増える食物アレルギーにどう対応する?外食・惣菜・給食で行われている対策とは


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かつて食物アレルギーは、一部の人に限定された問題でした。とくに子供に多く見られる事象で、大人はまれでした。
多くの子供は、大人になるに従いアレルギー症状が出なくなりますが、一部では、大人になってもアレルギー症状に苦しんでいる人がいます。また、近年では、大人になってからアレルギー症状を発症するケースも出てきています。
これらの原因は、食生活や生活環境の変化ともいわれています。増える食物アレルギーはどのように対策していけばいいのでしょうか。食物アレルギーに関する動向を見ながら、アレルギー対策について企業や自治体が行っていること、またフードテックとしてどのようにSDGsにつながるのかを解説します。
アレルギーの症状は個人差が大きすぎる


アレルギーの症状は軽度から重症まで個人差が大きいです。軽度の場合は湿疹などで収まりますが、重症の場合は原因物質を体内に取り込むことで呼吸困難などになり、場合によっては命を落とす可能性もあります。
重症の方は、間違ってアレルギーを起こす食べ物を食べてしまうなどのアクシデントに備えて、エピペンというアドレナリン自己注射製剤を持っている人もいます。そういった人たちにとって、毎日の食事は気を付けていないといけません。そんな中で食の安全・安心を守るための取り組みは日々進化しています。
日本のアレルギー人口は増え続けており、原因では木の実が増えている


まず、日本においてアレルギーを持っている人がどのくらいなのかを見ていきましょう。
アレルギーで一番多いのが花粉症です。環境省の資料(下記グラフ)によると1998年では19.6%の人が花粉症を持っていましたが、2008年には29.8%、2019年には42.5%の日本人が花粉症を持っていると回答しています。約10年ごとの調査ではありますが、着実に増えていっているのが分かります。また、原因はスギ花粉が最多ですが、イネ科やブタクサなどの花粉症も増えていっています。
また、食物アレルギーについては、消費者庁が2020年に全国調査をしており、その結果をまとめています。
これによると、食物アレルギーは0歳児が一番多く、全体の30.9%を占めています。1歳が12.8%、2歳が10.8%となり、2歳までに半数が占めています。年齢が経つにつれ、食物アレルギーの人数は減っていきますが、18歳以上でも5.6%となっています。


原因の食物は鶏卵が最も多く33.4%です。牛乳18.6%、木の実類13.5%、そのあとが小麦、落花生となり、上位5品目で 80.4%を占めているのが分かります。そのほかの原因の食物としては、魚卵、果実類、甲殻類、魚類、大豆、ソバなどが挙げられます。
なお、木の実類は近年増加しており、2020年の調査で初めて小麦を抜いて第3位という結果に。木の実類はクルミが多く、カシューナッツ、マカダミアナッツ、アーモンド、ピスタチオなどです。ミックスナッツを食べてアレルギー症状が出ている人もおり、その場合は原因の木の実が判定できないため、ナッツ類の摂取は注意が必要でしょう。
フードテックで進化する食物アレルギー対応食


食物アレルギーの診断を受けたとき、かつてはアレルギーの原因となる食物を「摂取しない」が基本でした。
ただし重症のアレルギーの場合、同じ鍋で作ると前の料理に入っていたアレルギー源が残っていて、アレルギーを発症してしまう可能性がありました。そういった方は、外食なども大変でした。
しかし、現在ではアレルギーを持つ人も安心して「おいしい」と思える食事ができるようにフードテックの技術が進歩し、対応食(代替食)の品質が飛躍的に向上しています。ものによっては一般の料理の食材としても使われるようになっています。
アレルギーに対応した代替食の例
例えば、アレルギー原因4位の小麦アレルギーの方にとって、代替食品として米粉が使われています。米粉を使ったパンや麺・菓子類が開発され、グルテンフリー食品としても人気です。
また、アレルギー原因2位の牛乳の代わりには植物性ミルクがあります。豆乳やアーモンドミルク、オーツミルク、ココナッツミルクなどです。植物性ミルクは、実や種を細かく砕いて成分を水で抽出したもの。牛乳アレルギーや乳糖不耐症の人にとっては利用しやすいものです。
ただし、木の実アレルギーを持っている人は、アレルギーを発症させる可能性があるので注意が必要です。


