害獣の有効活用方法|厄介者から「ジビエ」へ。SDGsのためにできること

害獣の有効活用方法|厄介者から「ジビエ」へ。SDGsのためにできること
FOOD

近年、熊の出没ニュースや農作物への害獣被害が増え、人々の暮らしに対して深刻な影響を及ぼしています。被害拡大によってやむを得ず駆除される野生動物も増えていますが、駆除された野生動物の多くは、利活用されずにそのまま廃棄されているのが現実です。

駆除された害獣の多くは、適切な衛生管理のもとで処理すれば「ジビエ」として地域資源に生まれ変わりますが、活用するには多くの課題があり、実際に活用されているのはごく一部にとどまっています。

この記事では、害獣が増える背景と資源へ転換するジビエ活用の取り組みについて、SDGsの観点からできること、またそれに限らず身近で私たちが出来ることについてを紹介します。

2025年も狩猟解禁日は11月15日!獣害の現状やジビエ料理などを解説
SOCIETY
2025年も狩猟解禁日は11月15日!獣害の現状やジビエ料理などを解説

なぜ今、「害獣」が問題なのか?

なぜ今、「害獣」が問題なのか?

近年、日本ではイノシシ・シカ・熊などの「害獣」による被害がどのくらい増えているかご存じですか?

農林水産省の令和5年度の野生鳥獣による全国の農作物被害によると、シカによる被害額は約70億円、イノシシによる被害額は約36億円、全体の被害額は164億円に及び、被害額は年々増加傾向にあり、地域の農業経営を圧迫しています

農作物が荒らされて収入が大きく減ることにより、廃業に追い込まれる農家も少なくありません。人の生活圏に害獣が入り込み、住宅やスーパーへの出没も増え、その影響は農家だけでなく一般家庭にも広がっています。

害獣被害の拡大背景には、下記のような問題が潜んでいます。

里山の管理不足

かつて人間と動物の生息域を分けていた「里山」が高齢化や人口減少によって手入れされなくなっている現状があります。

田畑が荒れて草木が生い茂ることで、動物たちが身を隠しながら民家のすぐ近くまで移動できるようになりました。その結果、動物が人間に遭遇しても恐怖心を抱きにくくなり、生活圏の境界線があいまいになっているのが現状です。

気候変動

地球温暖化の影響は、動物たちの行動範囲や生存率にも大きな変化をもたらしています。 暖冬によって冬を越せる個体が増え、繁殖のペースが上がっていることに加え、雪が減ったことでシカやイノシシなどがこれまで生息していなかった北の地域や高い山へも生息域を広げています。

食料不足

山でどんぐりなどの木の実が不作になる年が増え、飢えた動物がエサを求めて人里へ降りてくるケースが頻発しています。 さらに問題なのは、一度降りてきた動物が、廃棄された野菜や生ゴミなどの「簡単に手に入る美味しいエサ」の味を学習してしまうことです。これにより、山にエサがある時期でも街へ出没する傾向が強まっています。

ハンター減少

 野生動物の繁殖スピードに対し、それを抑制する役割を担うハンター(狩猟者)の数が追いついていません。 ハンターの高齢化が進み、引退する人が増える一方で、新たな担い手は不足しています。地域を守る「防衛力」が低下しているため、個体数の増加を止められず、被害が拡大し続けています。

「駆除」から「活用」へ。害獣の有効活用方法3選

「駆除」から「活用」へ。害獣の有効活用方法3選

野生動物による被害が深刻化する一方で、駆除された動物の多くが廃棄されている現状があります。そこで今注目されているのが、害獣を地域の資源として活用するというサステナブルな取り組みです。ここでは、代表的な活用方法を、調理師免許を持つ筆者の観点から3つ紹介します。

1.食材として活用する(ジビエ)

