太陽エネルギーとは?光エネルギーとの違いや利用方法を初心者向けに解説

太陽エネルギーとは?光エネルギーとの違いや利用方法を初心者向けに解説
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太陽エネルギーと聞くと、ソーラーパネルなどを思い起こし身近に感じるかもしれません。

しかし、どのようなエネルギーなのか、どのような仕組みで太陽エネルギーは使われているかなど、改めて考えてみるとわからない点が少なくないのではないでしょうか。

太陽エネルギーは、実にさまざまな面で私たちの生活に役立っていて、活用の仕方も進化し続けています。

太陽エネルギーやその利用方法の基本について、解説します。

太陽エネルギーの仕組み

太陽エネルギーの仕組み

地球から約1億5000万㎞離れた太陽の半径は、約70万㎞で地球のおよそ100倍となります。太陽の表面温度は6000℃、中心部は1600万℃という高温です。

古代から19世紀半ばまで、太陽は燃えていると考えられていましたが、1920年代になり、太陽は核融合を起こして巨大なエネルギーを生み出していることがわかりました。

水素原子が融合してヘリウムが生成される核融合反応の仕組みを簡単に説明することは難しいのですが、毎秒10億個の原子爆弾に相当するエネルギーを太陽が放出しているといわれます。

この喩えだけでも、太陽エネルギーのすごさがわかります。

太陽の光や熱がエネルギーとして地球に届く流れ

太陽から地球に届くエネルギーとしては、まず光、いわゆる可視光があり、ほかにも紫外線、赤外線などがあげられます。

実は、太陽から地球に届いているのは、放出されているエネルギーの22億分の1のみ。それでも、仮に太陽エネルギーを100%利用できると仮定すると、1時間で世界の年間エネルギー消費量をまかなえるといわれます。

地球に届いた太陽エネルギーの30%は、大気や雲、海面などにより宇宙空間へ反射されています。残り70%のうち、約50%が地表に届き地面や海面を暖め、約20%が大気や雲を暖めています。

光エネルギーとは? 太陽エネルギーとの違い

光エネルギーとは? 太陽エネルギーとの違い

ところで、光エネルギーという表現もしばしば見られますが、太陽エネルギーとの違いは何でしょうか。光エネルギーとは「光によって運動エネルギーに変化するエネルギー」と定義されますが、まず光とは何か見ていきましょう。

昔から、光は粒なのか波なのか、という議論が続いてきましたが、現代では、光は波動でもあり粒子でもあるということが解明されています。

波動の性質は、波長により決まります。波長とは、波の山と山の長さのこと。波長が短いほどエネルギーは大きくなります。

私たちが見ることのできる可視光を真ん中とすると、エネルギーが低い、つまり波長が長い方へ赤外線、電波があり、エネルギーが高い方には、紫外線、X線などがあります。

光エネルギーの身近な例は、遠赤外線ヒーターでしょう。赤外線の出すエネルギーが物質の分子運動を増幅させて、温度を上げる仕組みになっています。

一方、太陽エネルギーは「太陽から放出される光や熱などのエネルギー」のこと。光エネルギーの活用例のひとつが、次に解説する太陽光発電です。

つまり、光エネルギーというと光のみに限られますが、太陽エネルギーは太陽に由来するすべてのエネルギーということになるわけです。

太陽エネルギーの主な利用方法

太陽エネルギーの主な利用方法

太陽エネルギーは主に次の方法で利用されています。

太陽光発電

個人の家でもソーラーパネルを設置している建物があり、現在では太陽光発電は一般的ですが、その仕組みは結構複雑です。

ソーラーパネルは、光が当たると電気が流れる性質の物質で、太陽電池と呼ばれます。太陽電池の最小の単位はセルで、これを並べたパネルがモジュール、さらに大きなものをアレイといいます。

太陽電池は半導体でできています。この半導体にはn型とp型があり、2種類の半導体がくっついたものが太陽電池です。

ここに太陽光が当たると、n型とp型の接合部分に負の電子と正の電子が生じ、負の電子はn型へ、正の電子はp型に移動し電気が流れます。正確に言えばかなり難しくなりますが、このような仕組みで太陽光から発電を行っています。

日本には「メガソーラー」と呼ばれる巨大な太陽光発電所が点在しています。2023年現在、日本最大は岡山県美作市にある作東メガソーラー発電所で、発電出力は260メガワット(MW)。ワット(W)は電力を表す単位で、1メガワットは一度に家庭用エアコンが2000台使える電力といわれます。

太陽熱温水器

太陽熱温水器は、太陽の光が当たると物が熱くなる性質を生かしています。

集熱器と呼ばれる熱を集める部分がありますが、これと湯をためるタンクが屋根の上で一緒になったタイプと、集熱器のみを屋根の上に置きタンクは地上に置くタイプがあります。後者は一般的にソーラーシステムといいます。

