日本の防災はどう進化した?地震・津波警報の歴史と現在できること

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日本の防災はどう進化した?地震・津波警報の歴史と現在できること

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地震や津波の多い日本では、テレビやスマートフォンを通じて緊急地震速報や津波警報、南海トラフ地震臨時情報などが伝えられています。しかし、それぞれの情報が何を意味し、どこまで災害を予測できるのか正確には知らない人も多いのではないでしょうか。

現在の科学では、地震が発生する日時・場所・規模を事前に高い精度で特定することはできません。それでも、過去の災害を調べて危険度を評価したり、発生した地震をすばやく検知したり、津波の到達を予測したりする技術は発展してきました。

日本の防災は大きな災害が起こるたびに課題が明らかになり、観測、警報、制度、情報の伝え方が見直されてきました。この記事では、日本における地震・津波防災の歴史を振り返りながら、現在の防災で「できること」と「できないこと」を解説します。

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日本の防災は「減災」が前提条件

日本の防災は「減災」が前提条件

地震そのものを止める技術は存在せず、発生を言い当てる技術も確立されていません。そのため現在の日本の防災体制は「被害を減らす」という考え方を土台にしてきました。ここで「減災」が主軸になった理由と背景を解説します。

地震の発生そのものはそもそも止められない

地震の発生やプレートの動きを人の手で止めることはできず、地震の日時を正確に言い当てる技術も確立されていません。

そのため地震防災では「災害を発生させないこと」ではなく建物の耐震化や観測、警報、避難によって被害を減らすことが重視されています。この考え方が「減災」と呼ばれます

現在の体制は過去の災害への対応で形づくられた

現在の防災体制は、過去の災害によって明らかになった弱点を一つずつ補いながら整えられてきたものです。

たとえば1960年のチリ地震津波は、太平洋を越えて津波の情報を共有する必要性を各国に示しました。また、1995年の阪神・淡路大震災を経て、活断層の調査や地震発生確率の評価が本格化しています。災害のたびに制度や体制が書き換えられてきたといえます。

近代以前の防災はどうだった?

近代以前の防災はどうだった?

地震計も通信網もなかった時代、人々は何を手がかりに災害に備えていたのでしょうか。近代以前の防災方法について確認します。

石碑や古文書が災害の記録を残した

津波に襲われた地域には、津波が到達した場所や避難の教訓を記した石碑が残されています。古文書や寺社の記録にも、地震の揺れや津波、建物被害などが書き残されてきました。こうした記録は、後世の住民に「どこまで津波が来たのか」「どのようなときに避難すべきか」を伝える役割を果たしました。

言い伝えが避難行動を支えた

もちろん、文字による記録だけではありません。強い揺れを感じたら海から離れる、海面が大きく引いたら高い場所へ逃げるといった知識も、地域の経験として伝承されてきました

近代的な警報がなかった時代の防災は、人々の記憶を世代から世代へ手渡すことで成り立っていたといえます。

日本国内の津波警報は三陸地方の津波がきっかけ

日本の近代的な津波防災は、三陸沿岸を襲った二度の大津波をきっかけに動き出しました。地域の記憶に頼る段階から、国の観測・通信制度によって警報を伝える段階へ移行した時期です。ここでは、その転換点となった出来事と、当時の警報が抱えていた制約を見ていきます。

明治・昭和の三陸地震津波が体制整備のきっかけになった

大きな影響を与えたのが、1896年の明治三陸地震津波と1933年の昭和三陸地震です。特に昭和三陸地震では、三陸沿岸を中心に3,000人を超える死者・行方不明者が発生。こうした被害を背景に、地震を観測し、津波の危険を沿岸地域へ知らせる体制の整備が進められたのです。

1952年に国の津波警報業務が始まった

こうした流れのなかで、1952年に気象庁の津波警報業務が開始されました。同年には気象業務法が施行され、警報は法律に基づく国の業務として位置づけられます。これは防災が地域の経験や言い伝えだけに頼る段階から、国の制度によって警報を伝える段階へ移ったことを意味します。

観測と通信の速度が警報の早さを決めていた

ただし、当時の警報発表には現在よりはるかに時間がかかりました。

業務開始当初は、各観測地点の職員がP波とS波の到達時刻を読み取り、電話や電報で気象庁へ送り、本庁が地図や計算尺などを使って手作業で震源と規模を決めていました。この作業には平均して17分程度を要したとされています。

