「茶禅一味」の世界へ|お抹茶の効能でリラックスする方法を紹介
正月になると、表千家、裏千家、武者小路千家の初釜のニュースが出てきます。
初釜は年明けに行うお茶の行事で、この三千家以外でも、いろいろなところで行われます。そんなお抹茶には気持ちを落ち着ける成分が入っているのをご存知でしょうか?
お抹茶と他のお茶には明確な違いがある
まずは、お抹茶の作り方からです。お抹茶が他のお茶よりも多くの成分を摂取できることがわかります。
お抹茶も煎茶、紅茶、烏龍茶などのお茶は全て同じお茶から作られています。その中で、煎茶、紅茶、烏龍茶の違いは、発酵の進み具合です。お抹茶は、煎茶と同じく発酵をすぐに止めたお茶です。
煎茶、紅茶、烏龍茶は、茶葉にお湯を入れ、お茶の成分をお湯に出して飲みます。そのため、茶葉に成分が残ったままになります。一方、お抹茶は茶葉を石臼で挽いて粉にしたものです。これが他のお茶との大きな違いです。
お抹茶にお湯を入れても溶けるわけではないので、お湯を入れただけだと粉の感じが残ってしまいます。茶筅を使うことで、お抹茶の粉と水を攪拌させて、飲みやすくなります。そして、茶葉の全てを摂取することができ、その分、栄養素も豊富になります。
お抹茶はリラックスし、デトックス効果もある
お抹茶に含まれる成分を見てみましょう。
お抹茶には、カフェインが多く含まれていることはよく知られています。また、ポリフェノールの一種であるカテキンが含まれていることも有名です。それ以外にも、アミノ酸の一種のテアニン、βカロテン、ビタミンC、ビタミンEなどのビタミン類、食物繊維が豊富に入っています。
この中で、テアニンには、リラックス効果があります。副交感神経の働きを活性化します。また、テアニンを摂取するとα波という脳波が増加し、リラックスを促すと言われています。そのため、お抹茶を飲むことで、気分を落ち着けることができるのです。
カテキンには抗酸化作用があり、コレステロールや体脂肪量のコントロールに効果があり、肌のケアにも有効です。これはカテキンが体内の活性酵素を除去してくれるおかげです。活性酸素は、体内の細胞を酸化させて老化を進めてしまう、厄介な物質です。
また、カテキン以外にもお抹茶に多く含まれるビタミン類も同様に抗酸化作用を持っています。
カテキンにはもう一つの効果があります。それが糖分や脂質の吸収を抑える働きです。簡単に言うと、太りにくくなるということです。これに、カフェインの脂肪燃焼を促進する効果、食物繊維の整腸作用も加わり、デトックス効果を得ることができます。
お茶が伝来したのは1200年も昔
お抹茶で一番有名な歴史上の人物は千利休だと思います。現在の茶道の祖です。ただ、重要なのは、千利休が生まれる前からお抹茶は日本で飲まれていましたし、現在の茶道とは異なるお茶の嗜み方がありました。
まず、お茶が日本に伝わったのは西暦800年代です。遣唐使や留学の僧が持ち帰ったのが最初と言われ、西暦815年に嵯峨天皇がお茶を飲んだという記録が最古のものとして残っています。このときは、煎茶だったと考えられます。
お抹茶が日本に入ってきたのは、これよりも後になります。中国で修行した鎌倉時代の僧・栄西(ようさい/えいさい)が日本に持ち帰ったとされています。栄西の日本への帰国が1191年なので、そこから広まっていったと考えられます。なお、栄西は禅宗のうちの一つ・臨済宗の開祖でもあります。
このように、お抹茶の日本伝来と禅は深いつながりがあります。また、今でも禅寺では茶礼(されい)が行われ、修行の一つにもなっています。
その後、室町時代の東山文化が花開いた頃は、お茶道具の格付け(東山御物)がされるなど、お抹茶の形が出来上がっていきました。
しかし、当時のお抹茶は、現在の茶室のような狭い部屋ではなく、広間で行われていました。また、お抹茶で点てたお茶を飲んで、お茶の産地や使用した水を当てる闘茶といったゲームのような楽しみ方もされており、現在の茶道のお茶とは異なったものでした。
千利休も禅を学んだ
このような流れを変革したのが、千利休です。もともとわび茶という概念は千利休よりも前の村田珠光(むらた・じゅこう)が考えたものです。村田珠光から武野紹鴎(たけの・じょうおう)に引き継がれ、千利休がわび・さびというお茶の概念を完成させました。武野紹鴎は千利休のお師匠さんです。
また、村田珠光は一休和尚に師事しており、武野紹鴎も禅宗の僧のもとで修行しています。千利休も同じくです。今までのきらびやかなお抹茶に対して、わび茶という形には、禅の考えが影響したのが伺えます。
実際に、お茶には「茶禅一味」という言葉があります。これを言葉で説明するのは難しいのですが、茶道と禅は同じということになります。それは茶道の修行も禅の修行も同じであり、禅の修行から茶道につながることもあれば、茶道の修行から禅の考えにつながることもあるということです。
本格的に茶道を始めると、お茶を飲むだけでなく、稽古をすることでもマインドフルネスの効果を得ることができるようになります。
家で簡単にお抹茶は飲める
体に良いお抹茶をせっかくなら手軽に飲んでみたいですよね。自宅で飲むだけであれば、作法とかは考えずに簡単にお抹茶を飲むことができます。
お抹茶をお茶碗(なんでも良いです)に入れて、お湯を注いで茶筅でシャカシャカと振るだけです。面倒な作法があるんじゃないの?と思うかもしれませんが、茶道はお客を迎えて、亭主としてお抹茶を提供するルールで、流派によってやり方は異なりますが、基本はお客をおもてなしする方法です。
自宅でお抹茶を飲みたい場合は、そういった作法は考えなくても大丈夫です。
お抹茶は薄茶用のを購入して、一杯あたり約2gいれます。茶杓2杯なのですが、一般の家に茶杓はないですから、ティースプーンで山盛り1杯から1.5杯ぐらいを目安にしてください。茶筅は必要なので、ネットなどで購入してください。
どの程度泡立てるかというのは、流派によって異なります。表千家だと表面半分ぐらい覆うぐらいですが、裏千家だと表面全部が泡で覆われるようにしっかりと茶筅を振ります。
家でお茶を飲むときは、茶筅を振る時間を色々試して見て、自分の好みを見つけてみてください。