カカオが高騰しているのはなぜ?サステナビリティ観点から考える対応方法

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近年、カカオ豆の価格が急騰し、板チョコレートをはじめとするチョコレート製品の価格にも影響を与えています。
チョコレートは世界中で愛されるスイーツですが、その原料となるカカオは供給面でさまざまな課題を抱えています。
価格高騰の背景には、気候変動、労働環境の問題、需要の増加などが関係しており、サステナビリティの観点からも無視できない状況です。この記事では、カカオ価格の高騰の原因と、私たちができる対応策について解説します。
カカオが高騰している現状
現在、世界的にカカオ豆の価格が上昇しており、それに伴いチョコレート製品の値上げが続いています。特に2024年には、カカオの取引価格が1トンあたり12,000ドルを超え、過去最高値を記録しました。この価格上昇により、企業の原料調達コストが増加し、消費者価格への転嫁が避けられない状況となっています。
カカオの価格高騰は、さまざまな要因によって引き起こされています。特にカカオの主要生産国であるコートジボワールやガーナでは、気候変動の影響により収穫量が大幅に減少しています。さらに、カカオ農家の人手不足や経済状況の悪化も、カカオ豆の供給に影響を与えています。
例えば、板チョコの価格が前年より40%以上上昇しているケースもあり、消費者への影響は無視できません。チョコレートメーカー各社は、原料費の高騰を受け、製品の内容量を減らす「ステルス値上げ」を実施するケースも増えています。これにより、価格自体は据え置きでも、消費者が手にするチョコレートの量が減少する傾向にあります。
また、高級チョコレート市場では、より高品質なカカオを使用する製品の価格がさらに上昇し、プレミアムチョコレート市場全体が影響を受けています。一方で、消費者の間では、フェアトレード製品やオーガニックチョコレートへの関心が高まっており、環境や社会的な観点からもカカオ産業の変革が求められています。
では、なぜカカオの価格がこれほどまでに高騰しているのでしょうか?
カカオ豆が高騰している理由
カカオ価格の高騰には、いくつかの主要な要因があります。
1. 気候変動による生産量の減少
カカオの主な生産国であるコートジボワールやガーナなどの西アフリカ諸国では、異常気象の影響で収穫量が減少しています。エルニーニョ現象や異常な降雨パターンが続き、カカオの病害が増加したことも生産低下の一因です。

2. 労働環境の問題と人件費の上昇
カカオ農園での児童労働問題が国際的に指摘され、サステナブルな生産を目指す動きが加速しています。フェアトレード認証やリビングウェイジ(生活賃金)を支払う取り組みが求められる中、農家のコストが上昇し、それが価格に反映されています。

3. 需要の増加
世界的にチョコレートの需要が高まっていることも価格上昇の要因です。特にアジア市場では中間所得層の増加に伴い、チョコレート消費が拡大しています。また、高カカオ含有量のチョコレートやオーガニックチョコレートの需要も増えており、供給が追いつかない状況です。

