エチオピアの飢餓|根深い原因と持続可能な解決策を解説
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アフリカ大陸東部の「アフリカの角」に位置するエチオピア。長年にわたり深刻な飢餓問題に直面していることをご存じでしょうか。本記事では、エチオピアの飢餓問題の原因とその解決策について解説します。現状を理解し、日本に住む私たちにできる支援について考えてみましょう。
エチオピアの飢餓問題の現状
まずは、エチオピアの飢餓問題の状況についてご紹介します。
最新の飢餓統計データ
エチオピアでは、食料支援を必要としている人が2000万人以上にものぼるといわれています。この数は国民の23%ほどになるため、飢餓問題がいかに深刻かが分かります。
飢餓が及ぼす社会的影響
食料確保が困難な状況が続くと、社会的にもさまざまな影響を及ぼします。例えば、妊娠中や授乳中の女性が栄養不足に陥ると、新生児と母親の両者の命が危険にさらされることになります。
また、干ばつなどの異常気象により家畜を失い、家族を養う収入源をなくしてしまう人もいます。
エチオピアの飢餓問題の歴史的背景
エチオピアの飢餓問題について、歴史的背景をご紹介します。
1970年代と1980年代の飢饉
1970年代から1980年代にかけて、エチオピアは度重なる干ばつに見舞われ、さらに国内紛争や社会主義政権の政策が影響して、食糧危機が深刻化しました。特に1984年の大飢饉は世界的にも注目され、100万人以上が餓死し、数百万人が飢えに苦しんだといいます。
この大飢饉は、干ばつに加えて政府が適切な救済措置を講じなかったことが原因とされています。また、当時のエチオピア政府は食料援助を政治的な武器として使用し、反政府地域への支援を制限したことが被害を拡大させたのです。
気候変動の影響
さらに、近年の気候変動はエチオピアの食料不安を深刻化させています。降雨パターンの変化や干ばつの頻発により、農業に依存するエチオピアの農村部は特に脆弱な状況にあります。持続可能な農業技術の導入や水資源管理の向上が求められていますが、インフラや技術支援の不足がその進展を妨げています。
エチオピアの飢餓の主な原因
エチオピア特有の飢餓の原因についてご紹介します。
エチオピアの気候パターンの変化
エチオピアは、気候変動の影響をとても受けやすい国です。エチオピアには年に2回の雨季がありますが、近年では気候の変化により十分に雨が降っていません。
農業生産への影響
エチオピアでは多くの人が農業に従事しており、エチオピア経済も雨水に依存した農業で成り立っています。そのため干ばつが頻繁に起こると、農業生産に影響を与え、食料の確保を困難にさせていくのです。
貧困と経済的課題
エチオピアは、世界の最貧国の一つです。対外借り入れの増加、安全な水の供給不足や衛生設備が整っていないなど、経済基盤が脆弱なことが課題となっています。
農業技術の遅れ
先に述べたように、エチオピアは降雨に依存した小規模な農業が主流であり、近代の農業技術の発達が遅れています。農薬や化学肥料なども高価なため、これらを購入する金銭的な余裕が農民にはないことも技術が遅れる要因になっているといえるでしょう。
食料へのアクセス問題
エチオピアでは、インフラの未整備やメンテナンス不足が原因で、食品の流通価格が高額なことも課題の一つです。
人口増加と資源の圧迫
エチオピアは人口増加が著しく、現在の人口は1億2000万人以上です。今後も人口は増え続けると予想されていますが、人口増加に伴い、水資源の需要が拡大しています。
これらの需要に対応するために、エチオピアでは上水道の整備が求められています。
政治的不安定と紛争
紛争や情勢不安も飢餓の原因に繋がります。例えば、2020年11月にはティグレ地域で紛争が起こり、数百万人が国内避難民となりました。
国内避難民の問題
不安定な情勢や異常気象による干ばつなどの影響を受け、難民は必要な支援を受けられていないケースがあります。また、紛争により給水設備やトイレなどが破壊されたことで、劣悪な環境で生活をしている人もいます。
エチオピア政府の取り組み
