素材を生かし切る。北鎌倉の寺院から向き合うコーヒーの未来 – 株式会社龍華

素材を生かし切る。北鎌倉の寺院から向き合うコーヒーの未来 – 株式会社龍華

この取り組みを行っている企業・団体

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株式会社龍華

株式会社龍華は、神奈川県鎌倉市・円応寺境内でコーヒー焙煎所兼カフェ「龍華珈琲」を営む企業です。歴史ある寺院内でコーヒーを焙煎・提供するほか、オンラインストアでコーヒー豆の販売も。また、身近な資源を生かす取り組みとして、地元アーティストへの使用済みコーヒー粉提供や、廃棄されがちな欠点豆の活用をしています。

自宅やオフィス、カフェなどで親しまれているコーヒー。すっきりと目を覚ましたい朝やひと息つきたい午後、誰かと過ごすリラックスしたひと時といった、日常のあらゆる場面で欠かせない存在です。

一方でコーヒーを取り巻く現状にはさまざまな課題があります。気候変動によりコーヒーの収穫量が大幅に減少すると言われる2050年問題、生産者の貧困や後継者不足、森林破壊や土壌汚染など、世界的な問題の解決が求められています。

株式会社龍華ではこれらの世界的な課題を意識しつつも、取り組んでいるのは地道な取り組みです。廃棄される豆の活用やコーヒー粉の再利用など、身近な実践を積み重ねることで、持続可能なコーヒー業界の未来を目指しています。

一杯のコーヒーから広がった、奥深い味わいの世界

同社代表・今井氏がコーヒーに興味を持ったのは、東京都目黒区にある「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」でのアルバイトがきっかけでした。

スターバックスのなかでも国内有数の大型店舗で、焙煎施設を併設し世界各地から厳選した豆を使用したコーヒーを提供しています。今井氏はここでコーヒーについて学ぶうちに、その味わいの多様性や奥深さに関心を持つようになりました。

なかでも、コロンビアにあるセロ・アズール農園のコーヒーを口にした経験は印象に残っているそうです。従来抱いていた「コーヒーは苦いもの」というイメージとは異なり、ピーチやストロベリーのようなフルーティーな風味を感じられたことが、コーヒーの魅力を実感する大きな体験だったといいます。

その後、苦みが少なくフルーティーな酸味が特徴の浅煎りに魅了され、学びを深めるようになりました。イギリスで2年間、浅煎りコーヒーの焙煎や表現方法を学び、ワーキングホリデービザ(就労ビザ)を終えて帰国した今井氏は、2024年7月、実家の寺院の一角にカフェを開業しました。

佇閻魔大王の御前で、自家焙煎のスペシャリティコーヒーを提供

佇閻魔大王の御前で、自家焙煎のスペシャリティコーヒーを提供

龍華珈琲が店舗を構えるのは北鎌倉。歴史ある寺院が点在する自然豊かな静かなエリア。国内外から寺社巡りやハイキングに多くの観光客が訪れます。

龍華珈琲があるのはJR北鎌倉駅から15分ほど歩いた小高い場所にある円応寺の境内です。石積みの壁の間にある石段をのぼり、山門をまたぐと本堂へ続く道が。拝観料300円を払い、本堂に入ると運慶作といわれる閻魔大王が祀られており、多くの拝観客がその迫力ある姿を目当てに訪れます。

本堂へと続く道から右に分かれる道を進むと和の雰囲気漂う建物があり、それが龍華珈琲です。今井氏は落ち着いた環境を提供することを心がけており、店内では枯山水の庭や、ハートの形が印象的な猪目窓など、日本の伝統美を感じながらコーヒーを飲むことができます。

コーヒーは抹茶椀で提供するなど空間に調和する工夫が施されています。

龍華珈琲

メニューはあえて数種に限定。これは余計な迷いなく空間と味わいを楽しめるようにという配慮からです。コーヒーは厳選したスペシャリティコーヒーを自家焙煎の浅煎りで提供しています。