その後、観測機器や通信技術、コンピューターによる計算が発達し、津波警報はより早く発表できるようになっていきました。

チリ地震津波がもたらした国際的な変化

チリ地震津波がもたらした国際的な変化

津波は発生した国の沿岸だけを襲うとは限りません。1960年のチリ地震津波は、そのことを日本を含む太平洋沿岸の国々に突きつけました。ここでは、この災害が国内の監視体制の限界を露わにし、国際的な情報共有の枠組みを生むまでの流れを整理します。

日本では揺れを感じないまま津波が到達した

1960年5月、チリ南部でモーメントマグニチュード9.5の巨大地震が発生しました。地震によって生じた津波は太平洋を横断し、ハワイやフィリピン、日本などの沿岸に到達しました。

日本では震源から遠く離れていたため、地震の強い揺れを感じないまま津波が押し寄せました。国内の地震だけを監視していても、海外で発生した津波には十分に対応できないことが明らかになったのです。

ここから太平洋沿岸国による情報共有が始まった

当時は、各国の地震情報や潮位観測データを迅速に共有する仕組みも十分ではありませんでした。気象庁の資料では、チリ地震津波の際に関係機関へ津波情報が的確に伝わらなかったことが国際協力体制を整える背景の一つになったとされています。

これを受け、ユネスコの政府間海洋学委員会(IOC)は1968年、太平洋津波警報組織の国際調整グループ(ICG/ITSU、現在のICG/PTWS)を設立。太平洋沿岸国が地震や潮位の観測情報を共有する体制が整えられていきます。

「津波防災は一国だけでは完結しない」が広まった

国際的な津波警報網では、地震が起きた場所や規模、各地で観測された潮位変化などが共有されます。その情報を受け取った各国の機関が自国の沿岸に必要な警報や避難情報を発表します。

チリ地震津波は、津波が一つの国だけで完結する災害ではないことを示しました。防災は国内の制度だけでなく、海を囲む国々の協力によって支える必要があると認識されたのです。

地震を事前に予知することは可能か?

地震を事前に予知することは可能か?

現在の科学では、地震の発生日時・場所・規模を確度高く予測することはできません。 しかし日本はかつて、予知を国の防災の柱に据えようとした時期がありました。観測を続ければ前兆をつかめるという期待のもと、専用の体制や法律まで整えられたのです。

ここでは、その取り組みと、なぜ想定どおりに進まなかったのかを見ていきます。

予知を前提に、国の観測体制が整備された

1960年代には、地殻変動や地震活動を継続的に観測すれば、地震の前兆を捉えられるのではないかという期待が高まりました。1969年には、関係機関の観測結果を交換し、地震予知について学術的に検討する地震予知連絡会が発足しています。

特に注目されたのが東海地震です。駿河湾周辺では大規模な地震が起きる可能性が指摘され、地殻のひずみなどを監視する体制が整備されました。

直前予知を前提とした法制度までつくられた

この期待は、法律にまで及びます。1978年には大規模地震対策特別措置法が制定され、観測データから東海地震の危険性が高まったと判断された場合には、警戒宣言を出して事前の防災対応を行う制度が設けられました。

地震の直前予知を前提に、社会全体の動きを止めて備えるという構想だったのです。

しかし、すべての地震に共通する前兆は確認されなかった

その後の研究によって、地震には必ず事前に確認できる共通の前兆があるわけではないことが分かってきました。

地下水位や地殻変動、微小地震、電磁気的な変化など、地震の前に起きたとされる現象はあります。ただし、同じような変化が起きても地震が発生しない場合や、明確な変化が観測されないまま大地震が起こる場合があります

そのため現在の科学では、地震の発生日時、場所、規模を確度高く予測することはできないとされています。かつて想定されていた東海地震の予知情報も、現在は運用されていません。

阪神・淡路大震災を機に「予知」から「備え」へ重点が移った

阪神・淡路大震災を機に「予知」から「備え」へ重点が移った

1995年の阪神・淡路大震災は、都市直下の地震がもたらす被害の大きさとともに、研究成果が防災に生かされていない現実を明らかにしました。この災害を境に、防災の重点は特定の地震を言い当てることから、地域のリスクを事前に知って備えることへと移っていきます。

地震調査研究推進本部が設置された

1995年に発生した阪神・淡路大震災では、兵庫県南部を震源とする内陸の地震によって都市部に大きな被害が生じました。この災害では、地震に関する調査研究の成果を防災行政や社会へ十分に伝え、活用する体制が整っていなかったことも課題となりました。

