ブルーカーボンとは|企業・行政、海外での取り組みも紹介します
Contents
最近何かと話題になっているブルーカーボン。環境問題に関心の高い人にとって、ブルーカーボンを深く知っておくことは重要でしょう。
この記事では「ブルーカーボンってそもそも何だろう?」と考えている方向けに、ブルーカーボンの特徴や課題、デメリット、企業の取り組みなどを詳しく解説します。
ブルーカーボンとは
ブルーカーボンとは国連環境計画(UNEP)によれば、「藻場・浅場等の海洋生態系に取り込まれた炭素」のことです。
海洋や沿岸地域、またマングローブなどのことをブルーカーボンと呼びます。
二酸化炭素は海の中で生態系に光合成され、有機炭素として貯められる仕組みになっています。
大気中に存在する炭素の50%は海中で循環しているのです。
ブルーカーボンが生成される生態系
ブルーカーボンは、前述したように海洋や沿岸地域、マングローブ、海草場、塩性湿地などが挙げられます。
よく「グリーンカーボン」や「ブラウンカーボン(ブラックカーボンと共存」などという言葉もありますが、グリーンカーボンは陸上に植生する生態系、一方でブラウンカーボンは大気を汚染する物質のことを指すなど、意味は色によって明確に分けられています。
ブルーカーボンと地球温暖化
地球温暖化対策にも大きく貢献するブルーカーボン。
ただしブルーカーボンの力だけでは達成することができません。
健全で広域的な海洋生態系を生成するのと同時に、森林伐採の削減など、グリーンカーボンとも組み合わせて対策することによって、最大25%の温暖化要素が削減できるといわれています。
ブルーカーボンの課題
ブルーカーボンにはメリットもある一方、課題・デメリットもあります。
まず課題の一つとして挙げられるのは、そもそも湿地や森林などが減少しており、かつマングローブ林や海藻など、慢性的に海洋の生態系が減少傾向にあるということです。
こうなると二酸化炭素量はより大きくなってしまいます。
人間の活動もまた影響しています。
森林伐採だけではなく沿岸開発などの影響によって毎年2%の割合でブルーカーボンが失われていることも課題として挙げられます。
ブルーカーボンに関する企業の取り組み
ブルーカーボンに関して、大きく取り組みを行っている企業もあります。
以下ではそんな企業の具体例を3つ紹介します。
トヨタ自動車株式会社
株式会社トヨタ自動車の九州拠点は、九州大学水産実験所と開始した「ブルーカーボン創出技術開発に向けた共同研究」の一環で藻場再生・保全などに取り組みました。
取り組みとして行ったことはブルーカーボンの整備です。
海藻の胞子を付着させるロープを福津市・津屋崎周辺海域に設置し、かつ確固とした調査を行ったうえで、より多くの胞子が根付くロープの張り方やメンテナンスの運用方法を探る環境を整えたといいます。
パソナグループ
大手人材派遣会社のパソナグループでもブルーカーボンに注目しています。
海は勝手に整備すれば良いものではないという信念のもと、全国各所の地元地域の漁業組合とタッグを組みながら推進しています。
ENEOS
ガソリンを提供するサプライチェーンであるENEOS株式会社では、カーボンクレジットの取得を達成しています。
大分県佐伯市名護屋湾および山口県下関市特牛(こっとい)地域で、磯焼け原因の一つとなっているウニを間引き、天然藻場を回復させることによってCO2を吸収するという活動のもと、認証を受けました。
これによって他企業と炭素の排出量の取引ができるようになり、地球温暖化の抑制に一役買うことになったのです。
ブルーカーボンに関する行政の取り組み
次にブルーカーボンに関して行政がどのように取り組んでいるのかを紹介します。
以下4つの具体例を知って、少しずつブルーカーボンの取り組みについて知っていきましょう。
国土交通省
国土交通省では、令和5年3月29日に令和4年度第2回目となる「地球温暖化防止に貢献するブルーカーボンの役割に関する検討会」を開催しました。
この開催によってブルーカーボンの役割が明確となり、CO2削減に向けてどのようにすれば良いのかの方向性が検討されたといいます。
農林水産省
2021年5月に「みどりの食料システム戦略」を策定し、農林水産業の生産力向上と持続性の両立を推進することを掲げた農林水産省。
具体的な取組の一つとして、海藻類によるCO2固定化の推進を明記しています。
東京都
東京都では、主に水道面の整備からブルーカーボンに対する取り組みを行っています。
下水処理水質の向上や合流式下水道の改善、生活排水対策や工場等事業場への排水規制指導、水質や赤潮の発生状況の調査などが挙げられます。
また、運河部に堆積した有機汚泥の除去も行っています。
大阪府
大阪府では、藻嬢の繁栄や保全によって豊かな難波の海を作り出そうというビジョンのもと、さまざまな対策を行っています。
大阪府地球温暖化対策実行計画(区域施策編)(2021年3月)と連携しつつ、国などにおけるブルーカーボンの評価手法等の研究開発の動きを踏まえて、ブルーカーボンも今後検討していくといいます。
ブルーカーボンに関する海外での取り組み
最後に、ブルーカーボンに関する海外での取り組みも紹介します。
以下3国の具体例を知って、今後の日本のブルーカーボンへの取り組みがどのようになっていくかを想像してみましょう。
アメリカ
アメリカのブルーカーボンイニシアチブでは、地球規模の気候変動の影響を軽減する役割を果たす沿岸生態系の保護と回復に取り組んでいます。
国際ブルーカーボン科学作業部会と共同して推進しています。
オーストラリア
オーストラリアではNSW(ニューサウスウェールズ州)に注目してみましょう。
NSW州における2022年から2027年にかけてのブルーカーボン戦略は、ネットゼロ目標に向けて取り組みながら、沿岸および海洋の生物多様性と生態系を回復できる仕組みを作るものと発表されています。
フランス
アイルランドと共同しながら、ヨーロッパ全域のブルーカーボン生態系に関する知識を統合する行動をしているフランス。CO2貯留が潜んでいる可能性のある地図の作成などの成果物を提供して、欧州全体のブルーカーボンに対する知識の格差を埋めることを目的としています。
インドネシア
インドネシアは太平洋で最も主要な海洋国の一つ。
世界のブルーカーボン埋蔵量の17%を保有しているともいわれています。
カリマンタン島という所でマングローブの保全事業が開始されていることが挙げられます。
まとめ
この記事ではブルーカーボンとは何かについて、基礎知識から取り組み事例まで解説しました。
ぜひこれをきっかけにブルーカーボンへの理解を深め、持続可能な社会の実現に向けて一緒に考えていきましょう。