マラウイコーヒーが世界で愛される理由と私たちにできること|小さな国の大きな香り


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あなたはどのような基準でコーヒー豆を選びますか?
選び方の基準はボディ(質感)、味、香り、焙煎度、生産国、、、などたくさんあります。マラウイコーヒーは生産量は少なく世界にはまだあまり知られていませんが、確かな品質と物語を持っています。
本記事では、アフリカの小国マラウイで育まれるコーヒーの魅力と、それを選ぶことで私たちが支えられる未来についてご紹介します。コーヒー豆の選択肢を増やすと同時に、マラウイの生活について知り、未来に貢献する方法を一緒に探ってみませんか?
マラウイコーヒーとは?知られざる産地の物語
マラウイコーヒーは、生産量は多くないですが、環境に恵まれている高品質なスペシャルコーヒーです。ここでは、マラウイコーヒーとは何かについて紹介します。
アフリカ最古のコーヒー生産国のひとつ
マラウイでのコーヒー栽培は、19世紀末にジョン・ブキャナン博士がエディンバラ王立植物園からコーヒー豆を持ち込んだことに始まります。植民地時代にはイギリス人入植者による大規模農園が中心でしたが、独立後は小規模農家の支援体制が整備されました。
1980年代には病害や組織運営の問題により生産が低迷しましたが、高地特有の気候を活かした品質の高い豆は、今も評価されています。
どんな味わい?マラウイコーヒーの特徴
マラウイのコーヒー生産量は、隣国タンザニアやケニアに比べて少ないものの、その品質は非常に高く評価されています。
例えば、タンザニアが年間約15万トンのコーヒーを生産しているのに対し、マラウイはわずか2万5,000トン程度とごく少量。しかし、そのコーヒーは高地で丁寧に栽培されており、繊細な酸味とクリーンな味わいを備えたスペシャルティコーヒーとして世界で注目を集めています。
マラウイコーヒーは、高地の独特なテロワールがもたらす鮮やかな酸味と、穏やかで紅茶を思わせるフローラルな香りが魅力です。ミディアムボディで、柑橘類やベリー、核果類の豊かな風味に加え、繊細で甘みのある後味が楽しめます。
これらの特徴は、標高の高い環境でゆっくりと成熟するコーヒーチェリーと、丁寧な手作業による収穫・精製工程によって生み出されています。こうした品質へのこだわりと独自の味わいが評価され、マラウイコーヒーはスペシャルティコーヒー市場で注目を集めています。
世界中のコーヒー愛好家にとって、マラウイ産の豆は希少でありながらも高品質な選択肢として、その価値がますます高まっているのです。
どこで作られているの?
マラウイの主要なコーヒー栽培地域には、ムズズ、ンチシ、デッザ、チョロ、ムランジェ、ゾンバ高原などがあり、主にシレ高原の高地に集中しています。これらの地域は海抜1,000〜2,500メートルの高地で、ゆっくりと成熟する複雑な風味のコーヒーチェリーの栽培に適しています。
出典:「旅行の友、ZenTech」より
気候は明確な雨季(11月〜4月)と乾季(5月〜10月)があります。雨季では十分な水分が補給され、乾季は収穫や加工に最適な時期。平均気温は15〜25℃で安定し、健全な生育環境を支えています。
また、火山起源の肥沃で水はけの良い土壌が豊富な有機物とミネラルを含み、根の発達を促進し、独特の風味をコーヒー豆に与えています。こうした地理的・気候的条件が、マラウイコーヒーの高品質を支えています。
マラウイコーヒーとSDGsの関係性|1杯が支えるもの
ここではマラウイコーヒーとSDGsの関係性について紹介します。


小規模農家の暮らしとフェアトレード
マラウイではコーヒーが農産物輸出全体の約11%にとどまるものの、何千人もの小規模農家にとっては主要な収入源となっています。彼らは不安定な市場や気候変動による降雨パターンの変化、投入資材の不足といった課題に直面しています。
こうした状況の中で、協同組合への参加やフェアトレード認証は大きな支えとなっています。フェアトレードによって最低価格が保証され、収入が安定しやすくなるだけでなく、プレミアム資金は農業改善や収入の多様化、地域開発への投資にも活用され、農家の暮らしの持続可能性を高めています。


