2025年大阪・関西万博のボランティアって実際どう?参加のリアルと“集まらない問題”をわかりやすく解説!

2025年大阪・関西万博のボランティアって実際どう?参加のリアルと“集まらない問題”をわかりやすく解説!
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大阪・関西万博が開催される前、ボランティアの問題がニュースになっていたことを覚えていますか?

2024年4月30日、ボランティア募集が締め切られた際、目標の約2万人をはるかに上回る約5万5000人の応募がありました。しかし、同年1月26日の募集開始から1ヵ月半で集まったのは約8000人のみで、ボランティアが集まらないことが問題となっていたのです。

2025年2月には、万博に出展する奈良県が、のべ450人のボランティアを募集したところ、応募が15人だけということがニュースとなりました。

さまざまなイベントや災害などの際に、必ずといっていいほど取り上げられるボランティアですが、そもそもボランティアとは何なのか? ボランティアはいいことなのか? など、今回の万博をきっかけに改めて考えてみましょう。

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万博ボランティアの活動とは?応募要件は?

万博ボランティアの活動とは?応募要件は?

「世界を迎えて、世界が広がる」というキャッチフレーズとともに募集された今回の万博ボランティア。どのような募集が行われたのか、確認しましょう。

応募要件

応募できる人は、2025年4月1日時点で満18歳以上の人。日本語による会話(意思疎通)が可能であること、面接や研修への参加が可能であることとされています。

主な活動内容

活動の主な内容は、「来場者の案内・歓迎」「案内所や休憩所の運営サポート」「外国語を活かした各種業務のサポート」「主要駅、空港などでの万博情報案内、交通案内」「街中での観光情報案内」などとされています。

活動は1日3~6時間。月1回程度の最低5日間以上で参加が可能で、「外国語を活かした~」という内容があるものの、語学等のスキルや特別な資格は必要とされていません。

特典や報酬

活動に際しては、ユニフォーム一式が支給され、ボランティア活動保険に加入。活動日における交通費・食費相当として2000円相当(プリベイドカード等)が支給されます。

ただし、面談や研修等にかかる交通費等は自己負担。活動期間中の滞在先までの交通費や宿泊費なども、自己負担、自己手配となります。

奈良県ボランティアのその後

ところで、冒頭で紹介した奈良県のボランティアですが、15人というニュースのあと最終的に約300人の応募があったとウェブサイト「ニュース 奈良の声」は伝えています。

応募要件は18歳以上、日本語能力、身分証の所持、面接・研修への参加でしたが、歓迎要項として、イベントでの実務、接客業の経験、外国語対応、手話対応、体力への自信などが応募へのハードルを高くしていたとの声もネット上には記されています。

さらに、2000円のクオカードが交通費として支給されるとのことですが、奈良県から万博会場へは足りないという問題もあったようです。

「人が集まらない」と言われる理由は?5つの視点から解説

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ボランティアに人が集まらないとされるのは、万博だけの話ではありません。ここからはボランティア全般の問題点について解説していきます。

無償労働への抵抗感

ボランティアに対して、特に若い年齢層では「搾取」だとの認識を持つ人も少なくないようです。

以前、会社の飲み会が残業に当たるのかどうか、疑問を抱く若者が増えていることが話題となりましたが、ボランティアへの認識も似ているかもしれません。かつて日本では「サービス残業」がふつうのことでした。現在、そのような無償労働に対する考え方は大きく変わりつつあるはずですが、まだ旧来の考え方も根強いのが実情です。

若い世代と上の世代の間では、無償労働に対する感覚のズレもあります。「ボランティア=無償労働」と認識する人にとっては、当然、抵抗感もあることでしょう。

ボランティアという無償労働では「やりがい」が強調されることもあります。しばしば「やりがい搾取」と呼ばれ、ボランティアでも長時間労働をさせる、仕事内容が異なるなどの点が問題となっています。

「やりがい搾取」を避けるためには、「活動内容や条件などを明確にする」「無理な要求をしない、また応じない」など、最低限のルールを確認しておくことが必要となります。

就活やキャリアへの繋がりが見えにくい

学生からは、就活などの面で「評価される経験」として、明確な価値があるように見えづらいという声もあがっているようです。実際、就活関連のサイトなどでは、「ボランティアには就活での価値がない」と断言されています。

確かに仕事としての経験ではなく、自主的な活動ともいえないなど、就活の際に評価される面はないかもしれませんが、自分自身にとってどのような経験となっているかなど、アピール方法によっては就活に活かせるのではないでしょうか。

そのためには、ボランティアの運営側も、ボランティアでの実績などを具体的に評価し証明する必要があるでしょう。そうすることでボランティア参加者も増加するはずですし、ボランティアの意欲も高まるはずです。

交通費・宿泊費の負担がネック

先ほどの奈良県の場合も、この問題がありました。地方から参加する人にとっては、この点は大きなハードルとなります。今後、ボランティアの運営側にとっても、考えなければならない大きな課題のひとつとなるはずです。

交通費、宿泊費の自己負担は、参加者にとって最もわかりやすい金銭問題。ボランティアへ参加するか否かを決める重要なポイントとなります。ボランティアが集まるかどうかはこの点にかかっているともいえるでしょう。

運営への不信感・不安

運営への不信感・不安

今回の万博でも、開催まではさまざまな問題点が議論されていました。「準備が間に合わないのでは?」という声は開催直前まで聞かれました。

そのほかにも、会場の問題、万博後の問題、カジノ問題など、多岐に渡る問題があがり、万博そのものへの疑問なども起こりました。これは2021年開催の東京オリンピックの際にも、同じような展開が見られました。

