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毎年10月末になると話題になる「渋谷ハロウィン」。仮装をして交差点に集まる人も、その熱気をニュースやSNSで眺める人もいるでしょう。しかし、祭りのあとに散乱する大量のゴミを見て、「この後、どうなるんだろう」と気になったことはありませんか?
翌朝の路上には、大量のゴミが残されています。散らかった街がいつもの日常を取り戻す背景には、人知れず汗を流す誰かの「見えない労働」があるのです。
この記事では、ハロウィン後の街が抱える課題と、そこに関わる人たちの姿を紐解きます。 誰もが心地よく過ごせる未来に向けて、私たちにできる「エシカルな選択」を一緒に考えてみませんか。

ハロウィンの翌朝、渋谷の路上には大量のゴミが散乱しています。使い捨てられた仮装グッズや、路上飲酒による空き缶、食べ歩きのゴミ容器などです。こうしたゴミを回収し、街を元の状態に戻しているのは、自治体の清掃作業員だけでなく、多くのボランティアの人たちです。
渋谷区は2023年以降、ハロウィン期間中の来街を控えるよう強く呼びかけています。区長自らが「渋谷はハロウィンのイベント会場ではない」と明言した背景には、長年深刻化していた騒音やトラブル、そして大量のゴミ問題がありました。
事態を重く見た区は、2024年には「渋谷は、ハロウィーンをお休みします。」、2025年には「禁止だよ! 迷惑ハロウィーン」と年々強いメッセージで来街の自粛を要請し、ハチ公像周辺の封鎖などの対策を講じています。さらに、トラブルの温床となっていた路上飲酒についても条例を改正し、2024年10月1日からは渋谷駅周辺での夜間(18時〜翌朝5時)の路上飲酒が通年で禁止されることになりました。
コロナ禍以前のピーク時には数トン規模に達していた渋谷のハロウィンゴミ。自粛要請や路上飲酒禁止条例の効果もあり、瓶・缶類のポイ捨てが半減するなど、街の様子には一定の改善傾向も見られます。
しかし、ゴミ問題が完全に解決したわけではありません。渋谷区の発表に基づく報道によると、2025年のハロウィン期間(10月30日・31日)に回収されたゴミの総量は約1,558キロに上りました。依然としてたった2日間で約1.5トンのゴミが街に残されているのが現実です。
こうした膨大なゴミの清掃作業は、自治体の職員や委託業者だけでカバーしきれるものではありません。現在渋谷では、「渋谷ごみゼロ大作戦」のようにボランティア清掃を後押しする取り組みが行われています。11月1日の早朝には、地域の商店街やNPO法人、学生チームなど、多くの人々がトングを握り、街の衛生環境を底支えしているのです。

ハロウィン当夜、渋谷の街にあふれるのは仮装と熱気、そして“無数のごみ”。なぜ、楽しいイベントの裏で、こんなにもゴミ問題が深刻化してしまうのでしょうか?
その背景には、心理学的に説明できる「集団の魔法」が潜んでいます。
大勢の人が集まる場では、一人ひとりの責任感が薄れがちです。これを心理学では「責任の希釈化」と呼びます。自分が片づけなくても「誰かがやってくれるだろう」という空気が漂い、ゴミが放置されやすくなるのです。
仮装やマスクで顔が隠れると、人は自分の“素の姿”から一時的に解放されます。匿名性が高まると、日常なら取らないような行動(ポイ捨て、大声、無断飲食など)が平気になってしまうことも。
ハロウィンは、普段のルールを忘れて楽しむ“ハレの日”。その解放感が、「ちょっとくらい」「細かいことは気にしない」といった気持ちを生みやすくなります。
渋谷という大都市は、多くの人にとって「自分の街」ではないかもしれません。そのため、ゴミを捨てることへの罪悪感が薄くなりがちです。 「どうせ掃除する人がいるでしょ」「自分ひとりのゴミなんて関係ない」という無意識の他人任せが積み重なって、街はごみだらけになります。

