意外と知らない「クエスチョニング」とは?一人称が変わる?恋愛の特徴なども解説

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近年、ジェンダー問題に注目が集まり、セクシャルマイノリティの総称「LGBT」という用語が広く知られるようになりました。そして、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーといった多様なセクシャリティへの理解が進んでいます。
さらに、「LGBT」に「Q+」を加えた「LGBTQ+」という表現も目にする機会も増えてきています。この「Q」は、「クエスチョニング」や「クィア」を意味するもの。しかし、「クエスチョニング」や「クィア」という言葉は、意外と知らない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、「クエスチョニング」について詳しく解説します。
また、クエスチョニングを含め、性的マイノリティに対する誹謗中傷や偏見、問題視される事例も存在します。クエスチョニングの人の悩みについても取り上げますので、ぜひ最後までお読みください。

そもそもセクシュアリティを考える際に必要な4視点
人間の性全般を表す「セクシュアリティ」は、性自認・性的指向・生物学的性・性別表現を元に決めていきます。まずは「セクシュアリティ」を考える際に必要な、4つの視点について紹介します。
性自認
性自認は、自分自身が認識している性別のことで、「心の性」とも言います。
身体的な性は女性であっても、自分自身が男性だと認識している場合、性自認は「男性」です。
多くの人は身体的な性と性自認が一致していますが、なかには、身体的な性と性自認が一致せずに違和感を覚える人や、身体の手術をして性自認の性別と一致させる人もいます。
性自認に関しては、2023年にLGBTなど性的少数者への理解増進法が施行され、社会の理解は進みつつあります。一方で、「性自認」という言葉に疑問を抱く声もあります。
例えば、性自認が男性の人が女性用浴場を利用し逮捕された事例や、オリンピック競技にトランスジェンダー選手が出場することなど、様々な議論を巻き起こしている問題もあるのです。
性的指向
性的指向は、恋愛や性愛として好きになる人の性を指します。性的指向の例は、以下のとおりです。
- 異性が好きな人
- 同性が好きな人
- 好きになったら相手の性別を問わない人
- 男女どちらに対しても恋愛感情を抱かない人
性自認が女性の人を好きになった場合は、性的指向が女性に向いているということです。また、異性が好きな人は性的マジョリティー、同性が好きな人は性的マイノリティーとも言われます。
生物学的性
生物学的性とは身体の性のことで、戸籍に記載される性別です。
生物学的性は、外性器・内性器・性染色体・性ホルモン分泌など、生物学的特徴により判断されます。
ただし、インターセックスといって、生まれつき男女どちらかの典型的な生物学的特徴を持っていない人もいます。
性別表現
性別表現とは、服装や言葉遣い、振る舞いなどによって表現される、自分らしさの性のことです。近年では、性別表現が自由にできるよう、「ジェンダーレス制服」が導入されている学校も増えてきています
性別表現は性自認と同じ性の場合が多いですが、異なる場合もあります。
クエスチョニングとは?
クエスチョニングは、自身の性自認や性的指向がまだ決まっていなかったり、意図的に決めていなかったりするセクシュアリティのことです。
ここからは、クエスチョニングについて詳しく解説します。
クエスチョニングの特徴
クエスチョニングは、自分の性自認や性的指向がどちらなのかをまだ分かっていない、もしくはあえて決めていない状況であることが特徴です。
クエスチョニングの特徴例は、以下のとおりです。
- 男性・女性どちらのセクシュアリティか分からない
- 男性・女性どちらのセクシュアリティも違和感がある
- 性自認や性的指向を決めないほうが生きやすいと感じる
- 性自認や性的指向はひとつに決まるものではないと感じている
- 男性・女性どちらが性自認や性的指向なのか決めかねている
- 性自認や性的指向が変化する可能性がある
また、自身の性自認や性的指向は必ずしも生まれつき固定されるものではありません。
例えば、「昔は女性が好きだったけれど次第に男性が好きになってきた」「昔は男性だと思っていたけど今は女性だと感じる」人もおり、セクシャリティは変化していくこともあるのです。このようなセクシャリティの転換期にいる場合も、クエスチョニングと言えるでしょう。
Xジェンダーとの違い
Xジェンダーとは、性自認が男性でも女性でもない人のことを指します。
クエスチョニングとXジェンダーは似ている言葉のような印象を受けるかもしれませんが、「自分の性自認を認識しているかどうか」という大きな違いがあります。
Xジェンダーの人は、自分が中性や無性であることを明確に認識しているのに対し、クエスチョニングの人は、性自認や性的指向が分からない、またはあえて決めていない状態です。

