選択的夫婦別姓を解説。夫婦別姓を取り入れている海外の事例と日本の現状

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みなさんは「選択的夫婦別姓」という制度をご存じですか?
日本では結婚すると夫婦どちらかが姓を変えるのが当たり前ですが、実は世界では「姓を選ぶ自由」が広がっています。
特に女性が結婚後も自分の姓を維持できる国が増えているのをご存知でしょうか?
これはジェンダー平等の推進や、個人のアイデンティティ尊重の流れによるものです。
しかし、法律改正の提案が進められている現状はあるものの、日本ではまだ夫婦同棲が義務になっています。「姓を変えたくない」「仕事や人生に影響が出る」と感じる人が増えているのも事実です。
そこで今回は、海外ですでに定着している「夫婦別姓」の現状やメリット、日本の課題についてわかりやすく解説します。
そもそも選択的夫婦別姓とは?
選択的夫婦別姓とは、結婚した夫婦が同じ姓を名乗るか、別々の姓を名乗るかを選択できる制度のことです。
この制度が導入されると、夫婦それぞれが結婚前の姓をそのまま維持することが可能となります。
選択的夫婦別姓制度は、個人の選択を尊重し、姓を変更することによる不便や不利益を避けることを目的とされており、家族の形や価値観の多様化に対応するため、柔軟な法制度が求められています。
国際的には、個人の自由や多様性を尊重する観点から、広く認められている制度であり、自分の姓を自由に選択できるようになっている国も多い海外。
「夫婦が同姓にしなければならない」という制度自体がない国もあります。
多くの先進国では夫婦別姓が進んでおり、夫婦同姓を義務としている国は、現状日本だけです。

日本は遅れてる?夫婦別姓における海外と日本の違い
海外における夫婦別姓について述べてきましたが、日本ではどうでしょうか。
日本に関しては、民法750上で夫婦どちらかの姓に統一するよう(夫婦同姓)に規定がされています。
夫婦別姓に対する意見
2024年に行われた選択的夫婦別姓に関するNHKの調査によると、賛成が62%、反対が27%と、賛成の方が多くいることがわかります。
しかし、年代別で見ると、70歳以上は賛成が48%、反対が40%と年代により傾向が分かれています。
SNSで調べてみても、賛成派と反対派が半数ずつのような印象を受けます。
賛成派の意見として、「選択肢は多い方が良い」や姓を変えずに、法律婚が認められてほしい」との声があがりました。
法律婚に関しては、現状の日本の法律では夫婦が異なる姓のままでいたい場合の選択肢としては「事実婚」しかありません。
さまざまな理由で事実婚ではなく、法律婚を望む夫婦もいます。
そのため、姓は変えたくないけれど仕方なく法律婚をしているという夫婦も少なくありません。
そのような様々な事情を抱えている方も賛成派には多くみられました。
反対派の意見としては、「家族が別姓になることで、家族の一体感が失われてしまう」や「夫婦同氏が日本社会に定着しているから」との声があがりました。
そもそも、夫婦が同じ姓を名乗るという慣行が定着したのは、明治時代からと言われています。
明治時代より前は、庶民は氏(姓)を名乗ることは許されていませんでした。
明治時代から家族が同じ姓を名乗る文化が定着しているため、今から文化が変わることに違和感を覚えている方も反対派には多くみられます。
選択的夫婦別姓のメリット
結婚してもそれぞれの姓を維持できるため、自分のルーツなどの個人のアイデンティティを保つことができます。
そのため、ジェンダー平等の実現にも繋がります。
特にビジネスの場で旧姓を使い続ける必要がなくなり、姓が変わることで、同一人物だと認識してもらえない等のキャリアに対する影響を最小限に抑えることができます。
また、現在結婚の場合には、クレジットカードや住民票などの様々な書類の提出が必要ですが、絶対に変更する必要があるものでは無くなるため、手続きを簡略化することができます。

選択的夫婦別姓のデメリット
子供の姓を両親のどちらかにするかで、夫婦間での合意が必要となり、子供の姓選択などのさらなる問題や議論の必要が生じます。
また、法律や制度の変更を伴うため、コストや時間がかかる他、行政手続き等の変更が必要となるため、初期段階で大きな混乱が生じる可能性があります。
現在の日本で馴染みのある、同じ姓を名乗ることによる家族・一族としての一体感が失われてしまう可能性があります。

