ローチョコレートが拓くウェルネス|カカオの栄養素をより摂取して持続可能な未来を

ローチョコレートが拓くウェルネス|カカオの栄養素をより摂取して持続可能な未来を
FOOD

私たちが日常的に口にするチョコレート。その香りとビター感は、カカオ豆を高温で「焙煎」することで生まれ、そこに砂糖を加えることでバランスを取ります。さらにミルクやナッツ、果物などを加えて、チョコレートの至福の一品ができあがります。

しかし今、この製法に一石を投じる「ローチョコレート(Raw Chocolate)」が、健康志向の高い層やサステナビリティに関心のある人々の間で注目を集めているのをご存知でしょうか。

Rawは英語で「生」の意味を持つことから、生チョコレート?と思うかもしれませんが、生チョコとは全く別の味わいを楽しめるものです。まずは、ローチョコレートについて見ていきましょう。

カカオ豆を焙煎せずに作るのが“ローチョコレート”

カカオ豆を焙煎せずに作るのが“ローチョコレート”

ローチョコレートとは、カカオ豆を高温で焙煎せず、低温で加工して作られたチョコレート製品を指します。ローフードの一つとして考えられており、48度以下で加工・調理されたものです。このロー(Raw)という名前から取られています。

そもそもチョコレートの製法とは、カカオの種を取り出し、その種を発酵・乾燥させることによって「カカオ豆」を創り出すことから始まります。カカオ豆を焙煎し、皮などを取り除き、粉砕していくとカカオニブができあがります。

カカオニブをさらにすり潰すとカカオバターという油脂成分がでてきてペースト状になります。これがカカオマスで、チョコレートの卵です。カカオマスに砂糖やミルク・ナッツなどを加えてチョコレートが完成するのです。

ローチョコレートは、上記の工程でカカオ豆からカカオニブにする際の焙煎を行わずに、低温での処理を行ってできたカカオマスを使っています。高温での焙煎をしていないため、ロー(Raw)チョコレートと呼ばれています。

ローチョコレートと生チョコレートの違いとは?

ローチョコレートと生チョコレートの違いとは?

ローチョコレートと間違われる生チョコは、焙煎したカカオマスに生クリームを使用したものです。生クリームを多く使っているため、水分量も多く、口の中でとろけるような食感が特徴です。

一方でローチョコレートは、カカオ豆を低温で処理するとなっていますが、具体的な温度は決まっていません。また、チョコレートに添加する他の原材料(甘味料など)についても、決まりはありません。

どこまで“生”にこだわるのか、健康を考えるのか、作り手のこだわりや考え方によって多様なローチョコレートがあるのが面白いところです。ただし、ローチョコレートの本質は一貫しています。それは、焙煎しないことで生かされるカカオ豆本来の栄養価や風味を最大限に保持し、楽しむことにあります。

焙煎が生む「香り」と、低温が守る「栄養」

焙煎が生む「香り」と、低温が守る「栄養」

通常のチョコレートとの最大の違いは、カカオ豆の高温焙煎による芳醇な「チョコレートの香り」です。これは、アミノ酸と糖が反応するメイラード反応によるものです。これにより複雑な香りが形成され、最初に口に入れてから、食べた後に残る香りまで、複雑な香りの移ろいを楽しむことができます。

一方、ローチョコレートは焙煎工程がないため、メイラード反応は起きません。代わりに、カカオ豆本来のフルーティーで酸味のある、フレッシュな風味が際立ちます。最初にチョコレートの香りがして、そのあとに後味がすっきりと消えるものになります。

低温加工であることから得られる栄養素の豊富さは、ローチョコレートの最大の特徴です。熱に弱いポリフェノールや酵素、そしてミネラル(マグネシウムや鉄分)といった抗酸化物質が破壊されずに多く残るという健康上のメリットがあります。

また、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸といったオメガ6脂肪酸も多く含まれます。これらには、コレステロールの低下や、認知機能改善効果があると言われています。ローチョコレートは、まさにカカオ豆の持つ栄養をそのまま摂取できる食品なのです。

チョコレートは嗜好品、ローチョコレートは健康食品

チョコレートは嗜好品、ローチョコレートは健康食品

通常のチョコレートは、その甘い香りと口溶けの良さから「嗜好品」として、安らぎや幸福感を提供する食品として愛されてきました。しかし、新しい形のローチョコレートは、豊富な栄養価と添加物の少なさから、単なる嗜好品を超えた「健康食品」「スーパーフード」という立ち位置にあります。

