耕作放棄地とは|SDGsの視点から考える
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「耕作放棄地」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
耕作放棄地とは、様々な要因から、かつて農業に使用されていた土地が「何も活用されていない土地」としてそのまま残されていることを指します。
放置されることで雑草や害虫、害獣が増え周辺にまで被害が及んだり、ゴミが不法投棄されたりなど問題が増えています。また、食料自給率の低下にもつながります。
近年、そんな社会問題を食い止めようと企業が工夫して土地を活用するなどの取り組みも増えてきています。
耕作放棄地とは
かつては田んぼや畑など農地として使用されていた土地が、現在は何にも使われないまま放置されている土地が「耕作放棄地」と呼ばれています。
要因
外国からの輸入が増え、国内で生産する必要がなくなったものがあるということ、農業従事者の高齢化が進んだこと、また農地を引き継ぐ後継者がいなくなったことなどが主な原因と言われています。
日本国内の耕作放棄地
この30年間日本国内で全体的に耕作放棄地が増加しています。昭和60年まではおよそ13万haほどでしたが、平成2年以降増加に転じ平成22年には約3倍以上となる39.6万haとなりました。
耕作放棄地面積TOP3
1位 福島県(2.2万ha)
2位 茨城県(2.1万ha)
3位 千葉県(1.8万ha)
耕作放棄地問題
耕作放棄地にはいくつかの問題があり、それを解決するには地域活性化などの対策が必要です。
周辺の土地・住民への被害
使われていない農地がそのまま放置されることで雑草や害虫、あるいは害獣が発生する危険性があります。
また、荒れ果てた土地は景観も悪く、若者の土地離れにつながる恐れも。
ゴミの不法投棄
荒れて雑草が覆い茂った土地は見通しが悪くなり、不法投棄のターゲットにされやすくなります。
景観の悪化
荒れ果てた土地は景観が悪く、若者の土地離れにもつながります。
食糧自給率の低下
耕作放棄地が増えるということは、食糧自給率が下がること。2021年の食糧自給率は38%と低く、これは米の大凶作となった1993年や2018年に並ぶ水準の低さです。
耕作放棄地への対策事例
増加する耕作放棄地への対策として、放棄地の再生や生産性の工場をはかるため近年国や企業がさまざまな活動に取り組んでいます。ここではいくつかの取り組みを紹介していきます。
農地バンク
農地バンクとは、2014年全ての都道府県に設置された中間管理機構のこと。農地を貸したい人と借りたい人を結ぶ役割を担っています。
新たに就農しようとする方に対する支援や、都市住民の農への関わりを促すことを目的の1つとしています。
補助金制度
荒れ果てた放棄地を再生し、有効に活用しようとするとどうしても様々なコストがかかります。
以前施行された「耕作放棄地再生利用緊急対策交付金」では、農業従事者や農地バンク、農業に参入する企業が増加しました。現在は「農山漁村振興交付金」が給付されています。
農業の雇用モデルへの取り組み
今までは農業従事者は個人経営がほとんどでした。しかし現在は高齢化や都市化での農業従事者の減少も課題となっています。天気による収穫量の変動や不作など、自然の要因によって収入がされるというのも農業離れの一因に。
企業が農業事業を行うことで農業に従事するデメリットを減らし、農業に携わる人の雇用の安定や多様性をつくることに成功しています。
耕作放棄地に対する取り組みとSDGsのつながり
今回取り上げた事例の他にも、使われなくなった土地を農地として活用する取り組みも多く行われています。
SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられている169のターゲットを定めています。
これらの取り組みは、そのうちの2.4 「2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。」を解決していくことができるでしょう。
また、農業モデルの創出はターゲット15.2「2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進」にもつながります。
まとめ
農業に従事しない人や近くに農地のない都会に住む人にとってはどこか他人事に感じる「耕作放棄地」ですが、食料自給率の低下などにもつながることで決して他人事ではありません。
個人としてできることは少ないかもしれませんが、耕作放棄地に対する危機意識を持つことが大切です。