同年、地震防災対策特別措置法が制定され、政府の特別機関として地震調査研究推進本部が設置されます。

長期評価と地震動予測地図が整備された

地震本部は、活断層や海溝型地震の長期評価、地震活動の評価、地震動予測地図の作成などを行っています。

ここで防災の重点は、特定の地震を直前に言い当てることだけではなくなりました。どこに活断層があるのか、将来どの程度の地震が起こり得るのか、地域がどの程度揺れる可能性があるのかを調べ、耐震化や防災計画に生かす考え方が強まったのです。

「30年以内の発生確率」の読み方

現在よく見聞きする「今後30年以内に地震が発生する確率」も、こうした長期評価の一つです。

ただし、発生確率は地震の日付を予測するものではありません。また、確率が低い断層でも地震が起こる可能性はあるため、低い数字を「安全」と読み替えることはできません。

東日本大震災後、津波警報の「伝え方」が変わった

東日本大震災後、津波警報の「伝え方」が変わった

2011年の東日本大震災では、観測や計算の精度だけでなく、情報の伝え方そのものが問い直されました。ここでは初期推定の限界と、2013年に始まった新しい運用について整理します。

最初の発表が実際よりも小さい予想だった

東日本大震災の発生直後、気象庁が最初に発表した津波の予想は、実際に押し寄せた津波よりも小さいものでした。

理由は、巨大地震の起こり方にあります。大きな地震では地下の岩盤のずれが数十秒から数分かけて広い範囲に広がっていきます。つまり、揺れ始めた時点ではまだ「途中」。地震発生から数分で警報を出そうとすると、その時点で分かっているのは地震の一部分だけです。

結果として、規模を小さく見積もってしまうことがあります。

「早く出す」と「正確に出す」は両立しにくい

津波警報は、一刻も早く出す必要があります。避難する時間を確保しなければならないからです。

しかし、正確な規模が分かるまで計算を続ければ、警報はその分だけ遅れます。逆に速さを優先すれば、最初の予想は外れやすくなります。この二つを同時に満たすことは難しく、東日本大震災はその難しさを最も厳しい形で突きつけました。

数字ではなく「巨大」「高い」と伝えるようになった

そこで気象庁は津波警報の出し方を見直し、2013年3月から新しい方法を始めました。巨大地震の可能性があり、規模がすぐに確定できない場合には、津波の高さを数字で示しません。かわりに「巨大」「高い」という言葉を使います。

数字を出すことには思わぬ落とし穴があるためです。たとえば「3メートル」と聞けば、多くの人は「それ以上は来ない」と受け取ります。海沿いの高台に逃げるべき場面で、自宅の2階にとどまる判断につながりかねません。数字を伏せるのは、この誤解を避けるためです。

この見直しは、防災情報が計算の精度だけで成り立つものではないことを示しています。受け取った人がどう行動するかまで含めて、初めて機能するのです。

熊本地震で見直された「本震・余震」の考え方

熊本地震で見直された「本震・余震」の考え方

大きな地震が来たら、あとは小さい余震が続くだけ。多くの人がそう思っていました。2016年の熊本地震は、その常識が通用しないことを示しています。最初の地震のあとに、さらに大きな地震が起きたからです。

ここでは、この経験が地震後の呼びかけをどう変えたのかを見ていきます。

最初の地震の翌日、さらに大きな地震が起きた

2016年4月14日、熊本県熊本地方でマグニチュード6.5の地震が発生しました。その約28時間後の4月16日には、さらに規模の大きいマグニチュード7.3の地震が起きています。

現在では、14日の地震を「前震」、16日の地震を「本震」と呼びます。ただし、14日の時点で「明日もっと大きいのが来る」と分かっていたわけではありません

「前震」という呼び名はあとから決まる

「前震」はその後により大きな地震が起きたことによって、事後的に付けられる名前です。言い換えれば、地震が起きた直後にはそれが一番大きい地震なのか、もっと大きな地震の前触れなのかを見分ける方法がありません。「これで終わった」と判断できないのです。

大地震のあとの呼びかけが変わった

熊本地震を受けて、気象庁は地震後の呼びかけ方が見直されました。現在は、大きな地震のあと1週間程度は同じくらいの規模の地震に注意すること、特に最初の2〜3日は大きな地震が起こりやすいことを伝えています

「余震だから小さいはず」という思い込みは危険です。最初の地震を無事にやり過ごしても、傾いた建物や崩れかけた斜面は、次の揺れで倒れる可能性があります。

南海トラフ地震の情報は何を意味するのか

南海トラフ地震の情報は何を意味するのか

南海トラフ地震については、「30年以内に○%」という発生確率と、「南海トラフ地震臨時情報」という2つの情報がよく登場します。どちらも、いつ地震が来るかを教えてくれるものではありません。しかし、そう受け取られやすい情報でもあります。それぞれ何を伝えているのか整理します。