この方向性の違いは、両者の原料調達にも表れています。一般的なチョコレートブランドが大量生産と均質な風味を追求することが多いのに対し、ローチョコレートブランドの多くは、カカオ農家とのフェアトレードやダイレクトトレードにこだわり、地球環境に配慮したオーガニックな栽培方法を採用するなど、SDGsの視点を経営の核に据えています。

このローチョコレートが持つ独自の価値と、従来のチョコレートとの明確な違いについて、実際にローチョコレートを深く追求されている方のインタビューで深堀していきます。

身体の充足感が得られたローチョコレートとの出会い、味も見た目も楽しくおいしく

滋賀県彦根市で「ロースイーツブランド ハレとケと。」を運営している吉田りえさんにお話を伺いました。

彦根で「ロースイーツブランド ハレとケと。」を運営する吉田りえさん
彦根で「ロースイーツブランド ハレとケと。」を運営する吉田りえさん

―吉田さんとローチョコレートとの出会いはどういったものでしたでしょうか?

吉田さん:もともと健康食品などに興味はあって、さまざまな健康食品のレストランに行っていました。そのうちの一つに、京都のビーガンのお店があり、よくご飯を食べに行っていました。その時に、お店の方がローチョコレートのお店でも働いており、そのお店に行ったのがきっかけです。京都にあるそのお店はローチョコレートの老舗で、そこで初めてローチョコレートと出会いました。

―出会った時はどんな印象でしたか?

吉田さん:食べてみたとき、満たされた感覚がありました。身体の充足感が得られて、「あっ、これだ」という腑に落ちたような感じでした。

―身体が抵抗なく受け入れたという感じなんですね。吉田さんがお店で出しているローチョコレートの特徴やこだわっていることは?

吉田さん:ローチョコレートを作られている方々、それぞれにこだわりがあります。例えば、健康食品という観点で、身体によい素材を厳選されている方もいれば、カラフルなデザインにこだわれている方もいます。ローチョコレートは、結構カラフルなものが多いですね。また、ローチョコレートならではのカカオの香りを生かすことを考えている方もいます。

そのなかで、私のローチョコレートは、健康食品としてのこだわりがありますが、まずは味も見た目もおいしく楽しく召し上がっていただきたいと思って作っています。元となるカカオはローチョコレート用の高品質なものを利用しています。召し上がっていただくと分かるのですが、苦みやえぐみ、渋みといったものが少なく、カカオ本来の香りが楽しめます。

甘味料も白砂糖ではなく、身体によいココナッツシュガーなどのナチュラルなものを使っていますし、ローチョコレートに加える果物なども無農薬のものを取り入れ、おいしいものをと考えています。

デザインの方は、ローチョコレートの仲間からは、少し独特なデザインと言われることもありますが、見て楽しんでいただけると思います。

ハレとケと。で販売しているローチョコレート。製品名は「月や太陽のカラフルマンディアンチョコ」。一口食べると、チョコの香りが広がるが、後味はすっと消え、また一口食べたくなる。
ハレとケと。で販売しているローチョコレート。製品名は「月や太陽のカラフルマンディアンチョコ」。一口食べると、チョコの香りが広がるが、後味はすっと消え、また一口食べたくなる。

1日に25gのカカオを取ると身体に良いと言われているので、私のローチョコレートで、お客様が毎日、無理なくカカオを取り続けてもらえるようになってもらえたら嬉しいです。

―素材にもこだわりがある。

吉田さん:召し上がっていただく皆さまに健康でいてほしいという思いで素材は厳選しています。もう一方で、生産者の幸せや暮らしも考えていかないといけないと思っています。

私が使っているカカオはエクアドル産の希少種でアリバ種というのを使用しています。カカオの生産者の多くは零細なのですが、私が仕入れているところはこういった小さい農園をまとめて技術提供をして、高品質なカカオを生産しているところです。結果として、生産者の収入を増やす活動へとつながっていきます。

左から一般的な業務用カカオ、ハレとケと。のチョコの元となるカカオマス、そのカカオマスから作られた82%カカオのローチョコレート。一般的なものは後味に渋み、えぐみを感じる。82%カカオのローチョコレートは、一般的な高カカオチョコに比べて、後味がすっきりしていて、食べやすい。器は地元の彦根で焼かれた湖東焼。
左から一般的な業務用カカオ、ハレとケと。のチョコの元となるカカオマス、そのカカオマスから作られた82%カカオのローチョコレート。一般的なものは後味に渋み、えぐみを感じる。82%カカオのローチョコレートは、一般的な高カカオチョコに比べて、後味がすっきりしていて、食べやすい。器は地元の彦根で焼かれた湖東焼。

―彦根でハレとケと。のローチョコレートも楽しめるヴィーガンカフェ「Zen Vegan Cafe 是好日」も運営されていらっしゃいます。ローチョコレートを楽しまれるお客様は女性の方が多いのでしょうか?