使用済みコーヒー粉は美しいアート作品に

使用済みコーヒー粉は美しいアート作品に

これまで、コーヒーを淹れた後に残るコーヒー粉は廃棄されてきました。しかし最近では資源として再利用する取り組みが広がっており、同社においても2024年より使用済みコーヒー粉をブラッサムアート作家へ提供し、資源循環の一助としています。

ブラッサムアートは手染めした紙を一枚一枚丁寧にカットし、花を形づくるアート作品。完成した作品は生花のような繊細さを持ち、結婚式のブーケやウェルカムボードなどにも取り入れられています。同社が提供したコーヒー粉は、枝部分などに用いる和紙に練り込まれ、新たな表現へと生まれ変わっています。

店内には季節ごとのブラッサムアートが飾られ、畳の空間に彩りを添えています。鎌倉で活動する作家との協働は地域資源を活かした取り組みであると同時に、文化や芸術を支える活動にもつながっています。

そのほかにも使用済みコーヒー粉を敷地内にある山の堆肥として活用しており、今後も事業の中で生まれる資源と向き合いながら、新たな活用方法を模索したいと考えています。

本来廃棄される「欠点豆」をどう生かすか

本来廃棄される「欠点豆」をどう生かすか

今井氏がコーヒー業界に携わるなかで課題のひとつとして感じていたのが、選別工程で生じる「欠点豆」の存在です。欠点豆とは、形や大きさ、状態が規格に合わない豆のこと。一般的には品質を均一に保つため、選別の段階で取り除かれ廃棄されます。

多い時には仕入れた豆の2~3割を欠点豆として除外しなければならないこともあり、品質基準を守るためとはいえ、使用できる豆が大幅に減少してしまう現実があります。

同社が扱うのは国際的な評価基準で高いスコアを獲得したスペシャリティコーヒーです。世界の流通量のうちわずか5%程度ともいわれる希少なコーヒーであり、高品質である一方、生産量が限られ価格も高いという特性があります。

だからこそ、事業と資源の両面から、取り除かれる豆をどう扱うかは大切な視点だと考えています。欠点豆は味わいに影響を及ぼす可能性はあるものの、抽出方法を工夫することで美味しく活かせる余地があると今井氏は考えています。

このような背景から同社の運営するオンラインショップでは欠点豆もあえて含めて出荷しています。開設当初は同業者からの購入を想定しており、豆の特性を理解した専門家だからこそ、資源を無駄にしない形で活用してほしいと考えたためです。

品質を守ることと資源を無駄にしないこと。その両方に目を向けながら事業を展開しています。

生産地に目を向け業界の未来を考える

さらに今井氏は自店舗での廃棄を減らすだけではなく、生産地における環境課題にも目を向けています。とある農園を訪れた際、環境への影響が懸念される工程があることを知ったといいます。

コーヒーは完熟した赤い実を収穫したのち、さまざまな精製方法で果肉を除去しますが、ある精製方法では果肉を除去した豆を水に浸して発酵させるという手法です。発酵に使用された水は酸性に傾き、この処理水を適切に管理せずに排出すると土壌の酸性化を招き、将来的にはコーヒー豆の収穫量に影響を及ぼす可能性があると言われています。

こうした課題は、現地では十分に意識されていない場合もあるのです。

将来にわたり持続可能なコーヒー生産を続けていくためには、生産工程全体における環境への配慮が不可欠です。今井氏は引き続き業界関係者と意見交換しながら、コーヒーの未来につながる選択を模索していきたいと考えています。

今後は多店舗展開やオンライン事業の強化に力を入れていく同社。とはいえ、規模を追うのではなく、産地や地域、業界関係者とのつながりを大切にし、一杯のコーヒーの背景にある環境や人にも目を向け続けること。その積み重ねが、持続可能なかたちでの成長につながるのではないでしょうか。

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株式会社龍華は、神奈川県鎌倉市・円応寺境内でコーヒー焙煎所兼カフェ「龍華珈琲」を営む企業です。歴史ある寺院内でコーヒーを焙煎・提供するほか、オンラインストアでコーヒー豆の販売も。また、身近な資源を生かす取り組みとして、地元アーティストへの使用済みコーヒー粉提供や、廃棄されがちな欠点豆の活用をしています。