代替タンパク質開発の進化も
さらに、代替タンパク質の開発も進んでいます。最もわかりやすいのは肉の代わりである大豆ミートです。さらに動物細胞の一部を培養してできる培養肉なども、この代替タンパク質の一つです。アレルギーを起こす物質を含まないように培養して肉をつくることも将来的には可能になるでしょう。
同様に卵や乳製品のアレルギーを起こす物質を含まない製品も開発が進んでおり、豆や海藻などから「代替卵液」が開発されています。また、卵のアレルギー物質を含まない卵タンパク質や牛乳の一部の成分を微生物に作らせるような研究も行われています。
20年以上前には、アレルギー表示の義務化がスタート
現在、スーパーなどで買う商品にはアレルギー表示がなされています。食物アレルギーを持つ人々にとって、食品の原材料表示は命綱です。
日本国内では、2001年に食品衛生法に基づき、アレルギー表示が義務化されました。その際は、卵、牛乳、小麦、そば、落花生の5成分でしたが、2008年にエビ、カニが、2023年にクルミが追加されました。
また、現在表示義務化8項目に加え、表示推奨項目20成分「アーモンド」「あわび」「いか」「いくら」「オレンジ」「カシューナッツ」「マカダミアナッツ」「キウイフルーツ」「牛肉」「ごま」「さけ」「さば」「大豆」「鶏肉」「バナナ」「豚肉」「もも」「やまいも」「りんご」「ゼラチン」があります。一時期、まつたけも推奨項目に入っていましたが、現在では除外されています。
前出の消費者庁の調査による原因物質として上位に挙げられていた鶏卵、牛乳、木の実類、小麦、落花生、魚卵、果実類、甲殻類、魚類、大豆、ソバなどがカバーされているのが分かります。
この表示ルールを正しく理解することは、アレルギーを持つ人だけでなく、その家族や友人にとっても重要です。
子供が食べる給食でもアレルギー対応が進む


これまで見てきたように、アレルギーは子供の方が多いです。食物アレルギーを持つ子どもと親にとって、学校給食の内容は必ずチェックしなければなりません。学校給食におけるアレルギー対応は、各自治体や学校の判断に任されています。
しかし、多くの自治体や学校が、すべての子どもたちが安全で楽しい給食時間を過ごせるよう、以下のようなさまざまな取り組みを進めています。
献立表は必ずチェックしよう
毎日の献立表にはアレルギー物質が記入されるようになっています。保護者が自宅で献立を確認し、お弁当を用意したり、子供にアレルギーの原因となる食物が入ったものだけは食べないでおくように注意したりすることができます。
さらに進んだ対策では、医師の診断書や保護者から「アレルギー対応食申請書」を提出してもらうところもあります。そうすることで、学校側もアレルギーの原因となる食物を摂取しないように対策をとることができます。
アレルギーを持つ子どもには代替食の提供を行う自治体もある
また、アレルギーを持つ児童・生徒に対して、アレルギーの原因となる食物を除いた献立を提供することも可能になります。代替食材を用いた料理の提供を行っているところもあります。給食で米粉パンや卵不使用のデザートなどが用意されます。
一部の自治体では、アレルゲンを完全に除去した食品だけを調理する専用の給食調理施設を設けています。これにより、鍋などの調理器具に付着したアレルギーの原因物質を完全に取り除くことができ、より安全な給食が提供できるようになります。
まとめ|家庭でも学校でも、アレルギーにはフードテックがサポートしていく未来


SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」は、誰もが安心して食を楽しめる社会の実現を目指し、目標12の「つくる責任、つかう責任」では、食品廃棄の問題の解決を目指すものです。
この目標を達成するため、スマートキッチンの開発も進められています。これは、家庭で調理する際にアレルギーなどを教えてくれる技術です。将来的には冷蔵庫から食材を取り出した際にアレルギーに関する警告などを出すようになります。また、冷蔵庫にある食材から、アレルギーに対応したメニューの提案も行われるでしょう。
このような技術が実用化されれば、アレルギーを持った子供がいる家庭でも、安心して、さまざまなレパートリーの料理を用意することができます。その日の献立に頭を悩ますこともないでしょうし、アレルギーを持った子供でも楽しく、さまざまな料理を楽しむ日々を過ごせるようになるはずです。
技術は単に「食べられないもの」を取り除くのではなく「誰もがおいしく食べられるもの」を生み出すことで、食の楽しさをすべての人に提供することを目指しています。アレルギー表示や代替食品の開発などのフードテックが進めば、今後救われる命が増えていくことでしょう。












