シリアスゲームとは?教育・医療・社会問題解決におけるゲームの力を解説
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ゲームと聞くと、多くの人は娯楽や暇つぶしを思い浮かべるでしょう。しかし、近年注目を集めている「シリアスゲーム」は、そんな固定観念を覆す存在です。シリアスゲームは、ゲームの楽しさや没入感を活かしつつ、教育や社会問題の解決など、より深刻な(シリアスな)目的を持つ新しい形のゲームです。
本記事では、シリアスゲームの定義や特徴、そして実際の活用事例について詳しく解説します。エンターテインメントの枠を超え、社会に変革をもたらすゲームの可能性について、一緒に探っていきましょう。
シリアスゲームとは
まずは、そもそもシリアスゲームとは何かを解説します。
シリアスゲームの定義
シリアスゲームとは、単なる娯楽を超えた明確な目的を持つゲームのことを指します。教育、訓練、医療、社会問題の啓発など、さまざまな分野で活用されています。シリアスゲームはプレイヤーが楽しみながら学び、スキルを向上させ、または特定の問題に対する理解を深めることを目指しています。
例えば、歴史の授業で使われるシミュレーションゲームや、外科医の手術訓練に用いられる精密なシミュレーター、環境問題への意識を高めるために作られたストラテジーゲームなどが挙げられます。
エンターテインメントゲームとの違い
シリアスゲームは、一般的によく言われるゲームとは違いを持っています。
最も大きな違いは目的にあります。エンターテインメントゲームの主な目的が「楽しませること」であるのに対し、シリアスゲームは「学ばせること」「訓練すること」「問題意識を高めること」など、より社会的な目的を持っているのです。
また、シリアスゲームは原則として現実世界の問題や状況をシミュレーションする形になっているのも特徴です。プレイヤーの行動が、現実世界でも応用可能なスキルや知識の獲得につながるよう設計されています。例えば、災害時の避難訓練をゲーム化したものでは、プレイヤーは仮想空間で適切な避難行動を学びますが、その知識は実際の災害時にも活かすことができるのです。
シリアスゲームの用途と分野別事例
シリアスゲームは、驚くほど多様な分野で活用されています。ここでは、主要な活用分野とその具体的な事例を見ていきましょう。
教育分野でのシリアスゲーム
教育は、シリアスゲームが最も活躍する分野の一つです。従来の教科書や講義形式の授業では、生徒の興味を引き出し、集中力を維持することが難しい場合があります。しかし、ゲーム要素を取り入れることで、学習をより魅力的で効果的なものにできるのです。
例えば、「Minecraft: Education Edition」は、人気ゲーム「Minecraft」の教育版です。このゲームでは、生徒たちは仮想空間で建築や資源管理を行いながら、数学、科学、歴史などの様々な科目を学ぶことができます。
ビジネスにおけるシリアスゲーム
ビジネスの世界でも、シリアスゲームは重要なツールとなっています。特に、社員教育やリーダーシップ開発の分野で活用されています。
例えば、「SimCity」のようなシミュレーションゲームの要素を取り入れた「GoVenture」は、経営シミュレーションゲームです。プレイヤーは仮想の会社を経営することで、ビジネスの基本的な概念や戦略的思考を学ぶことができます。
社会問題解決に向けたシリアスゲーム
社会問題の啓発や解決にも、シリアスゲームは大きな役割を果たしています。複雑な社会問題をわかりやすく体験することで、プレイヤーの理解や共感を深めることができるのです。
「Spent」というゲームは、貧困問題を扱ったシリアスゲームの好例です。プレイヤーは、低所得者の立場に立って、限られた予算の中で1ヶ月間生活するという設定です。食費、住居費、医療費など、様々な出費のバランスを取りながら生活していく中で、貧困層が直面する日々の選択の難しさを体験的に学ぶことができます。
環境問題に関しても、多くのシリアスゲームが開発されています。「World Without Oil」は、石油枯渇後の世界をシミュレートするオンラインゲームです。プレイヤーは、資源の枯渇が社会に与える影響を体験しながら、持続可能な生活様式について考えを深めることができます。
シリアスゲームの効果とメリット
シリアスゲームが注目を集める背景には、その高い効果があります。従来の学習方法と比べて、シリアスゲームにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
学習効率向上への効果
シリアスゲームの最大の利点は、学習効率の向上です。ゲームの持つ没入感や即時フィードバックの特性が、学習効果を高めているのです。
米国の教育学者エドガー・デールが提唱した「経験の円錐」理論によれば、人は読んだり聞いたりしただけの情報よりも、自ら体験したことをよく覚えているとされています。シリアスゲームは、まさにこの「体験学習」を可能にするツールなのです。
シリアスゲームを用いた学習は、従来の学習方法と比べて高い学習効果があります。特に、言語学習や歴史学習などの分野で、その効果が顕著な傾向にあります。
課題解決能力の向上
シリアスゲームのもう一つの大きな利点は、課題解決能力の向上です。多くのシリアスゲームは、プレイヤーに複雑な状況下での意思決定を求めます。これは、現実世界での問題解決能力やクリティカルシンキングのスキルを育成することにつながります。
例えば、前述の「SimCity」のような都市経営シミュレーションゲームでは、プレイヤーは限られた予算の中で、インフラ整備、環境保護、経済発展などの様々な要素のバランスを取りながら都市を発展させていく必要があります。こうした体験は、複雑な問題に対する総合的な判断力を養うのに役立ちます。
社会的影響力の強さ
シリアスゲームの特筆すべき点として、その社会的影響力の強さが挙げられます。ゲームという形式を通じて社会問題を体験することで、プレイヤーの意識を効果的に変える力を持っているのです。
例えば、難民問題を扱った「Against All Odds」というゲームでは、プレイヤーは難民の立場に立って、迫害から逃れ、新しい国で生活を始めるまでの過程を疑似体験します。このような体験を通じて、難民が直面する困難への理解と共感を深めることができるのです。
まとめ
シリアスゲームは、単なるゲームの固定観念を超えた大きな可能性を秘めています。教育、ビジネス、社会問題解決など、様々な分野で活用され、その効果が実証されつつあります。
ゲームの持つ没入感を楽しみながら学び、社会問題への理解を深めることができるシリアスゲームは、今後ますます重要なツールとなっていくでしょう。
しかし、シリアスゲームの開発には依然として課題もあります。教育的要素とゲーム性のバランスを取ること、効果を科学的に検証すること、そして開発コストの問題など、クリアすべきハードルは少なくありません。
それでも、シリアスゲームが持つ可能性は計り知れません。複雑化する現代社会において、楽しみながら学び、理解を深め、行動を変えていくツールとして、シリアスゲームの重要性は今後さらに高まっていくのではないでしょうか。