共通点は、イベント運営側に対する不信感だといえるでしょう。イベント開催に対してだけではなく、情報がよくわからない、または出てこないことに対する不信感が広がったことは記憶に新しいところです。

イベントそのものに不安感があれば、ボランティアに参加する意欲がわかないのは当然のことでしょう。

ボランティアという制度そのものへの疑問

そもそもボランティアそのものに対して疑問を抱いている人も少なくないようです。

ボランティア関連書籍やサイトでよく紹介されているのは、日本では、ボランティアに対するマイナスイメージは最近のことではなく、明治頃の古くから存在しているということ。

欧米など個人主義的な社会(個人の利害が集団の利害より優先される社会)では、他者に対する信頼が高く、チャリティーへの参加などが高いのに対し、日本などの集団主義的な社会では他者に対する信頼が低く、チャリティーへの参加などが低調という研究結果も発表されています。

このチャリティーの部分は、ボランティアに置き換えることもできます。

阪神淡路大震災があった1995年は、日本における「ボランティア元年」とも呼ばれます。それ以前の関東大震災などの災害のときから、日本でもボランティアは行われてきたという意見もありますが、いずれにしても日本ではボランティアの歴史がまだ浅いといえるのかもしれません。

「人が集まらない」理由を探ってきましたが、そもそも「感謝されるべき存在」とされるボランティアに対して、モヤモヤしたり、「意識高いね」などと冷笑する風潮が、日本には昔からあることは知っておくべきことでしょう。

それでも参加する意味ってあるの?ボランティアの“リアルな価値”

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ボランティアに人が集まらない理由を解説してきましたが、それでもボランティアに参加する人はいます。結局、大阪・関西万博にも定員を上回るボランティアの応募があったのは冒頭で紹介したとおりです。「なぜ?」と思う人も多いことでしょう。

それでも「やりがい」がある

先ほど「やりがい搾取」の話をしたばかりですが、ボランティアの魅力は「やりがい」にあると答える参加者は少なくありません。

今回の万博のボランティアの声では、「おそらく一生に一度のイベントだから」「世界各国の人たちと出会えることができる」「ふつうの来園者では見られない面を知ることができる」「日本を代表して海外の人を迎え入れられることを誇りに思う」などの声挙がっています。

もちろん、「やりがい搾取」は問題ですが、その問題はボランティア参加者の立場からすると問題外という見方もできます。ボランティアに参加する人は、楽しみや満足感、高揚感を体験しており、有償無償の議論は関係ないのではないでしょうか。

ボランティアには報酬では得ることのできない、それぞれの参加者にとって真の「やりがい」という価値があるのです。

社会的な構造にも目を向けてみよう│「ボランティア=善」の時代は終わった?

ボランティアについてのさまざまな側面を見てきましたが、そもそもボランティアとは何なのか、最後に確認しておきましょう。

ボランティアは「志願兵」でもある

『ボランティア活動のゆくえ-潜む危うさとこれから-』(松田次生著 川島書店 2024)によれば、ボランティアの語源は、ラテン語の「切に求める」という言葉だとされます。その後、自警団を指すようになり、18世紀のイギリスでは「志願兵」のことをボランティアと呼ぶようになりました。

2019年に発行された『ボランティアとファシズム 自発性と社会貢献の近現代史』(池田浩士著 人文書院)は、ボランティアが国家により利用された歴史の側面を描き、話題となりました。

ボランティアが「志願兵」でもあり、ファシズムに加担することになった歴史があることも、知っておくべきでしょう。

変わりつつあるボランティア

変わりつつあるボランティア

ボランティアの定義として、「自発性」「公共性」「無償性」の3原則があげられます。しかし、「ボランティアに金銭を支給しようという動きは1980年代に始まった」(『ボランティア活動のゆくえ-潜む危うさとこれから-』)とされます。

実費や謝礼を受け取るボランティアも、珍しいことではなくなっています。さまざまな議論はあるものの、「ボランティア=無償」というとらえ方は変化しているわけです。ボランティアが個人による、いわゆる「自己責任」であるという考え方にも異論が出ています。ボランティアでは「社会的価値の正当な評価」が求められるべきだとの声が強くなってきています。

ボランティアが、「やりがい搾取」という言葉に見られるように、そして「志願兵」でもあったように、ときに使う側にとって都合良く利用されることがあり、その点が問題となって議論されてきました。

ボランティアについて、社会的な構造の面から考え直す動きが、現在は盛んになってきています。

まとめ|「参加してみたい?」それとも「見守りたい?」

まとめ|「参加してみたい?」それとも「見守りたい?」

ボランティアについては数多くの書籍が出ています。これまで触れてきたことは、どの本でも問題として取り上げられています。

しかし、その多くの本は、ボランティアの問題点をいろいろと指摘しつつ、最後は「それでも、ボランティアは必要」と結論づけています。社会のシステムが多様に発展してきても、どこかに必ず「困っている人たち」や「助けを必要としている人たち」がいて、既存のシステムでは手が届かない状況が生じています。

万博では、会場や街中で道に迷う人や何かを探している人、言葉が通じなくて困っている人などが大勢いることでしょう。災害では、片付けの手助けが必要な人や掃除を手伝ってほしい人などがいるはずです。

これからも、ボランティアが必要とされることは確実です。一方で、そのあり方に対する議論も続いていくことでしょう。

あなたはボランティアについて、参加してみて考えたいと思いますか?

それとも、見守りながら考えたいと思いますか?

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