もっとも広く知られている活用法が、害獣をジビエとして食材にする取り組みです。ジビエとは、鹿・猪・キョン・熊などの野生鳥獣の食肉を指し、ヨーロッパでは古くから貴族の食べ物として高級食材とされてきました。日本でも近年、ジビエは健康志向の高まりとともに注目度が上昇しています。鹿肉や猪肉は高タンパク・低脂質で鉄分も豊富。筋力維持を重視する人、栄養バランスを意識する人にとって魅力が大きく、専門店や通販が増えてきました。

また、サステナブルの観点でも大きなメリットがあります。これまで廃棄されていた命を無駄にせず、有価物として活用することで資源の循環が生まれます。近年では自治体や処理施設がトレーサビリティを徹底し、安全性を確保したうえで市場に流通させる体制が整いはじめています。

近年、熊の出没が頻繁に報道されていますが、ジビエとしての熊肉は、シカやイノシシに次ぐ人気があるともいわれています。

ジビエの種類にはそれぞれ特徴があり、もっともクセが少ないシカ肉は『王道のジビエ』とされ、イノシシ肉(ボタン肉)は脂身の甘さとくどさのなさが特徴です。熊肉は濃厚な味で、煮込みや燻製に向いていると言われています。

ジビエを食べる際は、病原体を持っている可能性が高いため、十分に加熱する必要があります。季節や個体によって味わいが変わるのもジビエの面白さです。

2.皮革・工芸品として活用する

ジビエといえば食べるイメージが強いですが、食用に向かない皮や角といった副産物は工芸品として活かす動きも広がっています。1頭から取れる量が少なく、加工が大変なため、まだあまり認知されていません。ジビエの副産物としてよく使われる素材には、鹿の皮や骨があります。鹿革は柔らかく、バッグや小物などのレザー製品に加工できます。シカ革専門のブランドもあり、優しい手触りや経年変化によって魅力を増す素敵な商品がそろっています。

猪の牙や鹿の角はアクセサリーや工芸品として加工され、美術品のような仕上がりで、地域の特産品として人気を集めています。

エシカルの視点では、「命を最後まで使い切る」という考え方が重要です。捨てられるはずだった素材が、新しい価値を持つことは、持続可能なものづくりの好例といえます。ジビエの素材には、他の素材にはない魅力が詰まっています。

まずはその魅力を知り、実際に手に取ってみることで、害獣活用に対する理解が深まり、問題解決の一歩につながります。

エシカル消費とは?SDGsとの関係性、商品の選び方まで徹底解説
LIFESTYLE
エシカル消費とは?SDGsとの関係性、商品の選び方まで徹底解説

3.地域資源・その他としての活用

食用や加工品としても使い切ることが難しい部分は、ペットフード(ジビエドッグフード)として活用する取り組みも広がりつつあります。高タンパクで栄養価が高いジビエは、自然食志向の飼い主からも注目されており、フードロス削減にもつながります。

さらに、ジビエをきっかけに地域に足を運んでもらうために、山歩きなどの観光コンテンツや、食育体験ツアーの開催など、地域の魅力を伝える新しい体験型ツーリズムとして人気が高まりつつあります。命をいただくことへの感謝を忘れず、食を通じて地域の文化や自然を学べることも魅力です。

また、学校教育の現場でも、野生動物の生態や自然環境を学ぶ教材としてジビエが活用される動きも増えています。単なる害獣問題として捉えるのではなく、「地域の課題」から「地域の価値」へと視点を転換するきっかけとなり、持続可能な地域づくりにもつながっています。

害獣の有効活用が「SDGs」に貢献する理由

害獣の有効活用が「SDGs」に貢献する理由

害獣を活用することは、害獣被害に苦しむ地域を守るだけでなく、地域の安全性向上や生態系保全にも直結します。SDGsには17の目標がありますが、害獣を活用することはそのうち特に深く関係する3つの目標があります。

  • SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」に関係します
    • 害獣被害が少ない安心できる地域づくりに加え、ジビエによって地域経済が活性化すれば、持続可能なまちづくりの実現にもつながります
  • SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」において、今まで廃棄されていた命を食材や皮革として循環させることは、資源を無駄にしないサステナブルな取り組みです
    • 近年では、捕獲した害獣をジビエとして流通させる自治体や事業者も増え始め、飲食店が狩猟者にジビエをオンライン注文できるというアプリも誕生しています
  • SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」では、野生動物の適正な頭数管理が生態系のバランス維持に不可欠とされています
    • 過剰増加を抑えることは、森林や農地への害獣被害の軽減につながるだけでなく、環境保全の観点からも重要です。

害獣を有効活用する取り組みは、単なる駆除の延長ではなく、多方面に社会的価値を生み出す重要な活動といえるでしょう。

SDGsとは?概念や17の目標・取り組みを分けてわかりやすく徹底解説
SOCIETY
SDGsとは?概念や17の目標・取り組みを分けてわかりやすく徹底解説

私たちが「害獣問題」と「有効活用」のためにできること

私たちが「害獣問題」と「有効活用」のためにできること

害獣問題は他人事ではなく、一人一人が関心を持つことで、課題解決の近道につながります。消費者として、すぐに行動できる3つの取り組みに分けてご紹介します。

最も手軽な取り組みとしてはジビエ料理店や通販でジビエ肉を購入することです。エシカル消費につながり、消費者の需要が増えることによって流通量が安定し、ジビエ利用の促進にもつながります。

住宅街やスーパーへの害獣出没ニュースも増えていますが、主な原因は、環境問題によって山での食料不足のため街に降りてきます。そのため地域住民としては、害獣を寄せ付けない環境づくりが重要です。害獣対策用の柵の設置や忌避剤の活用、農作物や庭の植栽の工夫など、日常的な対策が被害の軽減につながります。

さらに、害獣問題は消費者だけでは解決できない複合的な課題でもあります。ジビエ処理施設やハンターの不足、搬送・処理コストの負担など、現場には多くの課題が残されています。まずは害獣被害の現状や地域の取り組みに関心を持ち、正しい知識を得ることが、持続可能な地域づくりの第一歩となります。

理解が深まることで、持続可能な害獣管理のための仕組みづくりが進み、地域の安全や環境保全にもつながります。

まとめ|害獣駆除だけではなく、有効な活用方法を考えてみよう

まとめ|害獣駆除だけではなく、有効な活用方法を考えてみよう

害獣による被害や原因を紹介しましたが、害獣問題は駆除だけでなく、人の安全を守ることにも直結します。ジビエの認知は広がりつつあるものの、まだ一般的とは言えません。だからこそ、一人ひとりの理解と関心が、持続可能な社会づくりの力になります。

一人一人がジビエに関心を持つことで、害獣を厄介者から資源として捉え直す、サステナブルな社会への第一歩になります。まずはジビエを味わったり触れたり、身近なところから参加してみませんか。

この記事をシェアする

TAGS

SDGs17の目標タグ

11.住み続けられるまちづくりを12.つくる責任つかう責任13.気候変動に具体的な対策を

この記事を書いた人

Check more...

増える食物アレルギーにどう対応する?外食・惣菜・給食で行われている対策とは
FOOD

増える食物アレルギーにどう対応する?外食・惣菜・給食で行われている対策とは

2026年の方角は「南南東」!恵方巻の食べ方ルールとフードロスを出さない楽しみ方
FOOD

2026年の方角は「南南東」!恵方巻の食べ方ルールとフードロスを出さない楽しみ方

七草粥の歴史とは?由来・意味・現代に伝わる風習を解説
FOOD

七草粥の歴史とは?由来・意味・現代に伝わる風習を解説

ヴィーガンバターおすすめ6選!市販・通販で手軽に手に入る商品を紹介
FOOD

ヴィーガンバターおすすめ6選!市販・通販で手軽に手に入る商品を紹介