なぜレジ袋は有料化された?法律面や環境面から、メリットと課題を解説

なぜレジ袋は有料化された?法律面や環境面から、メリットと課題を解説
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プラスチック製レジ袋は2020年7月1日から有料化が全国で義務化されました。この義務化により、近年ではエコバックを利用する習慣がついた方も増えています。

しかし、そもそもなぜレジ袋が有料化されたのかご存知でしょうか

この記事では、レジ袋が有料化された背景について詳しく解説します。レジ袋有料化のメリットや課題についても掘り下げていきますので、ぜひ最後までお読みください。

レジ袋が有料化された背景

レジ袋が有料化された背景

レジ袋の有料化が導入された背景には、プラスチックごみが引き起こす深刻な環境問題があります。

プラスチックごみは海に流出したり、不適切に廃棄されたりすることで、海洋汚染を招き、海の生態系に深刻な影響を及ぼしています

これらの問題を解決するためには、各国が協力し具体的な対策を行っていくことが必要不可欠です。2018年には主要国首脳会議(G7)で「海洋プラスチック憲章」が採択され、プラスチックゴミによる海洋汚染問題への各国の対策が促されました。

さらに、2019年にはG20大阪サミットで2050年までに追加的汚染をゼロにするための目標「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有され、プラスチックごみによる海洋汚染問題への対策が世界中で進められています。

こうした国際的な流れを受けて、日本でもプラスチック製レジ袋の有料化が導入されています。

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プラスチックごみによる海洋汚染や生態系への影響

プラスチックごみは、海洋汚染や生態系に深刻な影響を及ぼしています。

海洋ごみの中で特に多いのがプラスチックごみであり、毎年約800万トンが新たに海へ流出していると言われています。そのため、大量のプラスチックごみが、海洋環境を汚染し続けているのです。

また、大量のプラスチックごみが海に流出することで、約700種の生物がごみを誤って摂取し、死傷する被害も報告されています。さらに、プラスチックが波や砂、紫外線の影響で細かく砕かれ、自然に分解されにくいマイクロプラスチックへと変化することも深刻な問題です。

マイクロプラスチックには有害物質が含まれていますが、プランクトンなどの小さな生物に取り込まれた後、食物連鎖を通じて魚類へと蓄積されます。その結果、人間がマイクロプラスチックを含んだ魚介類を摂取してしまうリスクも生じ、人間を含む生態系全体への影響が懸念されています。

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海外の取り組みとの配慮

調査会社スタティスタの分析によると、アフリカや欧州などを中心に、日本も含む91カ国がプラスチック製レジ袋の全面禁止、一部禁止、袋の有料制を取り入れています。しかし、プラスチック製袋を全面禁止している国はまだ少数です。

そんななか、全面禁止の動きが特に進んでいるのはアフリカ諸国です。全面禁止が進んでいる要因として、プラスチック廃棄物の処理が十分でない課題や、プラスチック産業の政治的影響力の弱さが挙げられます。

一方で、欧州やアメリカの多くの地域では、有料化政策を導入して使用量を抑える取り組みが一般的です。ただし、欧州のフランス、イタリア、ドイツでは、特定の薄型プラスチック袋が禁止されています。アメリカでは州ごとに規制が異なるものの、2026年にはカリフォルニア州で2026年からプラスチック製レジ袋が全面禁止となる予定です。

プラスチック製レジ袋が全面禁止される動きは、今後さらに多くの国や地域に広がると予想されています。

日本国内での取り組み

日本では、2020年7月1日からプラスチック製レジ袋の有料化が全国で義務化されています。

また、日本では2022年4月から「プラスチック資源循環促進法」が施行されました。この法律は、プラスチックを規制するのではなく、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の構築を目指す法律です。

なお、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の構築を目指すために「3R+Renewable」を基本原則としています。

「3R+Renewable」

Reduce(リデュース):製品に使用する資源を減らす・廃棄物の発生を削減する

Reuse(リユース):使用済み製品を廃棄せずに、繰り返し使用する

Recycle(リサイクル):廃棄物を原材料やエネルギー源として再利用する

Renewable(リニューアブル):製品に使用する資源を再生可能な資源への代替する

現状の日本では、プラスチック製レジ袋は有料化されるにとどまっています。しかし、エコなプラスチック製品の設計や使用量の削減、資源としての回収を進めることで、循環型社会への移行を目指しています。

国内外のプラスチック廃棄量

国内外のプラスチック廃棄量

プラスチックの廃棄は世界的に深刻な問題となっていますが、実際にどのくらい廃棄されているのか疑問に思う方もいるでしょう。

ここでは、国内外のプラスチック廃棄量について紹介します。

国内の廃棄量

日本は、世界的にもプラスチックの廃棄量が多い国のひとつです。環境省によると、日本の令和5年度の廃プラスチック類年間排出量は約7,105千トンに達しました。

さらに、2018年に発表された国連環境計画のデータでは、日本の1人あたりプラスチック容器包装廃棄量はアメリカに次いで世界第2位とされています。

海外の廃棄量

オーストラリアのMinderoo Foundationによると、2019年に世界で廃棄された使い捨てプラスチックは約1億3,000万トンに達しました。国別では、中国とアメリカが全体の約3分の1を占め、次いでインド、日本、イギリスが上位に位置しています。