選択的夫婦別姓を取り入れた海外の事例
海外で選択的夫婦別姓を取り入れた国は、どのような制度なのでしょうか。
いくつか例を紹介していきます。
アメリカ合衆国
規定する法律は特にありません。
そのため、規則により婚姻時に同じ姓にしなければいけないといったことはありません。細かい規定は州によって異なりますが、どの州も選択の自由があります。
ヨーロッパ
ヨーロッパも姓の選択に関して自由度は高いです(細かい規定は国によって異なります)
ただしドイツでは、婚姻締結時にどの姓で生活するのか決める必要があります。
またオーストリアでは、特に姓の指定をしない場合は、自動的に夫の姓になります。
スペイン語圏では、婚姻によって姓が変わることはありませんが、「名前、父方の祖父の姓、母方の祖父の姓」や「名前、父方の祖父の姓、父方の祖母の姓、母方の祖母の姓」などのように従来の姓に相手の姓を加えることができる方式もあります。
アジア
どの国も基本的には自由となっていますが、父方の姓を名乗ることが多くなっているようです。
しかし、インドやイスラエルなどは宗教的観点から、夫の姓を称しますが、姓の変更は自由になっています。
韓国では姓の変更が元々禁止されているため、夫婦は別姓となっています。
国によって制度は違いますが、自由を重んじている国がほとんどです。日本の制度が世界的に珍しいことが分かりますね。

選択的夫婦別姓に対する世論の反応
世論の反応はさまざまです。
夫婦別姓の制度が”法律”によって定められないと、結局、活用する方は増えないでしょう。
結婚を考えている時は夫婦2人だけの問題ですが、子供のことを考えると家族の在り方についてさらに深く考える必要があります。
家族の姓が同じではないことは、暮らしていく上で不自由を感じることがあるかもしれません。
プラスの意見
そもそも姓を変えない一番のメリットは、変更手続きをせずに今まで通りの生活ができるということでしょう。
銀行の通帳や運転免許証、職場の名義変更など、面倒な手続きが不要になります。
仕事で付き合いのある方への連絡や、名前の知られている研究者の方は、姓が変わると同一人物と認識してもらい辛いという状況に陥ります。
選択的夫婦別姓が取り入れられていれば、上記のようなことは起こりません。
マイナスな意見
ネガティブな声としては、安易な結婚や離婚が増える可能性がある点です。
生まれた子供に夫と妻どちらの姓をつけるのか、話し合いがスムーズにいかない可能性があります。
子供には必ずどちらかの姓をつけなければいけないので、子供や子供の友人・家族は2種類の姓を覚えることになります。
また、家族内で別姓のため、家族間で適用されるサービスを受ける場合、家族だと証明する書類が必要になる場合もあります。
夫婦別姓が日本で認められる日は来る?
2025年2月現在、日本では夫婦別姓は認めらtておらず、選択的夫婦別姓制度は国会にて議論の最中です。
石破総理は、こればで選択的夫婦別姓に賛成の立場を取ってきていましたが、「選択的夫婦別姓導入よりも、旧姓通用仕様の法的整備を求める意見が一番多い」として新たな考えを打ち出しており、注目が集まっています。
さまざまな議論が重ねられており、夫婦別姓にした後の子どもの姓をどのように定めるのか、戸籍制度をどのようにするのか等が、制度導入のための論点となっています。
日本では、戸籍制度があり、親や夫婦、子どもといった家族がひとつの氏として編成されています。
夫婦別姓導入により、この戸籍制度が事実上崩壊してしまうため、現在の制度のままでは、管理が難しくなってしまうのも事実です。
2025年に入り、夫婦別姓についても活発に議論されていますが、相続や税制、代理権に関するトラブルなどの整備が必要になるため、慎重に選択することが必要です。
結論を急ぐのは賢明ではないでしょう。
まとめ
夫婦別姓を導入していても、複雑な問題を抱えている国も多くあります。
実際、日本でも議論になっている子どもの姓については、どの国でも議論されているポイントとなっています。
SNS等でも意見が対立し、攻撃的な意見を述べている人もいますが、夫婦別姓の問題に関しては、今のままでも、制度を導入しても同じくらいのメリット・デメリットがあるため、正解のない問題ともいえます。
しかし、そもそも夫婦別姓とは、個々のアイデンティティや自由、権利を守るために生まれています。
そのため、この議論で一番大切なことは、争うことではなく、何が問題になるか・何を整備するべきかをあらかじめ決定し、適切に進めていくことではないでしょうか。