吉田さん:ローチョコレートは健康に良いというイメージがあるので、お客様も健康志向や美容に興味のある方が多いです。そのため、自然と女性が多いです。遠方からも来ていただけています。もう少し地元の方にも来てもらえると嬉しいですね。

―生チョコと勘違いされていらっしゃる方はいないですか?

吉田さん:生チョコと勘違いされていらっしゃる方もいらっしゃいますが、ローチョコレートの良いところや普通のチョコとの違いを説明して、実際に召し上がっていただいています。生チョコには生チョコの良さがあり、ローチョコレートにはローチョコレートの良さがあるので、それを実感してもらえればと思っています。

―それ以外にも勘違いされることも?

吉田さん:健康食品というイメージがあるからか、ローチョコレートは、ローカロリー、ローファット、低糖質と思われがちです。しかし、カカオは油脂分でできているため少なくともローカロリー、ローファットではありません。

糖質については、甘味料にどういったものを使うかで異なってきます。ただし、ローチョコレートは腹持ちが良いので、糖分の少ないローチョコレートを食べると間食は少なくて良いでしょう。私も良く仕事の合間でつまんでいます。

普通のチョコレートは嗜好品としてつくられますが、ローチョコレートは健康食品という考えのもと作られることが多いです。そもそもの方向性が違うのですが、私の場合は、味も見た目もおいしく、毎日召し上がってもらえるようなものをと考えています。

普通のチョコレートとは味わいは異なりますが、ローチョコレートだからこそ楽しめる香りがあるので、ぜひ一度召し上がってください。

ロースイーツブランド ハレとケと。
オンラインショップ:https://store.haretoketo.com/

運営:株式会社Hareto-Keto
Zen Vegan Café
住所: 〒522-0087 滋賀県彦根市芹橋2丁目6−54
https://haretoketo.com/menu/

彦根城表門橋から徒歩13分。歴史が色濃く残る足軽組屋敷の一角にあるので、彦根散策の途中で楽しめます

よくある質問(FAQ)

Q.ローチョコレートと、一般的な「生チョコ」は何が違うのですか?

A.大きな違いは「加熱の有無」と「生クリームの有無」です。ローチョコレートはカカオ豆を高温で焙煎せず、低温で処理したカカオマスを使用します。一方、生チョコは焙煎したカカオマスに生クリームを加えて作るもので、とろけるような食感が特徴です。

Q.ローチョコレートを食べることで期待できる栄養的なメリットは何ですか?

A.低温加工により、熱に弱いポリフェノールや酵素、マグネシウムや鉄分などのミネラルが破壊されずに豊富に残っていることです。また、コレステロールの低下や認知機能改善に良いとされるオメガ6脂肪酸(リノール酸など)も多く含まれており、単なる嗜好品を超えた「スーパーフード」としての側面を持っています。

Q.普通のチョコレートと比べて、味や香りにどのような違いがありますか?

A.焙煎工程がないため、香ばしい香り(メイラード反応)の代わりに、カカオ豆本来のフルーティーで酸味のあるフレッシュな風味が際立ちます。食べた瞬間にチョコの香りが広がり、後味はすっきりと消えるのが特徴です。

Q.「ロー(Raw)」という名前ですが、低カロリー・低脂質(Low)なのですか?

A.いいえ、ローチョコレートは「低カロリー・低脂質」という意味ではありません。カカオ豆そのものが油脂分でできているため、カロリーや脂質は一定量含まれます。ただし、腹持ちが良いため、少量を食べることで間食を抑えられるというメリットはあります。

Q.ローチョコレートが「持続可能(サステナブル)」と言われるのはなぜですか?

A.多くのローチョコレートブランドは、カカオ農家とのフェアトレードやダイレクトトレードを重視し、地球環境に配慮したオーガニック栽培を採用しているためです。生産者の健康や経済的自立を支援する活動と密接に結びついている点も、重要な価値とされています。

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