紙ストローは環境に悪いって本当?環境負荷や良い点などをデータを基に解説


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プラスチック製ストローの廃止が進む中、「紙ストローは環境に良い」とする動きが加速しています。しかし、それは本当でしょうか?環境負荷や資源の使い方をLCA(ライフサイクルアセスメント)などの視点から見直すと、見えてくる現実は単純ではありません。
そこで本記事では、紙ストローのメリットとデメリットを見ていきながら、紙以外で作られたストローについてもご紹介します。
最後まで読んで、改めて環境について一緒に考えていきましょう。
紙ストローのCO2排出量は高い可能性がある
紙ストローが製造され廃棄されるまでを考えると、プラスチックストローより紙ストローのほうがCO2排出量が高いという調査結果もあるとのことです。
ここでは、紙ストローのマイナス面について見ていきましょう。
紙ストローはプラスチックストローの4.6倍の温室効果ガスを排出
プラスチックストローは、長らく飲食店や家庭で広く使われてきました。安価で軽く、使い勝手の良い素材ですが、その反面「使い捨て」であり、分解されにくいことから海洋汚染やマイクロプラスチック問題の主要な原因ともなっています。
しかし、紙ストローとプラスチックストローをLCA(商品の製造から廃棄・リサイクルに至るまでの過程でどれほどの環境負荷が掛かっているかを判断する手法)で比較した場合、紙ストローはプラスチックストローの4.6倍もの温室効果ガスを排出しているという調査結果も出ているようです。排出量だけを見ると、必ずしも「紙=エコ」とは言い切れません。


「PFAS」という有害物質も検出
PFAS(ポリおよびパーフルオロアルキル物質)は、さまざまな日用品の製造に使われている物質ですが、環境や生物に有害で人々の健康被害との関連性も懸念されています。ベルギー・アントワープ大学の研究チームが国内の市販ストロー39種類を調査したところ、ほとんどのストローにPFASが含まれていることが分かったそうです。
さらに驚くべきことに、含有量は紙製ストローが1番多かったのだとか。
ストローは頻繁に使用されるものではないことと、PFASの量は全体的に見れば少ないことから、人々の健康に悪影響をもたらす危険性は低いそうですが、私たちの体内に残留・蓄積されていく可能性もあるとのことです。
紙ストローとプラスチックストローを比較するうえで重要なのは、その全体のライフサイクルを評価することです。つまり、原料の採取から製造、消費、廃棄、リサイクルや焼却まで、一連の過程すべてを通じての環境負荷を考慮する必要があります。
紙ストローのメリット
ここでは、紙ストローのメリットを見ていきましょう。
海洋破壊問題の改善
世界中で重要視されているプラスチックごみ問題ですが、このままの状態だと、2050年までにプラスチックごみが魚の量を上回ると予想されています。
ポイ捨てなどで、きちんと処理されなかったプラスチックは、やがて海へと流れ着き、紫外線や波の影響を受けて、5mm以下のマイクロプラスチックになります。プラスチックは分解されないため、長期間自然界に留まり続け、海の生態系に悪影響を及ぼすことに。
プラスチックゴミを餌と勘違いして食べ、命を落とす海洋生物の話も話題になりました。また、食物連鎖により、私たち人間にも被害が及ぶ危険性があります。
紙ストローを使用することは、プラスチックの使用量削減や海の環境保護にも結びつくのです。


石油資源枯渇の抑制
紙ストローの普及は、石油資源が枯渇するのを抑える役割もあります。プラスチックは石油原料が由来となっていますが、ご存じの通り、石油は有限資源です。そのため、プラスチックの大量生産は石油資源にも影響をもたらします。紙ストローの使用は、限りある石油資源の消費を減らしていくことにも繋がるでしょう。
紙ストローを導入している店舗・ブランド
日本でもマクドナルド、スターバックス、銀座ルノアールなどが紙製または代替素材ストローの導入を進めており、社会全体としての環境配慮の意識が高まりつつあるのは確かです。では次に、紙ストローを導入している店舗やブランドをご紹介します。
マクドナルド
マクドナルドでは「2025年末までに、お客様提供用容器包装類を、再生可能な素材、リサイクル素材または認証された素材に変更します」という目標を掲げています。
その方針に基づき、2022年10月から紙ストローが導入されました。
スターバックス
スターバックスでは、2020年から紙ストローの導入が開始されています。
しかし2025年1月より紙ストローは廃止され、新たに「生分解性バイオポリマー Green Planet®」のストローが提供されることになりました。
銀座ルノアール
銀座ルノアールでは、SDGs達成を目指し2020年8月から全店でプラスチックストローの代わりに紙ストローを提供しています。
環境にやさしいストローの商品例
ではここで、環境にやさしいストロー3商品を見ていきましょう。
カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®
カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®は、100%バイオマス由来のポリマーです。海や土のなかにいる微生物によって分解され、最後には水と炭酸ガスになるとのこと。
CO2排出量削減や環境改善への貢献も期待されています。
先述したスターバックスのストローにも採用された素材ですが、レジ袋や食品のパッケージといった多様な使い道が予想される素材です。
おおむぎママの麦ストロー®
麦ストローは、六条大麦の生産量全国1位(令和5年度)を誇る福井県で作られており、後に土に還る天然のストローです。
元々は、販売会社である株式会社大麦俱楽部が創業された2010年当時からお客様へのプレゼントとして代表のおおむぎママが作製していたものです。
その後、世間でマイクロプラスチック問題が広がりを見せたことで、麦ストローへの関心度も高まり、2019年に販売化に至りました。
米ストロー
その名の通り、お米から作られている米ストロー。お米の他にコーンスターチを原材料としています。
完全植物由来であり、グルテンフリーかつアレルゲンフリーの商品です。無味無臭で、すぐに溶け出す心配もありません。
また、くず米を使用することで農家への支援にも貢献しています。


私たちにできることは何か
紙かプラか。どちらが本当に「持続可能」かは、素材だけでなく、それをどう使い、どう処分するかにも左右されます。ごみ問題や温室効果ガスの排出削減には、製品選びだけでなく、日常生活での行動も重要です。
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必要以上にストローを使わない
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マイストローなどの繰り返し使える製品を選ぶ
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企業や飲食店の環境配慮の動きをフォローし、応援する
こうした個人レベルの選択が、社会全体のエコな流れを後押しします。
まとめ|環境に優しい「選択肢」を増やすという考え方
多くの人にエコな製品として認識されている紙ストローですが、メリットだけでなくデメリットもあることがお分かりいただけたかと思います。
現在は、環境問題への取り組みとしてさまざまな素材のストローが生み出されています。より良い地球の未来のために、1人ひとりが環境対策の意識を高めていくことがますます重要になっていくでしょう。
ストローの素材問題は、単なる「プラスチック vs 紙」の対立ではありません。環境負荷を減らすには、より広い視野で「循環」や「持続可能性」を評価することが必要です。
企業、研究者、消費者、そして私たち一人ひとりが、自然・資源・廃棄・社会コストなどを含めた「全体」を見る視点を持つこと。それこそが、環境問題に対する本質的なアプローチです。