森林保全とシェードツリー農法
マラウイでは、伝統的な木陰農法=シェードツリー農法が再評価され、森林保全と持続可能な農業の両立が進んでいます。農家はコーヒーだけでなくバナナやアボカドなど多様な作物を混作し、近年はアグロフォレストリーとして体系的に導入。
これにより、化学肥料を使わずに土壌を肥沃に保ち、病害虫を自然に防ぐ有機農法が可能となり、生物多様性の保全にもつながっています。また、樹木は土壌の流出や崩壊を防ぎ、木陰がコーヒーの品質向上にも寄与するなど、多面的な恩恵をもたらしています。
アグロフォレストリー:農家が農作物や畜産物とともに樹木や低木を栽培する農法で、農家の食料安全保障の確保、収入の増加、生物多様性の保全、そして気候変動の影響への適応に役立つ。
気候変動の影響と未来
マラウイでは近年、サイクロンや洪水、干ばつといった異常気象が頻発しています。特に2022年と2023年に発生したサイクロン「アナ」や「フレディ」は甚大な被害をもたらし、多くの農地が浸水や流失に見舞われました。
また、「コーヒーベリーボーラー(CBB)」や「フォール・アーミーウォーム(FAW)」といった害虫の被害が深刻化しています。特にFAWは2016年以降、全国の農家の約10%に被害を与えました。CBBは気温上昇により高地にも拡大し、コーヒー豆の品質低下を招いています。
こうした異常気象や害虫被害の拡大からアグロフォレストリーという農法の導入が必然になってきています。
最新のマラウイコーヒーの事例
近年のマラウイコーヒーに関する事例について紹介します。
日本企業との連携事例
近年ではマラウイコーヒーは日本企業でも取り入れられています。アタカ・トレーディングは、アフリカ産コーヒーの輸入に力を入れる中で、マラウイ産スペシャルティコーヒーの取り扱いを強化しています。スペシャルティコーヒーとは、生産から消費までの過程が厳密に管理され、産地や生産者の特定が可能な高品質コーヒーのこと。
この事業は「量より質」の価値観に基づき、良質な豆を生産する農家に正当な賃金を支払うという理念を掲げています。価格は通常より高めですが、持続可能な生産地に限定し、倫理的な調達と環境保全にも配慮しています。マラウイの豊かな自然環境で育つ豆は、紅茶のような香りと繊細な甘みが特徴で、日本市場でも注目を集めています。
現地で進む女性生産者支援
また、現地での女性農家の支援も進められています。マラウイ中部のムフェレレ協同組合では、UN Womenと世界銀行の支援を受けた「農業セクター全体アプーチ支援プロジェクト(ASWAP-SP II)」により、農業が自給の手段から持続可能なビジネスへと変貌しました。
2018年から2023年の間に数千人の女性農家がエンパワーされ、生産性のジェンダー格差が縮小。協同組合も再建され、現在は176人のうち102人が女性。会長のエスナート・ヴラさんは、農業が地域の未来を切り開く力になると語っています。
私たちにできる、マラウイコーヒーの選び方
ここではあなたが実際にマラウイコーヒーを「体験」してもらうためのコツを紹介します。
フェアトレード認証を選ぶ
国際フェアトレード認証ラベルは、経済・社会・環境の3つの基準を満たす製品に付与され、生産者への適正価格の支払い、労働環境保護、農薬使用規制などを遵守していることを示します。これにより消費者は、公正な貿易を通じて持続可能な地域社会の発展に貢献できます。
主なラベルには以下の種類があります。
1.国際フェアトレード認証ラベル(黒色)
原料の生産から製品完成まで厳密に管理され、認証原料100%を使用。トレーサビリティが保証されています。
2.認証ラベル(矢印付き)
非認証原料を含むが、フェアトレード認証原料が20%以上含まれる製品に使用。パッケージ裏面に詳細記載。
3.国際フェアトレード認証コットンラベル
認証コットンのみで作られた製品に付与。混合繊維の場合は一定割合以上の認証コットン使用が条件。
4.国際フェアトレード認証ゴールドラベル
公正な条件で採掘・取引された金を使用したジュエリーに付けられます。
5.国際フェアトレード原料調達(FSI)ラベル(白色)
製品中の特定原料のみがフェアトレード認証原料であることを示し、柔軟な調達方法(マスバランス方式)も認められています。
ラベルはパッケージの表面や裏面で確認でき、矢印や説明文から詳細を把握できます。消費者はラベルを見て製品の公正性や持続可能性を判断できます。
豆の買い方・楽しみ方
マラウイコーヒーを店舗で扱っている企業は数少ないですが、オンライン上では様々な企業が取り扱っています。
マラウイ産コーヒーの焙煎度合いは、中深煎りがおすすめです。爽やかな酸味に程よい苦みが加わり、飲みごたえのある味わいになります。また、酸味が強いので角をとるために、淹れ方はネルドリップがおすすめです。
ギフトにして広めよう
マラウイコーヒーは、味わいだけでなく生産背景にも価値があります。フェアトレード認証や女性農家支援など、社会的な意義を持つこのコーヒーは、大切な人へのギフトにも最適です。環境や生産者への配慮が詰まったコーヒーを贈ることは、「思いやり」や「共感」を伝える手段にもなります。
特に近年では、コーヒー豆やドリップバッグをギフトセットとして販売するブランドも増えています。
ギフトとして贈ることで、受け取った人が「エシカルって何だろう?」と興味を持つきっかけにもなります。一杯のコーヒーから広がる会話や気づきが、持続可能な未来への第一歩に。美味しさとともに、価値ある選択を届けてみませんか?


まとめ|1杯のコーヒーがつなぐ遠い国と私たち
私たちが手にする一杯のコーヒーの裏には、遠い国の農家たちの暮らしがあります。マラウイで丁寧に育てられたコーヒー豆は、繊細な香りと味わいだけでなく、生産者の想いと努力も詰まった特別な存在です。
フェアトレード認証のマラウイコーヒーを選ぶことは、適正な価格での取引を通じて、現地の生産者の生活やコミュニティの発展を支えることにつながります。エシカルな選択は、日常の中で誰かを支えるやさしいアクション。大きなことはできなくても、コーヒーを選ぶという小さな行動が、その一歩となります。
一杯のコーヒーが、私たちとマラウイをやさしくつなげてくれます。