がり、フェアトレードは「特別な店の品」から「日常の選択肢」へと位置づけを変えました

フェアトレードは誰が広めたのか

フェアトレードは誰が広めたのか

フェアトレードを広めたのは一人ではありません。草の根のNGOや宗教団体、欧州の専門店ネットワーク、そして認証ラベルを設計した実務家たちが役割を分担しました。現場と市場、理念と仕組みをつなげたことで、地域の活動が国際的な運動へと成長しました。

NGOや宗教団体の草の根活動

初期のフェアトレード運動は、教会や国際協力NGOが中心となって始まりました。これらの団体は、バザーや共同購入を通じて小規模生産者と直接取引し、支援ではなく対等な商取引の重要性を伝えました。

活動では、現地の生産背景や生活状況を紹介することで、消費者の理解と共感を高めています。
こうした地域レベルの地道な活動が、後に認証制度を受け入れる土壌となり、国や地域を越えたネットワーク形成につながりました。

Max Havelaar設立の立役者たち

1988年にオランダで設立されたフェアトレード認証ラベル「Max Havelaar」は、流通と消費を一気に変える契機となりました。

その背後には、開発NGO「Solidaridad」などの団体関係者が存在していました。小売業との連携や物流の設計を通じて、店頭で認証商品を選べる環境を整えたのです。

さらに認証ラベルの導入により、専門店以外のスーパーマーケットや量販店でもフェアトレード商品が広がり、消費者層の拡大に大きく貢献したといえるでしょう。

Frans van der HoffとNico Roozenの貢献

神父であり経済学者でもあるFrans van der Hoffは、メキシコのコーヒー生産者と協力し、生産者が生活できる価格設定や取引条件の確立に尽力しました。

Nico Roozenは、開発団体の立場から流通面を整え、認証商品の市場投入を推進。Frans van der HoffとNico Roozenの二人は現在のフェアトレードを形作るエンジンを担い、1988年に「Max Havelaar」を創設するに至りました。

この取り組みはフェアトレードを一般市場に浸透させるモデルとなり、その後の国際認証制度の発展につながっていったのです。

参考:Max Havelaarの歴史(Fairtrade International)

国際認証機構FLOの成立と展開

1990年代後半、各国の認証団体が独自に基準を運用していたため、国際的な統一が課題として存在していました。そこで1997年に国際フェアトレード・ラベリング機構(FLO、現Fairtrade International)が設立され、共通の基準と監査体制が整えられます。

この統一化により、認証ラベルの信頼性が高まり、国境を越えて同じ基準で取引できる環境が整った結果として、国際的な普及が加速し、企業や自治体の調達方針にも採用されやすくなりました。

日本におけるフェアトレード普及の動き

日本におけるフェアトレード普及の動き

日本では、市民団体の草の根活動と企業・自治体の取り組みが相互に影響し合い、認証制度の浸透や教育現場での学びへと広がってきました。
特にタウン認定や大学の推進体制が、地域全体の参加を後押ししています。

  • 市民団体による導入期の活動
  • フェアトレードタウン認定の広がり
  • 学校・学生団体による啓発活動
  • 企業による認証商品の展開

地域・教育・企業が役割を分担することで、「店頭に並ぶ品を選ぶだけ」でなく、学びや調達の方針にもフェアトレードの視点が組み込まれやすくなりました。それぞれ詳しく解説します。

市民団体による導入期の活動

1990年代以降、フェアトレード専門ブランドや輸入団体が登場し、通信販売や常設店での提供が進みました。市民が主催するイベントやスタディツアーも盛んになり、作り手の物語と品質を同時に伝える工夫が広がります

やがてラベル運動の受け皿も整い、認証の仕組みを通じた流通が拡大。生活者の支持が積み上がり、自治体や企業が動き出す下地ができました。

フェアトレードタウン認定の広がり

2011年、熊本市が日本で初めて、かつアジアで初めてのフェアトレードタウンに認定されました。その後、名古屋市や逗子市、浜松市、札幌市などへ広がり、行政・議会、商店・企業、学校、市民団体が協働する体制が各地で整います

地域ぐるみの購入・利用・教育の実践が可視化され、参加の裾野が着実に広がりました。タウン認定は、地域の継続的な関与を促す仕組みとして機能しています。

学校・学生団体による啓発活動

大学や高校では、サークルや研究会がフェアトレード月間の企画や学内販売、講演会を通じて学びと体験を結びつけています。大学が推進組織を置き、調達や生協での取り扱いを増やす例も増加しています。

授業や探究活動に組み込むことで、消費の選択が社会課題の理解と直結し、卒業後の行動変容にもつながります。若い世代の実践は、地域の活動とも連携しながら継続性を高めています。

企業による認証商品の展開

近年は、小売や外食、飲料・食料メーカーが認証原料の導入を進め、コーヒー、チョコレート、バナナ、コットンなどの分野で選択肢が増えました。企業が原料や商品の仕入れ基準にフェアトレード認証を組み込み、店頭や広告でラベルの意味を説明する取り組みも見られます。

企業が主力商品で活用することで価格や供給の安定性が高まり、家庭や職場での利用シーンが拡大しています。フェアトレード商品は下記の記事で詳しく解説しています。興味のある方はぜひお読みください。

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フェアトレードの現状と今後の課題

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フェアトレードの認知は広がりましたが、国内市場全体で見ると選択はまだ限定的です。認証や価格、物流の課題を越え、SDGsと結びつけて社会実装を進める視点が重要です。

消費者の信頼と意識の現状

フェアトレードラベルの存在を知る人は増えていますが、価格が高いという印象や、購入による効果が見えにくいことから継続的な選択につながらない場合があります。背景となる生産者の生活改善や環境保全の成果を、事例や数値で明確に伝えることが重要です。

また、店頭やオンラインでの情報提供を充実させ、購入が社会的貢献につながることを消費者が実感できる環境づくりが必要です。

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認証制度と価格・流通の課題

国際基準の透明性や監査の信頼性はフェアトレードの根幹を支える要素ですが、認証の取得には費用や時間がかかり、小規模生産者や中小企業にとって大きな負担になる場合があります。

さらに、輸送コストや取引量の制約が価格上昇の原因となり、消費者が手に取りにくくなることもあります。こうした課題を解決するためには、共同認証の導入や長期契約の拡大、ICTを活用した効率的なトレーサビリティ管理などが有効です。

SDGsとの連動による将来展望

フェアトレードは、SDGsが掲げる複数の目標に直接つながる取り組みです。貧困削減、働きがいと経済成長、ジェンダー平等、気候変動対策など、さまざまな分野に貢献できます

これらとの関連性を明確にし、企業のESG投資や自治体の調達方針に組み込むことで、取引量や認証面積の拡大が期待されます。教育機関や地域活動との協働を通じて、若い世代が主体的に関わる仕組みを整えることも、持続的な普及に欠かせません。

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フェアトレードは、戦後の慈善的な売買活動から始まり、1960年代の「Trade not Aid」の理念、1988年の認証ラベル誕生、1997年の国際統一基準の確立を経て世界に広がりました。

その過程では、宗教団体やNGO、専門店ネットワーク、そしてFrans van der HoffやNico Roozenなどの実務家が重要な役割を果たしました。日本では市民団体、教育機関、企業、自治体が協力し、タウン認定や啓発活動を通じて身近な存在として定着しつつあります。

今後は、認証制度の改善やSDGsとの連動によって普及をさらに進め、消費者が社会的背景を意識した選択をしやすい環境づくりが求められていくでしょう。

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