サーキュラーコットンペーパー – 環境汚染の削減への取り組み
サーキュラーコットンペーパーとは
サーキュラーコットンペーパーは、新生紙パルプ商事が開発した混抄紙です。
紙は主に木材から生成されるパルプを主原料としていますが、パルプ以外の素材を原料に混ぜても作ることができる包容力を有します。
この特性を活かし、多様な素材を原料に混ぜて作った紙が混抄紙です。
混抄紙の代表例は茶殻やあずきの皮などの産業廃棄物ですが、そのほとんどは配合率が5~10%ほどです。
しかしサーキュラーコットンペーパーは、これまで廃棄されていたコットンを回収し、配合率を50%まで高めてバージンパルプ(木材から作られる新しいパルプ)と混ぜています。
少しでも多くの繊維ごみが燃やされないために、より高配合になるよう開発が進められた結果、バージンパルプ100%の紙と比較して、製造時の二酸化炭素排出量43.1%削減を実現しました。
サーキュラーコットンペーパー開発の背景
開発の背景には、アパレル業界の現状があります。
アパレル産業は、製造から消費に至る過程で大量の生産・消費・廃棄を必要とするため、環境負荷の高い産業として、国連貿易開発会議(UNCTAD)から石油産業に次ぐ世界2位の環境汚染産業と指摘されており、業界全体で環境汚染への対策が課題となっています。
日本国内においても、衣服を製造する様々な工程でCO2の排出、水の大量消費、端材ゴミの排出等、多くの環境負荷が発生しています。
また、ごみとして排出される衣服の総量は年間47万tにものぼり、その95%は焼却・埋め立て処分されています。
それに対して紙は資源として活用する古紙の回収率が79.5%、利用率が66.3%と世界トップクラスの水準にあります。
この紙のリサイクルの仕組みに繊維ごみを取り込むことで焼却処分されている繊維ごみを減らし、二酸化炭素排出量を削減することを目的に、新生紙パルプ商事は開発の取り組みを始めました。
サーキュラーコットンペーパーの特徴
この紙は回収コットンが50%配合されていることにより、空気を多く含んだ紙に仕上がっています。
その柔らかな手触りとナチュラルな風合いが特徴です。
水への環境負荷も配慮し、生産工程でパルプや繊維の漂白や洗浄などを行っていません。
そのため製造ロットによる色・風合いの差や表面に黒いチリが残ってしまうこともありますが、それもひとつの「味わい」となっています。
サーキュラーコットンペーパーの製造方法
この紙は、不織布の製造工程で排出される落ち綿やベッドリネンなどの布・残糸・衣類の生産工程から排出される裁断落ちといわれる端切れなど、廃棄されていたコットンを回収して原料にしています。
布や端切れなどは5㎝角程度に粗粉砕してから2mmまで粉砕し、パウダー状にしたのちに木材パルプと混ぜます。
その後は一般的な紙づくりとほぼ同じ工程で製造されています。
サーキュラーコットンペーパーの新たな取り組み
混抄紙は、一企業から排出された廃棄物で紙をつくり、またその企業が使用するいわゆる「クローズドリサイクル」で取り組むことが一般的です。
それに対してサーキュラーコットンペーパーは新生紙パルプ商事のオリジナル商品として生産し、多くの方々に使っていただくことを目的に在庫販売しています。
アパレル業界にとどまらず、この紙を活用することの意義に共感してくれる百貨店や食品メーカー、文具メーカーなどの様々な企業や個人の方々に販売されており、名刺やポストカード、パンフレット、カレンダー、手提げ袋、パッケージなど、その用途は多岐に渡ります。
オリジナルサーキュラーコットンペーパー
新生紙パルプ商事では、一般在庫として販売している製品は白や生成りのコットンだけを回収して生産していますが、企業とコラボして色物や合繊・化繊を含めた様々な素材の繊維を混ぜたクローズドリサイクルサーキュラーコットンペーパーも製造しています。
これは、消費者から回収したハンカチを混ぜたハンカチペーパーや、生地の見本帳を生地がついたまま台紙ごと粉砕して、もう一度生地の見本帳としてリサイクルする取り組みです。
印刷やデザインに支障がないように配合率は30%にしていますが、それぞれに風合いがあって好評を得ています。
リサイクル見本帳台紙の回収・リサイクルスキームについては、繊維商社やアパレルメーカーなどの企業へ協業を呼びかけ、複数の企業でひとつのオリジナルの紙を使用するという珍しい取り組みとして活動の輪を広げています。
繊維混抄紙の今後の取り組み
現在、一般在庫用製品の原料として回収している繊維廃棄物は、白や生成りのコットンに限定しています。
紙の需要は圧倒的に白い紙が多く、またコットンなどの天然繊維は古くから紙の原料として使用されていた素材で木材パルプとの親和性が高いからです。
逆にポリエステルなどの合繊・化繊は親水性がなく、紙づくりには相性が悪い素材です。
しかしながら、衣類の素材の比率は天然繊維3に対して合繊・化繊7の割合で、しかも天然繊維100%で作られている衣類は10%以下といわれ、また色を白もしくは生成りに限定するとさらに比率が下がります。
消費者の多様なニーズに応えるためにファッション性や機能性が要求され、今後ますます混紡繊維(天然繊維と化学繊維の混合品)が増加することが見込まれています。
これらの繊維廃棄物をどのように紙に混ぜ、どのように古紙として回収して再び紙の原料として再利用するか。
あらゆる繊維ごみを紙に混ぜて循環させていくことを最終ゴールとし、新生紙パルプ商事は研究・開発に取り組んでいます。