また、1950年以降に生産されたプラスチックは83億トンを超え、そのうち約63億トンが廃棄されています。

現状のペースでプラスチック製品を生産していくと、2050年には250億トンの廃棄物が発生し、120億トン以上が埋立や自然投棄されるとの予測もあり、早急な対策が必要です。

有料化の対象にならないレジ袋

有料化の対象にならないレジ袋

日本では、すべてのレジ袋が有料化されているわけではありません。

有料化の対象となるのは、購入した商品を持ち運ぶためのプラスチック製で持ち手があり、厚さが50マイクロメートル未満の薄手の袋です。

一方で、紙製や布製のレジ袋や持ち手のないプラスチック製袋は有料化の対象外です。また、持ち手のあるプラスチック製袋でも、環境に配慮された特定のプラスチック袋は有料化の対象外となっています。

有料化対象外の持ち手付きプラスチック製袋は、以下のとおりです。

  • 繰り返し使える「厚さが50マイクロメートル以上の袋」
  • 微生物によって海洋で分解される「海洋生分解性プラスチックの配合率100%の袋」
  • 地球環境にやさしい原料の「バイオマスプラスチックが 25%以上配合された袋」

日本では、環境性能が認められた、環境に優しい素材へのレジ袋に切り替えが進められています。

レジ袋の有料化には結局、意味があるとは言い難い

レジ袋の有料化には結局、意味があるとは言い難い

レジ袋の有料化は深刻な環境問題を背景に導入されました。しかし、環境改善としての効果に疑問を投げかける意見やデメリットも指摘されています。

まず、廃棄プラスチック量全体ではレジ袋が占める割合は少なく、プラスチックごみ削減への効果としては意味がないとの意見と調査があります。

また、プラスチック製レジ袋を使用しないことが、かえって環境に負荷をもたらしている可能性もあるのです。

レジ袋が不要という人が大幅に増加

レジ袋の有料化に伴い、実際にレジ袋を不要とし、代替としてエコバッグを使用する人が大幅に増加しました。

しかし、プラスチック製レジ袋を使用しないことは、環境へのメリットばかりではありません。例えば、使用されるエコバッグの多くはプラスチック由来であるため、繰り返し多くの回数を使用しないと、かえって環境への負荷が大きくなる場合があります。

また、紙袋や布袋を利用する場合も、複数回使用しなければ効果がなく、製造過程では大気や水質を汚染する物質が排出されるため、環境に優しいとはいえません。

プラスチック製レジ袋を使わないことが、必ずしも環境問題に貢献しているとは限らないのです。

消費者の意識に変化はあった

レジ袋の有料化は、環境への影響が大きいというよりも、人々の環境意識を高める役割を果たしていると考えられています。

2020年11月に実施された環境省の意識調査によれば、2020年7月1日のレジ袋有料化開始後、買い物でレジ袋を使わなかった人の割合は71.9%に達していることがわかっています。このデータは、レジ袋の有料化が消費者の意識に一定の影響を与えていることを示しているでしょう。

一方、2021年の株式会社アイスタットの調査では、レジ袋有料化後にポリ袋を購入するようになった人が全体の3割にのぼることが明らかになりました。プラスチック削減を目的とした取り組みが、全ての人に十分な意識変化を促しているわけではない現実も浮き彫りになっています。

レジ袋の代金は環境保護などに充てられている

プラスチックレジ袋の代金の使い道は、国が具体的に決めるわけでなく、事業者に委ねられています。そのため、収益は店舗の利益として計上されることもありますが、環境保全活動や社会貢献活動に企てられるケースも多いです。

例えば、イオンやセブン&アイグループなどの大手企業は、環境保護活動にレジ袋の収益金を寄付しています。イオンは約1億3,713万円を自治体や団体に寄付し、環境保全活動に役立てられています。

セブン&アイグループでも約5億6,500万円の収益を環境負荷低減のための取り組みに使用し、一部を寄付したとの報告がありました。

まとめ

まとめ

レジ袋の有料化は、深刻な環境問題に対する世界的な取り組みの一環として日本でも導入されました。しかし、レジ袋の削減だけで環境問題が解決されるわけではありません。重要なのは、この取り組みを通じて一人ひとりの環境意識を高めることです。

持続可能な社会を実現するには、日常生活でプラスチック削減を意識して行動していくことが必要不可欠です。世界各国の動向にも注目しながら、一人ひとりができる取り組みを継続していきましょう。

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