大衆を煽ってしまう「フードファディズム」とは?問題点や対策などを徹底解説

大衆を煽ってしまう「フードファディズム」とは?問題点や対策などを徹底解説
FOOD

私たちの日々の暮らしを支える「食」は、単なる生命維持のための営みを超えて、私たちの心身の健康や幸せな生活に深く結びついています。

しかし、近年のSNSやメディアの発達により、科学的根拠が不確かな食情報が急速に広まり、それを鵜呑みにしてしまう「フードファディズム」という問題が社会的な注目を集めています。特定の食品を過度に崇拝したり、逆に必要以上に忌避したりする傾向は、栄養バランスの偏りや不必要な出費、さらには健康被害にもつながりかねません。

この記事では、このフードファディズムの定義や具体例を紹介するとともに、なぜ私たちがこうした考えに影響されやすいのか、その心理的メカニズムにも踏み込んで解説します。

また、科学的な視点から見た問題点や、私たちができる具体的な対策についてもご紹介していきます。正しい食の知識を身につけ、振り回されない食生活を送るためのヒントとして、ぜひこの記事をお読みください。

フードファディズムとは

フードファディズムとは

フードファディズムとは、特定の食品や栄養素が私たちの健康や病気にもたらす影響を過度に信じたり評価したりすることを指します。

日常生活のなかで「〇〇を食べれば痩せる」「〇〇さえ食べれば長生きする」といったものや、反対に「〇〇は健康に悪い」というような話を耳にすることも多いのではないでしょうか?

それこそがまさにフードファディズムなのです。

フードファディズムの3つのタイプ

フードファディズムの3つのタイプ

私たちの身の回りで起きているフードファディズムは、主に以下の3つのパターンに分類されます。これらは単独で、あるいは複合的に発生することで、私たちの食生活や健康に影響を及ぼしています。

健康効果を謳う食品の急激なブーム

まず1つ目は「〇〇さえ食べれば痩せる、健康になる」といった、健康効果を謳った特定の食品が大流行することです。

例えば、「スーパーフード」と呼ばれる食品の中には、科学的根拠が十分でないにもかかわらず、SNSやメディアで取り上げられることで急激に人気を集め、品薄や価格高騰を引き起こすケースがあります。このような現象は、バランスの取れた食生活の重要性を見失わせる危険性があります。

食品やその成分が持つとされる“効能”の強調

2つ目は、食品やその成分が持つ効能が強くアピールされ、効果のみが過大に評価されることです。

特定の栄養素や成分に着目し、限られた研究結果や一部の効果のみを誇張して伝えることで、あたかもその食品さえ摂取すれば健康問題が解決するかのような誤った認識を広めてしまいます。

実際には、食品の効果は個人の体質や生活習慣、摂取量などによって大きく異なり、むしろ過剰摂取によるリスクも考慮する必要があります。

食品への期待感や懸念を煽るような情報発信

3つ目は「ある食品は体に良い、またある食品は体に悪い」などと勝手に決めつけ、食品への過度な期待や不安を抱かせるような情報が発信されることです。

これは特に、科学的な根拠が不十分なまま、特定の食品を「善玉」「悪玉」と二極化して捉える傾向として表れます。こうした情報は、食品添加物や農薬の使用、加工食品に対する過度な不安を引き起こし、かえって健全な食生活を送る妨げとなることがあります。