太陽熱温水器では、太陽の光を吸収しやすく熱が逃げない素材である選択吸収膜が表面に使われています。

太陽熱発電

太陽の光を虫眼鏡やルーペで黒い紙に当てると火が付くという実験は、学校などでしたことがあるのではないでしょうか。

太陽熱発電の原理はこれと同じです。鏡などを使い、広い範囲から太陽光を集めれば高温になり、タービンを回すなどの方法で発電が可能となります。

太陽光を集めるシステムはさまざまです。大きくカーブした反射鏡を使い、その中に通したパイプを加熱する「トラフ式」は、太陽熱発電の中でも最初に開発されました。パイプにはオイルが流れていて、熱したオイルで蒸気を発生させ、蒸気タービンを回して発電する仕組みです。

広い土地に反射鏡を円周状に並べ、中央に建てたタワーの上の集熱部分に太陽光を反射させ、その熱を利用して蒸気を発生させてタービンを回して発電する「タワートップ式」は、太陽光発電よりも効率がいいといわれています。

「ディッシュ式」は、衛星放送のアンテナのような形をした反射鏡で光を1点に集め、受光部のスターリングエンジンを使い発電します。スターリングエンジンとは、シリンダー内を熱したり冷やしたりして、中の気体が膨張、収縮する原理を利用した発電機。ちなみに、ディッシュとは皿のことを意味します。

「ソーラーチムニー」というシステムもあります。円形の集光部分で暖められた空気を、中央に立つ巨大な煙突(チムニー)に集め、上昇気流となっていく力でタービンを回して発電します。

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農業や建築における太陽エネルギー利用

農業や建築における太陽エネルギー利用

何よりもまず、農業では農作物の成長に太陽エネルギーは欠かせません。

多くの植物は光合成を行います。光合成は、植物が太陽光と二酸化炭素、水から有機物を作り、酸素を放出する活動です。

またハウス栽培にも、太陽エネルギーは必須です。太陽光がハウスに差し込み、ハウス内の温度を上げるだけではなく、前述の太陽熱温水器から温水をパイプに通して、地面の温度を15~20℃に保つシステムを採用している場合もあります。

最近は、営農型太陽光発電も注目されています。これは農地に支柱を立てて、上部に太陽光パネルを設置することで発電も行う仕組みです。

農作物などにより状況は異なりますが、茶畑やフルーツ畑などでは実証実験が行われていて、農業経営の改善につながる方法のひとつとして期待されています。

建築では、冬の日差しを窓から室内に取り入れて室温を高め、それを長く維持できるような蓄熱性の高い断熱材を使うことで、日没後は断熱材からの放熱によって室温の変動をゆるやかにする方法が注目されています。

夏の場合は反対に、建物に降り注ぐ太陽の熱を断熱材で防ぐことで、室内を快適な温度に保つことが可能です。

太陽光発電システムなどが「アクティブソーラー」と呼ばれるのに対し、住宅の建物そのもので太陽エネルギーを有効に活用する方法を「パッシブソーラー」といいます。

なお日本では、寒さが厳しい北国の家では断熱材の利用が一般的ですが、それ以外は、ほとんど利用されていないのが現状です。

断熱材の利用については、2000年に施行された法律で断熱等級という指標が定められました。1から7等級まであり、数字が大きいほど断熱性能が高いことを意味します。

2025年以降に新築する住宅では断熱等級4以上、2030年以降には等級5以上の義務化が決定しています。

太陽エネルギー利用のメリットとデメリット

太陽エネルギー利用のメリットとデメリット

これまで解説してきた太陽エネルギーには、どのようなメリット、デメリットがあるでしょうか。

メリット

まず挙げられるのは、太陽の寿命は100億年以上ともいわれるため、太陽エネルギーは無限に利用できる点です。自然環境に与える負荷もほとんどありません。

また、電気料金の高騰にも影響されないため、長期的に見ると経済的な利点があります。災害時でも電気の確保が可能となります。

デメリット

一方、デメリットとしては初期費用がかかることが挙げられます。パネル、台などのほか、さまざまな機器、工事費などがあり、資源エネルギー庁によると26.5万円(2023年)かかると試算されています。設置後もメンテナンスが必要です。

天候にも左右されるため、思うような発電量が得られなかったり、変動が大きかったりする場合があります。

また、2012年からスタートしたFIT制度(固定買取価格制度)では、10年間は1キロワットあたり〇〇円と決まった単価で電気を買い取ってもらえましたが、FIT期間終了後の11年目以降は、同じ単価では売電できなくなります。

2012年時点では、一般家庭住宅用の買取金額は、1キロワット当たり42円。しかし、FIT期間終了後は1キロワット当たり7~9円(2023年度)になります。

そのため売電ではなく、蓄電池を設置して発電した電気を自分の家で使うことが考えられますが、家庭用蓄電池の相場は80~250万円といわれていて、大きな負担となってしまいます。

まとめ

まとめ

個人の利用で考える場合、確かにさまざまなメリット、デメリットもありますが、自治体によっては補助金などの援助があるので、太陽エネルギーの利用を検討する際は事前に確認をしましょう。

企業によっても、さまざまな取り組みがされていますので、いろいろな面から比較することも大切です。現在は、布のようにやわらかい太陽電池が実用化されたり、塗ることで発電できる太陽電池などの開発も進められています。

さらにソーラーカー、ソーラー飛行機などの開発や宇宙空間での太陽光発電所など、太陽エネルギーを利用した技術は、日々進化を遂げています。

太陽エネルギーに関する情報に高い関心を持って、エコな世界を目指しましょう。

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