オーバーツーリズムの事例と対策を解説します
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コロナ禍のピークが終わり、マスクを外して旅行に出かける人たちが増えたり、それだけではなく日本各地で外国人観光客が目立ったりするようになりました。
観光客が多く訪れるとその地域が活性化されるメリットはありますが、その一方で「オーバーツーリズム」と呼ばれる国際問題も発生しています。
本来魅力的であるはずの観光地にダメージを与え、反対に景観を悪くしてしまうオーバーツーリズム。この記事ではオーバーツーリズムの概要から事例、対策まで詳しく紹介します。
オーバーツーリズムとは
オーバーツーリズムとは、観光客が増加しすぎることによってその地域に住む住民に悪影響を与えたり、また地域の自然環境に問題を起こしたりすることを指します。
「over(超える)」と「tourism(観光)」を掛け合わせた造語であり、世界的に使われている概念です。「観光公害」も似たような概念として挙げられます。
主な要因として、LCC(格安航空会社)の普及によって一層旅行客が増えたことや、Airbnbのような民泊サービスの浸透などが考えられます。
いずれにしても旅行・観光が身近になったことによって起こった弊害といえるでしょう。
観光業の発展・環境破壊の現状
観光業はコロナの影響が小さくなったこともあり、再発展しつつあります。2020年には訪日観光客数を2,000万人にする目標を国土交通省が掲げたこともあるなど、国を挙げて観光業の活性化に取り組んでいる現状にあります。
しかし経済的な効果がある一方で、交通渋滞による排気ガス、ゴミの増加による自然環境・生態系への悪影響など、環境負荷があることも事実です。
このため、観光業の発展と自然環境の維持、両方のバランスを取ることが求められます。
コロナ禍で改善した環境問題
世界各地でロックダウンや外出自粛などの対策が求められた結果、全世界から環境問題が改善したという報告が寄せられました。
NASAは人工衛星による大気汚染の観測結果を発表し、さらに中国湖北省武漢市が封鎖されたあと、中国では二酸化窒素の濃度が劇的に低下したことや、大気汚染が深刻なインド北部ではエアロゾルが過去20年で最低の水準になったことが報告されました。
このように、コロナ禍も悪いことばかりではなく、視点を変えてみると良い点もあったことは確かです。
アフターコロナとオーバーツーリズム
ただし、アフターコロナの時代になってからはオーバーツーリズムが加速する事態に。
例えば石川県金沢市では海外人気も高まったことから外国人観光客が増加しましたが、日本とは文化も考え方も違うことからトイレを流してもらえないトラブルが多くなったり地元住民が減少したりといった事態が起きたりしました。
マナーの悪い一部の観光客の影響でこうした側面が発生してしまうこともあるため、行政が注意を呼びかけている現状です。
日本でのオーバーツーリズムの事例
次に、日本でどのようなオーバーツーリズムが起きているかの事例を紹介します。
鎌倉・神奈川
神奈川県鎌倉市では、有名漫画・アニメ「スラムダンク」の聖地と言われる場所がある観光地。
踏切が作中に登場するため、その踏切に観光客が殺到しています。
その結果として交通渋滞が起きたり、道路がそもそも通れなくなったりと地元住民の迷惑は多大です。
京都
日本を代表する観光地である京都ではさまざまな問題が発生しています。
観光客がそもそも多いことによって公共交通機関が混雑で麻痺したり、また観光地でゴミが大量に発生したりなどといった例があります。
西表島・沖縄
沖縄県の西表島は世界遺産に登録されています。
このためユネスコから「観光管理」「ロードキル対策」「河川再生」「森林管理」の4点を改善する策を出すことを日本に求め、国が「世界遺産と人の生活とのバランス」を両立させる案を提出したことが話題になっています。
海外でのオーバーツーリズムの事例
海外でもオーバーツーリズムはホットな話題です。フランスのノルマンディー地方にあるエトルタという場所では、断崖の海岸線浸食という天候問題がありますが、観光客の流入で大打撃を受けています。
エトルタは小さな町ですが、下水処理施設が通常人口の3倍にも及ぶ訪問者に対応できなかったため、昨年メンテナンスのため閉鎖されなければならなかったそうです。
さらに人口増加による土砂崩れも懸念されています。
オーバーツーリズムへの対策
最後に企業・行政・私たちの3つに視点を分け、オーバーツーリズムに対して行える対策を紹介します。
企業がおこなうオーバーツーリズムへの対策
企業がおこなえるオーバーツーリズム対策は、様々な方法が考えられます。
例えば、IT企業などであれば位置情報サービスを利用してトイレや駅、バス停、観光スポットなどの混雑情報を可視化することによって観光客の一点集中を防ぐことが挙げられるでしょう。
また、企業も行政に積極的に協力するなどの方法も考えられます。
行政がおこなうオーバーツーリズムへの対策
行政は地域を代表する機関として、オーバーツーリズム対策の筆頭になって活動する必要があります。
地域で起こっているオーバーツーリズムの現状把握や課題解決方法の考案、実行まで、幅広く対応することが求められます。
私たちがおこなえるオーバーツーリズムへの対策
企業でも行政でもない私たちがおこなえるオーバーツーリズム対策にはどのようなものがあるでしょうか。
最も取り組みやすいのは、観光をする際にその土地にオーバーツーリズム問題があるのかをあらかじめ把握し、地元住民や環境の負担にならないように意識することでしょう。
まとめ
今回はオーバーツーリズムの概要を中心に、対策も紹介しました。
私たちが直接的に解決することは難しい問題ですが、企業や行政の力になることによって改善されることも多くあります。
今回紹介した知識をもとに、ぜひオーバーツーリズムへの理解を深めてみてはいかがでしょうか。