また、こうした偏った情報は、食品産業全体への不必要な不信感を招くことにもつながりかねません。

フードファディズムの代表的な4つの事例

フードファディズムの代表的な4つの事例

では、日本で起きたフードファディズムの代表的な例を4つ見ていきましょう。

寒天ブーム

2005年にテレビ番組で、健康に良い食材として寒天が紹介されたことで、世間で寒天ブームが巻き起こりました。

その結果、寒天の製造が追いつかず、店頭から寒天が無くなってしまう事態に発展したのです。

しかし、流行が過ぎ去ってからはメーカーの売上は落ち込み、業績回復まで時間を要することになったのでした。

牛乳の生産量の低下

牛乳は学校給食で提供されるなど、私たちに馴染みの深い食品です。牛乳に関しては、寒天の流行と同じ時期である2005年に、医師が執筆した書籍が注目を浴びました。

その本には「牛乳は健康に悪影響を及ぼす」と書かれていたのです。

この影響により、成長を続けていた牛乳の生産量は減少の道をたどることになりました。

白インゲン豆食中毒事件

2006年には、テレビ番組で「白インゲン豆はダイエットに良い」と紹介されました。

その理由として、白インゲン豆は炭水化物の消化を抑えるため、炭水化物を摂取する際は白インゲン豆も一緒に食べるとダイエットに繋がるからとのことでした。

しかし、番組放送後に嘔吐や下痢といった健康被害を訴える人が続出したのです。というのも、白インゲン豆には人体に有害なレクチンなどの物質が含まれているからです。

これは加熱すれば無害化しますが、番組で紹介した方法では十分な加熱にはならず、番組の内容を鵜呑みにした人の多くが消化不良を起こしてしまったのです。

店頭から白インゲン豆が消えてしまうだけでなく、健康被害を生んでしまったのが、この白インゲン豆食中毒事件です。

納豆の買い占め

2007年にはテレビ番組がきっかけとなり、納豆の買い占めが起きました。

番組内で「納豆を朝晩の2回食べるとダイエットに効果的」と紹介され、その影響で納豆を購入する人が増加し、納豆の欠品に繋がったのです。

しかし後日、番組の放送内容に捏造があったことが公表されました。

フードファディズムが生む問題点

フードファディズムが生む問題点

ここでは、フードファディズムが生み出す問題点について見ていきましょう。

フードロスにつながる

まず、フードファディズムはフードロスの原因に繋がる可能性があります。ある特定の食べ物へのブームが起こると、生産者は人々の需要に応えるため、生産量増加に努めます。

これは農産物の場合、収穫までに数か月から場合によっては数年の期間を要するため、ブームの終息時期を見極めることが極めて難しい状況を生みます。

しかし、流行が去ったあとには、その食べ物の購入数も急激に減少し、結果としてフードロスを生み出してしまうのです。例えば、健康食品として話題になった食材が、ブーム終息後に大量の在庫として残されるケースが度々報告されています。

スーパーなどの小売店は余剰在庫を抱えることになり、値引きなどの対策を講じても売り切れない場合は、最終的に食品廃棄へと繋がっていきます。これは環境負荷の増大だけでなく、食品生産に関わる資源やエネルギーの無駄遣いにもつながる深刻な問題です。

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本来届くべき人に届かない可能性がある

特定の食品が流行し購入者が殺到することで、店頭から在庫が無くなってしまい、本来必要としている人にその食品が行き届かない可能性が出てきます。これは単なる一般消費者の不便さにとどまらず、医療や教育の現場にも影響を及ぼす深刻な問題となりえます。

先述の寒天ブームの際には、家庭科の調理実習で使用予定の寒天が買えないという教員もいたそうです。同様に、医療や介護の現場で日常的に必要とされる食材が、一時的なブームによって入手困難になるケースも報告されています。

また、価格高騰により、経済的な理由で従来から使用していた食材を購入できなくなる人々が出てくるなど、社会的な不平等を助長する可能性もあります。このような状況は、一部の消費者の過剰な購買行動が、社会全体に予期せぬ悪影響を及ぼす典型的な例といえるでしょう。

フードファディズムに陥らないための対策

フードファディズムに陥らないための対策

フードファディズムに陥らないための対策についてご紹介します。

情報に振り回されないためにSNSと距離を取る

現代はSNSが発展し、さまざまな情報を誰もが簡単に得ることができます。しかし、情報を真に受けてしまうのではなく「正しい情報なのか?」ということを自分に問いかけ、考える必要があります。

常にSNSから情報を得ている人や、ついSNSを確認してしまうという人は、SNSと距離を置く時間を作るのが良いでしょう。

ヘルスリテラシーを育む

ヘルスリテラシーとは「健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力」のことです。

また対策の1つとして、私たち1人ひとりがヘルスリテラシーを育むことも大切です。誰一人として同じ健康状態の人はいません。何の栄養が必要なのかも人によって異なります。

食べ物や情報が溢れ、誰でもすぐにアクセスできる現代だからこそ、自分の体質を知り、自分で情報を取捨選択する能力がますます必要になっていくことでしょう。

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まとめ

まとめ

健康への関心が高まっている昨今、無意識のうちに「体に良い、ダイエットに効果がある」などという言葉を鵜呑みにしてしまってはいないでしょうか?

「フードファディズム」という言葉を初めて聞いたという人にとっても、この問題は身近なものだと感じたはずです。

これさえ食べれば良いという食品は、この世にはありません過剰な情報に惑わされ、フードファディズムに陥らないように日々対策をしていきましょう。

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