クリスマスコフレとエシカル消費|動物実験から考える「贈り物」の裏側


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毎年冬になると、化粧品ブランドがこぞって発売するクリスマスコフレ。豪華なパッケージや限定デザインに心躍らせ、「自分へのご褒美」として購入する人も多いはずです。けれども、そのきらめきの裏側に「見過ごされがちな課題」があることをご存じでしょうか。
コフレを販売する大手ブランドの多くは、いまだに動物実験と関わりを持っています。
たとえばNARSはかつてクルーエルティフリーを掲げていましたが、中国市場に参入する際、現地規制で求められる動物実験を容認しました。Jurliqueなど自然派をうたうブランドも、一部輸出市場では動物実験を行う可能性があります。
つまり「可愛いコスメを買う」という日常的な消費行動が、知らぬ間に動物の犠牲とつながっているのです。


クリスマスコフレがもてはやされる現実|限定性と可愛さの魔力


毎年冬になると、コスメブランドは「限定」「ホリデー仕様」「ギフトボックス付き」といった魅力的なクリスマスコフレを発売します。豪華なパッケージや特別感に心を動かされ、「自分へのご褒美」として購入する人も少なくありません。SNSでは予約段階から話題となり、完売必至の商品も多く見られます。
つまり、クリスマスコフレはコスメそのものの品質だけでなく、「限定性」「所有欲」「映え」という心理を刺激することで人気を集めているのです。
その裏側にある動物実験という現実
華やかなコフレの裏側には、見過ごされがちな課題があります。それは動物実験です。世界的に見ると、主要コスメブランドのうち約78%が何らかの形で動物実験に依存していると報告されています。また、毎年約50万頭の動物が化粧品の実験で苦しみ、命を落としているとも言われています。
つまり、私たちが手に取る可愛いコスメは、目に見えない犠牲の上に成り立っている可能性があるのです。
クリスマスコフレと環境問題|過剰包装と大量廃棄の影響


クリスマスコフレは「一年に一度の特別なギフト」として、多くの人を惹きつけます。しかしその裏側には、環境負荷という見過ごされがちな課題が潜んでいます。
豪華パッケージがもたらす環境負荷
クリスマスコフレは華やかなデザインや限定仕様で「贈り物らしさ」を演出します。化粧箱、リボン、プラスチック製の仕切りやケースなど、普段の製品よりも多くの資材が使われることが一般的です。
一見すると高級感がありますが、これらの資材の多くは使い捨て。特にプラスチックやラミネート加工された紙はリサイクルが難しく、廃棄物として環境に負荷を与えます。
さらに、生産や輸送にかかる二酸化炭素排出も無視できません。派手な装飾が「可愛い」と話題になる一方で、その背景には温室効果ガスや廃棄物の増加といった代償が存在するのです。
使い切れないアイテムが廃棄される現実
クリスマスコフレは「限定カラー」「ミニサイズの詰め合わせ」といった魅力的な構成が多いですが、実際に最後まで使い切れるでしょうか。普段は使わない色味のアイシャドウやリップ、肌に合わないスキンケアアイテムが「未使用のまま眠る」「数回使って処分される」といったケースは少なくありません。
日本では年間約20万トン以上の化粧品や日用品が廃棄されていると推計されています。その一部には、こうした「限定コスメ」も含まれていると考えられます。つまり、クリスマスコフレを楽しむ消費行動は、意図せず大量廃棄の一端を担っている可能性があるのです。
動物実験は“業界の常識”、しかし変化の兆しも
長年、コスメ業界では安全性を担保するために動物実験が「当たり前」とされてきました。しかし近年では、動物実験を行わない「クルエルティフリー」や、動物由来成分を使用しない「ヴィーガンコスメ」を打ち出すブランドが増えています。
実際、クルーエルティフリーコスメ市場は2023年に約148億ドルと推計され、2030年には235億ドル規模に成長すると予測されています。これは、消費者が「倫理的に正しい選択」を求めていることの表れでもあります。




実験を行っていない/動物実験排除(クルエルティフリー)を明確にするブランド例


動物実験を行わず、エシカルな姿勢を打ち出しているブランドの例をご紹介します。
- Lush:創業当初から動物実験反対を掲げ、製品の95%以上がヴィーガン処方
- The Body Shop:世界的に動物実験廃止運動をリードしてきた存在
- Awake(日本):100%ヴィーガン処方を宣言
- AINOKI mebuki(日本):NPO法人ベジプロジェクトジャパンのヴィーガン認証取得
- BEIGIC(韓国):全製品で動物性原料不使用・動物実験なし
- 資生堂:2013年に化粧品での動物実験廃止を発表
もちろん、ブランドによっては「国内では実験をしないが、中国市場向けには例外がある」などのケースも存在します。消費者自身が、ブランドの公式声明や認証マークを確認することが大切です。
クルエルティフリーコスメという選択、エシカル消費という選択