板チョコレートの価格も上昇している
カカオ豆の価格高騰がチョコレート製品の価格に直結しています。特に板チョコはカカオの使用量が多いため、影響を受けやすい商品です。世界的にカカオの供給が不安定になっており、気候変動や病害、主要生産国の労働環境の変化など、さまざまな要因が価格の上昇を引き起こしています。
大手チョコレートメーカーもこうしたコスト増を反映し、価格改定を発表しています。以前は手軽に購入できた板チョコも、今では少し高価な嗜好品へと変わりつつあります。この傾向は今後も続く可能性が高く、消費者にとっては、チョコレートを買う際のコスト負担がますます大きくなることが予想されます。
2025年のバレンタインデーにも影響があった
2025年のバレンタインデーは、カカオ豆の価格高騰、いわゆる「カカオショック」の影響を強く受けました。カカオ豆の価格は過去2年間で約4倍に上昇し、2023年初頭には1kgあたり約2.5ドルだったものが、2024年12月には10ドル以上に達しました。
この価格上昇の主な要因は、カカオ生産国での異常気象と病害の蔓延です。特に、西アフリカの主要生産国であるコートジボワールとガーナでは、大雨と干ばつが続き、カカオの木が弱体化し、ウイルス性の病気が広がっています。
この状況により、チョコレート製品の価格も上昇しています。2025年のバレンタインシーズンにおけるチョコレート1粒あたりの平均価格は418円で、前年より5.8%の値上がりとなり、過去最高値を更新しました。
消費者の意識調査では、約88.6%がチョコレートの価格上昇を実感しており、バレンタインの予算を見直す人も増えています。 一方で、チョコレートメーカーや販売店は、カカオの使用量を減らしつつ高品質を維持する「プレミアム準チョコレート」の開発など、価格を抑えるための工夫を行っています。
サステナビリティ観点からの対応方法
カカオの価格高騰が続く中で、持続可能な消費と生産のバランスを取ることが求められています。私たちにできる対応策として、以下のような方法が考えられます。
1. フェアトレードやサステナブル認証のある製品を選ぶ
カカオ生産者の生活を守り、持続可能な農業を支援するために、フェアトレード認証やRainforest Alliance認証を取得したチョコレート製品を選びましょう。これらの認証製品を購入することで、生産者が適正な賃金を受け取れる仕組みを支援できるほか、森林破壊や児童労働の防止にもつながります。
また、日本国内でも、地元企業や小規模メーカーによるエシカルチョコレートが増えており、環境に配慮した選択肢が広がっています。消費者としてこうした取り組みに賛同し、サステナブルな選択を意識することが重要です。
2. 代替品の活用
カカオの供給が不安定な状況の中で、代替品の活用も進んでいます。
- キャロブ(いなご豆):カカオの代替として使われることが多く、カフェインフリーで栄養価も高いのが特徴。チョコレートのような風味を楽しめるため、健康志向の人にも人気。
- ローカカオ製品:低温加工されたカカオを使用し、栄養素をできるだけ残した製品。環境負荷を抑えながら、カカオの風味を楽しむことができる。
- 発酵食品を活用したチョコレート風味のスイーツ:カカオに代わる新しい風味のスイーツとして、豆や穀物を発酵させた代替チョコレートも開発されている。
こうした代替品を取り入れることで、カカオへの過度な依存を減らしながら、チョコレートの楽しみを広げることができます。
3. 廃棄を減らし、適量を購入する
食品ロスの削減も、サステナビリティの観点から重要なポイントです。必要な分だけ購入することを心がけましょう。お得だからと大量に買ってしまうと、食べきれずに廃棄するリスクが高まります。適量を購入し、無駄を減らしましょう。
また、消費期限や賞味期限を確認し、先に購入したものから食べる習慣をつけることで、無駄を防げます。さらには割れチョコや規格外品を選ぶなども有効です。形が不揃いなだけで、品質には問題のない「割れチョコ」や規格外品を選ぶのも、食品ロス削減に貢献する方法です。

4. 地元や小規模メーカーを応援する
大手ブランドだけでなく、地域の小規模メーカーやクラフトチョコレートにも目を向けることで、環境負荷の低い生産者を支援することができます。例えば、地産地消の原料を活用しているチョコレートメーカーや、カカオの輸送距離を短縮する取り組みを行うブランドなどがあります。こうした企業を応援することで、持続可能なチョコレート市場の拡大を後押しできます。
5. サステナブルなチョコレート消費を広める
消費者の意識が変われば、市場も変化します。自分だけでなく、周囲の人にもサステナブルな選択肢を広めることが大切です。
自分に合ったサステナブル商品の選び方
サステナブルな商品を選ぶ際は、「自分にとって何が大切か?」を基準にすることがポイントです。環境への配慮、フェアトレード、動物福祉、地産地消など、どの側面を優先したいかを明確にすることで、自分に合った持続可能な選択ができます。

認証マークがあるかをチェックする
サステナブルな商品を見極めるために、公式な認証マークをチェックすることも有効です。
環境への配慮がなされている商品にはFSC認証やRainforest Alliance認証、生産者に適正な賃金が支払われていることを保証するフェアトレード認証、オーガニックな生産方法を証明するUSDA OrganicやEUオーガニック認証、動物実験を行っていないことを示すクルエルティフリー認証などがあります。
これらのマークがついている商品を選ぶことで、より信頼性の高いサステナブルな消費が可能になります。
原材料や原産地を確認する
原材料や生産背景についても注目しましょう。どこで作られているのか、どのような原材料が使われているのか、生産者の労働環境は適切かなどを調べることで、より意識的な選択ができます。
たとえば、輸送距離が短い地産地消の商品を選ぶことで、環境負荷を減らすことができます。また、農薬や合成化学物質の使用を抑えたオーガニック製品を選ぶことで、自分の健康にも配慮できます。
まとめ
カカオの価格高騰は、気候変動や労働環境の問題、需要の増加など、複数の要因が絡み合って発生しています。
チョコレート製品の価格上昇は消費者にとっても影響が大きいですが、サステナブルな視点を持ち、フェアトレード製品を選ぶ、代替品を活用する、食品ロスを減らすといった対応を取ることで、持続可能な未来に貢献できます。
チョコレートを楽しむ私たち一人ひとりが、サステナビリティを意識した選択をすることで、カカオ産業の未来を守ることができるのです。