飢餓問題に対するエチオピア政府の取り組みについてご紹介します。
農業生産性向上プログラム
農業成長プログラム(AGP)は、政府プログラムの一つです。このプログラムは、農業生産性の向上と小規模農家の商業化を支援するものとなっています。
国際社会の支援と課題
ここでは、国際社会の支援と課題についてご紹介します。
国連機関による支援プログラム
WFP国連世界食糧計画(WFP)では、干ばつから早期に回復できるような活動や、食料・栄養支援を行っています。
また国連UNHCR協会では難民に対して、食料支援だけでなく、ワクチン接種や医薬品などの医療支援も提供しています。
NGOの活動事例
エチオピアでは、水や衛生設備、教育や医療システムの強化支援などのさまざまな分野においてNGOが活動しています。
支援の効果と限界
教育の面では学校設備が整ったことで、子どもたちが学習に集中できるようになり、進級率の向上にも繋がりました。また給水システムを整備したことで、遠くの水源まで水を汲みに行く必要がなくなり、自宅近くで安全な水を得られるようになりました。
しかし、エチオピアでは人口増加に伴い、支援を必要としている人が増えていくと予想されます。事業予算には限りがあるため、人々への支援が難しくなっていくことも、今後は懸念されるでしょう。
持続可能な解決策に向けて
続いて、エチオピアの飢餓問題に対する解決策について見ていきましょう。
気候変動に強い農業の推進
自給自足の農業様式と干ばつによる食料不足の影響を受けるエチオピアでは、灌漑開発が必要とされています。灌漑農業は農業の生産性を高め、農民の収入や生活を向上させるために大きな役割を担っていくことでしょう。
教育と女性のエンパワーメント
エチオピアは人口が地方に集中しているため、学校や教師の数が不足しており、教育の質にも課題が残されています。このような課題を解決するために、学校を建設したり教師への研修を行ったりしている支援団体もあります。
また、貧困女性が小規模ビジネスを始められるよう支援を行っている団体もあります。そこでは、自らお金を稼ぎ、子どもと一緒に学校へ通えるようになった母親もいるそうです。
女性に向けての支援は、女性の経済的な自立や自尊心への向上にも発展していくでしょう。
地域コミュニティの強化
干ばつや洪水が深刻な問題となっている地域では、コミュニティ全体を活性化させることも重要です。例えば、水や衛生面では、リスクコミュニケーションやコミュニティへの参画によって人々の認識が高められることになります。
それは結果として、コレラなどの病気の流行の予防へと繋がります。
私たちにできること
エチオピアの飢餓問題に対して、私たちは何ができるでしょうか?次の3つを例に挙げてご紹介します。
倫理的な消費選択
日常でできる取り組みとして、リサイクル商品の選択や環境に配慮したマークがついた商品の購入がおすすめです。また一般的に少し高価格にはなりますが、フェアトレード製品を選ぶのもよいでしょう。
エチオピアはコーヒー豆の栽培が盛んです。忙しい日々のなかで一息つきたいときに、フェアトレードコーヒーを取り入れてみるのもおすすめです。
支援団体への寄付や参加
教育環境や衛生問題など、エチオピアが抱える問題は多く残っていますが、その解決のために取り組みを行っている団体はたくさんあります。
ぜひ、支援団体の活動を調べ、協力したいと思う活動へ参加してみましょう。募金や寄付を募っている団体もあります。たとえ少額の募金であっても、あなたの支援が現地の生活や活動のサポートに繋がっていきます。
啓発活動への協力
一人でも多くの人にエチオピアの現状を理解してもらうために、啓発活動へ参加するのもよいでしょう。現地での活動だけに限りません。日本において学校や国際イベントで講演などを行うことは、エチオピアが直面する問題を周知させるよい機会になるでしょう。
まとめ|エチオピアの未来に向けて
日本に住んでいると、なかなか目にしないエチオピアの現状。エチオピアの飢餓問題は、遠い国の出来事ではありません。積極的に情報を収集し、理解を深めることが重要です。できることから行動を起こし、エチオピアのより良い未来の実現に貢献しましょう。