クィアとの違い
クエスチョニングは個人の状態を表す言葉なのに対して、クィアは性的マイノリティーや既存の性にあてはまらない人の総称を指す言葉です。
もともとは英語で「風変わりな・奇妙な」を意味し、「変態」という意味を込めた同性愛者を差別する言葉として使われていました。しかし、近年では性的マイノリティの人が自分たち自身のことを表す際に、既存のカテゴリーに当てはまらないというポジティブな意味合いとして、積極的に使うようになってきています。
また、LGBTQの「Q」は、「クエスチョニング」と「クィア」両方を意味します。
LGBTQ+以外の性的マイノリティ3種類
ここからは、LGBTQ+以外の性的マイノリティである、アセクシュアル・パンセクシャル・ジェンダーフルイドについて紹介します。
アセクシュアル
他者に対して性的欲求を抱くことが少ない、もしくは全くないセクシャリティです。
アセクショアルの人は、恋愛感情を抱くことはあっても、性的欲求を抱くことはないのが特徴です。
ただし、宗教的な理由などなにかしらの理由で、意識的に恋愛をしないようにしている人は、アセクシュアルにはあてはまりません。
パンセクシュアル
相手のセクシャリティに関係なく、人に恋愛感情を抱くセクシャリティです。全性愛者とも呼ばれます。
男性や女性はもちろん、中性の人を含めた、あらゆる性の人に対して惹かれるのが特徴で、相手のセクシャリティにとらわれません。
ジェンダーフルイド
自身の性自認が流動的であり、その時々によって、さまざまな性別に変わっていく考え方やありようのことです。
周囲の環境や、時期によって性自認は変化していくこともあります。ただし、性自認が変化していくからといって、服装やふるまいなどの性表現が変わることとは別です。
クエスチョニングの人々が悩むこと
クエスチョニングの人は、クエスチョニング特有の悩みがあります。クエスチョニングの人が抱えやすい悩み例は以下が挙げられます。
- 自分のセクシャリティが分からない
- 周囲の人に理解されづらい
- 同じ境遇の人が周囲におらず孤独を感じる
- 結婚や子どもを持つことについての不安を感じる
クエスチョニングの人は、自分の性自認や性的指向がどちらなのかを分かっていない状況ですが、そのこと自体が大きな悩みであることが多いです。
さらに、クエスチョニングというセクシャリティはゲイやレズビアンと比較しても、社会的な認知度が低く、周囲の理解を得るのが難しい傾向にあります。同じ境遇の人と出会う機会も少ないことから、孤独を感じやすくなるでしょう。
また、現状のセクシャリティが分からないことから、結婚や子どもを持つことなど、将来に対する漠然とした不安を感じることも少なくありません。
クエスチョニングの悩みを解決するためには、自分を責めず自分自身とじっくり向き合いながら、信頼できる人に相談してみたり、クエスチョニングについての情報収集をしたりすることが大切です。
なぜ性への考え方が多様化したか
近年では、以前よりも多くのセクシャリティが浸透し、性への考え方は多様化しています。ここからは、なぜ性への考え方が多様化したかを解説します。
LGBTに対する理解が進んだから
LGBTに対する理解が進んだことは、性への考え方が多様化した大きな要因のひとつです。
世界では、性的マイノリティへの理解を深め、差別や偏見のない社会を実現しようとする運動も行われています。
また、SNSの普及により、性の多様性について発信している人やカミングアウトした人が増えたことや、LGBT関連の法改正が進められていることなども、LGBTへの理解が進んだことに影響しているでしょう。さらには、ジェンダーについて学校で教えられている現実もあります。

性の多様化は人間だけではないから
性の多様化は、実は人間だけの話ではありません。自然界では、人間でいう性的マイノリティーの動物は多く存在します。
例えば、バンドウイルカの多くはバイセクシュアルです。中には同性のイルカ同士で長期的な関係を築くこともあります。
人間の性が多様化していることは、自然界では不自然なことではないのです。
クエスチョニングをテーマにした作品『スペシャルQトなぼくら』
出典:講談社BOOK倶楽部
『スペシャルQトなぼくら』は、如月かずさ氏が描くクエスチョニングをテーマにした青春小説です。
この小説の主人公ナオとユエは、化粧やかわいい服装が好きな中学生の男の子たち。そして、ナオがユエとの交流を通して、自分自身を見つめ直していくお話です。
自身の性について悩んでいる方やクエスチョニングへの理解を深めたい方は、ぜひ読んでみてください。
まとめ
この記事では、クエスチョニングについて詳しく紹介しました。自身の性自認や性的指向がまだ決まっていなかったり、意図的に決めていなかったりするクエスチョニングは、まだ社会的認知も低く、周囲に理解を得づらいこともあります。
さらに、性自認に関しては、誹謗中傷や偏見があるのも事実です。性に関する表現がSNS上で問題視されたり炎上したりすることもあり、誹謗中傷に苦しむ人も少なくありません。中には、本当は男性であるのに「性自認は女性だ」と主張して女子トイレに入るなど、悪質な事例も見受けられます。
また、性自認は人生のなかで変化することもあります。なかには、自身の性について疑問を感じたり、悩んだりしている人もいるでしょう。
もし自身の性について悩むことがあれば、自分を責めず、信頼できる人や同じ経験をもつ人に相談するなどしてみてください。