発生確率は「いつ起きるか」を示していない

南海トラフ沿いでは、過去に大きな地震が何度も繰り返し起きてきました。その発生間隔や、現在の地面の動きなどをもとに、将来の発生可能性が計算されています。

ただし、これは天気予報のような「いつ」の情報ではありません。確率が高くても、それが明日なのか30年後なのかまでは分からないのです。あくまで、その地域のリスクの大きさを示す数字だと考えてください。

臨時情報は「地震が来る」という予告ではない

南海トラフ沿いで一定規模以上の地震や、いつもと違う地殻の動きが観測されたとき、「南海トラフ地震臨時情報」が発表されることがあります。

大地震が必ず来るという予告ではありません。「普段よりは可能性が高まっている状態」を知らせる情報です。実際、臨時情報が出ても大地震が起きないことがあります。逆に、何の異常も観測されないまま南海トラフ地震が起きる可能性もあります。

現在の防災でできること・できないこと

ここまで見てきた歴史を踏まえ、現在の地震・津波防災が到達している地点を整理します。観測手段は多様化し、できることは着実に増えました。一方で、地下深くの状態をすべて把握できるわけではなく、できないことも残っています。

現在できることと、できないことを整理すると、次のようになります。

現在できること 現在できないこと
地震が起こる可能性のある地域を調べる 地震の発生日を正確に特定する
数十年単位の発生確率を評価する 発生場所・規模・日時をそろえて予知する
想定される震度や津波を計算する すべての地震に共通する前兆を捉える
発生した地震を検知して速報する 震源付近でも必ず速報を間に合わせる
津波の到達地域や高さを予測する 最初の地震が前震か本震か即座に判断する
大地震後に危険性が高い状態を伝える 次に起こる地震の日時や規模を断定する

重要なのは、「予知できないから防災情報は役に立たない」と考えないことです。地震の日付を当てられなくても建物の耐震化を進め、危険な地域を把握。そして発生した地震を早く検知し、避難につなげることはできます。

防災情報は「当たった・外れた」だけで判断しない

防災情報は「当たった・外れた」だけで判断しない

防災情報が期待どおりに機能するかどうかは、受け取る側の理解にも左右されます。すべてを予言として受け取れば、地震が起きなかったときに信頼が失われ、次の警報が軽く扱われかねません。最後に、情報との向き合い方を確認します。

情報ごとに目的と限界が異なる

長期評価は、地域の将来的なリスクを示すものです。南海トラフ地震臨時情報は、通常より可能性が高まった状態を伝えるものです。緊急地震速報や津波警報は、すでに地震が発生した後に、揺れや津波から逃れる時間を確保するための情報です。

これらをすべて「地震が来るという予言」として受け取ると、地震が起きなかったときに「外れた」と感じてしまいます。しかし、防災情報の目的は未来を断定することではありません。不確実な状況の中で危険性を伝え、被害を減らすための行動につなげることです。

情報を待たずに行動すべき場面がある

強い揺れを感じた場合や、海岸付近で長く大きな揺れを感じた場合には、情報が届くのを待たずに身を守り、津波から避難する必要があります。

観測・通信設備が被害を受けたり、震源に近いために速報が間に合わなかったりする可能性があるためです。

まとめ|防災は「予知」から「減災」へ

まとめ|防災は「予知」から「減災」へ

日本の地震・津波防災は、地域の記憶や言い伝えに支えられた時代から、地震計による観測、国内の津波警報、国際的な情報共有、緊急地震速報、長期評価や臨時情報を活用する時代へと進んできました。

その過程では、三陸地方の津波、チリ地震津波、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などを受け、それまでの制度や情報発信の課題が見直されています。一方、現在も地震の日時・場所・規模を正確に予知することはできません。緊急地震速報は地震発生後の情報であり、南海トラフ地震臨時情報も発生を断定するものではありません。

防災の進歩とは、災害を完全に言い当てられるようになったことではなく、分からないことが残る中でも、観測や情報伝達、耐震化、避難によって被害を減らす方法を積み重ねてきたことだといえます。

防災情報の名称や数字だけを見るのではなく、「その情報から何が分かり、何までは分からないのか」を理解すること。それも、現代の防災に欠かせない備えの一つです。

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