消費をやめる必要はありません。しかし「選び方」を変えることはできます。購入前にブランドの姿勢を調べる、認証マークをチェックする、本当に使い切れるアイテムを選ぶ――そうした小さな行動が、業界に変化を促す力を持ちます。
SNSでは「映えるコフレ」をシェアするのも楽しいですが、「なぜそのブランドを選んだのか」という背景を語る投稿は、より多くの人に問題意識を広めるきっかけになります。
ブランドの公式サイトやポリシー文書で「動物実験の有無」を確認する
まず大切なのは、ブランドが公式に発信しているポリシーを自分の目で確かめることです。多くのコスメ企業は「私たちは動物実験を行っていません」という表現を使いますが、注意すべきはその但し書きです。
たとえば「ただし、法令で求められる場合を除く」と書かれている場合、中国市場のように動物実験が義務付けられている国で販売する製品は対象外になります。つまり「完全にクルーエルティフリー」なのか、それとも「条件付き」なのかを見極める必要があります。
購入を検討しているブランドの公式ページに「動物実験」「クルエルティフリー」というキーワードがあるかを探し、ポリシーの一文まで読み込むことが、消費者としての第一歩です。
認証マークをチェック
ブランドが独自に「動物実験をしていません」と宣言していても、それがどこまで信頼できるかは別問題です。そこで有効なのが、第三者認証機関によるクルーエルティフリー認証やヴィーガン認証です。
- Leaping Bunny(飛び跳ねるウサギマーク):世界的に最も厳格な基準とされ、成分の仕入れ段階まで動物実験を排除していることを保証
- PETA Cruelty-Free:動物実験をしていないことを表明した企業に付与されるマーク。グローバルでの認知度が高い
- Vegan認証:動物実験だけでなく、動物由来成分を一切使っていない
パッケージの裏面や公式サイトの商品説明にこうした認証マークが記載されていれば、より安心して選べます。
実際に使い切れる商品かどうかを考える
クリスマスコフレは普段のラインナップでは手に入らないカラーやサイズがセットになっているため、「かわいいけど使わない色」「小物が増えても結局使い切れない」といったケースが少なくありません。こうした“限定”の魅力に惹かれて購入してしまうと、結局は未使用のまま廃棄され、資源やパッケージが無駄になってしまいます。
本当に自分のライフスタイルに必要か、最後まで使い切れるかを考えて選ぶことは、エシカル消費の基本です。「欲しいから買う」ではなく「使い切れるから買う」と意識を変えるだけで、無駄を大幅に減らすことができます。
主なコスメブランドと動物実験・認証の対応一覧
| ブランド名 | 動物実験の有無 | 認証マークの有無 | ポリシー・特徴 |
| Lush | 実験なし | Leaping Bunny認証あり | 創業当初から動物実験反対を掲げる。製品の95%以上がヴィーガン処方。パッケージ削減にも積極的。 |
| The Body Shop | 実験なし | Leaping Bunny認証あり | 世界的な「Forever Against Animal Testing」キャンペーンを展開。動物実験廃止運動の草分け的存在。 |
| Awake (日本) |
実験なし | Vegan認証あり | 日本発のヴィーガンコスメブランド。100%ヴィーガン処方を宣言。 |
| AINOKI mebuki (日本) |
実験なし | NPO法人ベジプロジェクトジャパン認証 | 国産ブランドで、動物由来成分不使用・動物実験なしを徹底。 |
| BEIGIC (韓国) |
実験なし | Vegan認証あり | 全アイテムがヴィーガン処方。動物実験なしを徹底する韓国ブランド。 |
| 資生堂 | 2013年以降、化粧品での動物実験を廃止 | 認証マークなし | 医薬部外品や規制対象外では例外あり。代替試験法を導入。 |
| CANMAKE / セザンヌ |
実験なしとされるが明確な認証なし | 認証なし | ファンの間で「クルーエルティフリー」と言われるが、公式ポリシーの確認が必要。 |
| NARS | 条件付きで実験あり(中国市場向けなど) | 認証なし | かつてはクルーエルティフリーだったが、中国市場参入後に動物実験を容認。 |
| Jurlique | 一部市場で実験の可能性あり | 認証なし | 自然派を掲げつつ、中国などの規制対応で例外あり。 |
まとめ|輝きの裏に目を向け、未来につながるコフレ選びを


クリスマスコフレは、華やかなデザインや限定性で心をときめかせる特別な存在です。けれども、その裏には動物実験や過剰包装、使い切れないまま廃棄されるコスメといった課題が潜んでいます。私たちは「ご褒美」としてコフレを楽しむ一方で、その選択がどんな社会的・環境的影響を持つのかを忘れがちです。
今、クルーエルティフリーやヴィーガン認証を掲げるブランドは確実に増えています。消費者が「どのブランドを選ぶか」という小さな行動の積み重ねが、業界全体を変える力になっています。
きらめくパッケージを手に取る前に、「これは未来に優しい選択だろうか」と一度問いかけてみること。それだけで、消費は単なる自己満足から、社会を動かすアクションへと変わります。
今年の冬は、映えるコフレではなく、語れるコフレを。私たちの選択が、未来のスタンダードをつくるのです。