ハロウィン直後、街の衛生環境を守るためにさまざまな団体や市民が行動を起こしています。現場ではどのような活動が行われているのか、国内外の具体的な取り組みを見ていきましょう。
原宿・表参道発祥の認定NPO法人「green bird(グリーンバード)」は、「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトに活動する清掃ボランティア団体です。
渋谷エリアのハロウィンでは、“仮装OK”のごみ拾いイベントを実施することでも知られています。参加者は思い思いの衣装を着たまま、夜間や早朝の街で吸い殻や空き缶などを拾い集めます。ハロウィンを楽しむことと街をきれいにすることを両立させ、「参加しながらマナーを守る」という新しい文化を形作っている代表的な事例です。
渋谷のハロウィン翌朝には、行政や企業、商店街による一斉清掃が行われますが、そこにはユニークな有志団体の姿もあります。その代表例が、自作のヒーロー衣装に身を包んで清掃活動を行う「リアルライフヒーロー」です。
単にごみを拾うだけでなく、通りかかる人々にポイ捨て防止を呼びかけるなど、エンターテインメント要素を取り入れたパフォーマンスで街の衛生維持に貢献しています。
関西の文化拠点である大阪・アメリカ村でも、かつてはハロウィン後のポイ捨てが深刻な課題となっていました。これに対し、地元の商店街や学生団体、NPOが連携して立ち上げたのが「ごみ袋配布作戦」です。
当日に来場者へ直接ごみ袋を配ることで、「自分のごみは持ち帰る」という当事者意識を促しました。さらに、カラフルな衣装で清掃する様子をSNSで発信することで、「清掃に参加すること自体がかっこいい・楽しい」という空気を醸成。一人ひとりに責任を持たせる心理的な仕掛けによって、ポイ捨ての抑制に成果を上げています。
海外に目を向けると、ごみを「拾う」だけでなく「出さない」ための取り組みが進んでいます。カナダ・トロントをはじめとする北米各地で広がる「Green Halloween(グリーン・ハロウィン)」は、環境負荷を抑えたイベントを目指す草の根の運動です。
ここでは、1回限りの使い捨て衣装を減らすための「衣装交換イベント(コスチューム・スワップ)」や、リサイクル可能な素材を使ったお菓子の包装など、地域コミュニティを中心に工夫が凝らされています。イベントの企画段階から持続可能性を組み込む視点は、日本の屋外イベントにおいても大きなヒントとなります。

「参加していないのに関係ある?」と思ったあなたにも、できることがあります。楽しむ人がいる以上、支える人も必要。その構造は必ずしも対立ではありません。小さな気づきや行動が、見えない誰かの疲労を軽くするのです。
ここでは、渋谷のような繁華街でのハロウィンを想定しながら、実践しやすい10の行動をご紹介します。
渋谷の路上で見かけるごみの多くは、コンビニ袋やテイクアウト容器、コスプレ小道具の包装などです。小さなエコバッグを一枚、ポケットやバッグに忍ばせておくだけで、「ごみ箱がないから捨てた」という言い訳は減らせます。
「ごみ箱が少ない」のは、事件やテロ対策のため。だからこそ、自分のごみは自分で管理する意識が必要です。
100均の仮装アイテムは安価で手軽ですが、使用後はそのままポイ捨てされがち。渋谷の朝、通りには破れたマントや折れた魔法の杖が散乱しています。
今年の衣装は来年も使えるでしょうか。それとも、1日だけの「使い捨て」でしょうか。レンタル衣装サービスや、メルカリなどの中古活用もおすすめです。
「路上で飲んで捨てる」という流れがごみ問題の温床になっています。特に渋谷センター街や公園通りでは、食べ残しやスナック菓子の包装が大量に落ちているのが現状です。
飲食は店の中で。外で食べる場合は、持ち帰れるように準備する。これだけでも、路上がずっときれいになります。
SNSで映える写真を撮る人は多いですが、「そのあと片づけもしたよ」という投稿はあまり見かけません。
しかしあなたの投稿がきっかけで、誰かが気づくかもしれません。「ゴミ拾いも含めて楽しい!」という空気が広がれば、渋谷の未来は変わっていきます。
渋谷では、ハロウィン当夜〜明け方にかけて、NPOや市民団体が自主清掃を行っています。Greenbirdのような団体では、仮装したまま参加できるごみ拾いも実施中です。
当日参加できなくても、運営費用への寄付やSNSシェアで支援することもできるため、ぜひチェックしてみてください。
渋谷のごみ問題は、行政や清掃業者だけでは解決できません。「わたし一人が変わっても、意味がない」と思う気持ちこそ、変化の入口にできます。小さな行動が、周囲に波紋を広げていくからです。あなたの手元から始まる未来が、誰かの負担を減らすことにつながります。

華やかな仮装。仲間との笑い。SNSに映える一瞬の写真。そのすべては、“誰か”が支えたこの街の上で成り立っています。
たとえ参加していなくても、あなたに無関係ではありません。なぜなら「街」は、あなたの暮らしそのものだからです。「来年もこの街で、また笑い合えますように」という願いを込めて、ほんの少しだけゴミのことを考えてみてください。
早稲田大学文学部社会学コース卒業。「環境」と「教育」を軸に暮らしと社会の接点を紡ぐフリーランスライター/ディレクター。社会調査士・遺品整理士。メディア記事の執筆だけでなく、企画設計や構成、インタビュー、編集ディレクションまで一貫して手がける。ジェンダーやケア、感情のグラデーションといったテーマにも関心が深く、「誰かの違和感をことばにする」ことを大切にしている。
