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「サステナブル」や「サステナビリティ」という言葉が多くのメディアで取り上げられ、持続可能な社会の実現が今後の世界の大きな課題となっていることをご存じの方は多いのではないでしょうか。
持続可能な社会の実現ため、様々なシステムや新素材などが開発されていますが、新しいものだけではなく、過去からサステナビリティを取り入れることもできます。
今回の記事では、物を直すことで長く使っていた日本の伝統文化とSDGsの関係を見ていきましょう。
SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。地球上の誰一人も取り残さず、よりよい世界を目指すために定められた国際的な目標です。
2015年9月の国連サミットで採択され、2030年までの達成を目指し、世界中であらゆる取り組みが行われています。SDGsには「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「つくる責任 つかう責任」「気候変動に具体的な対策を」など、17の目標が掲げられています。
一見すると国や企業が取り組めばいい大きなテーマのように感じられますが、食べ物を残さない、物を長く使う、無駄な消費を減らすといった日々の行動もSDGs、つまりは資源の消費を抑えて未来へつなぐ社会をつくるきっかけにつながります。
つまりSDGsは、遠い世界の話ではなく、私たちの暮らしの中にもある考え方です。日本人が昔から大切にしてきた「もったいない」や「物を大切に使う」という価値観とも深く関係しています。SDGsについて、詳しくは下記の記事で解説しているため、併せてご覧ください。

SDGsは国際的な目標として知られていますが、その考え方は日本にとって決して新しいものではありません。日本には昔から、物を大切にする心や、人と社会とのつながりを重んじる価値観がありました。
その代表的な考え方として、「もったいない」と「三方よし」があります。以下で詳しく解説します。
「もったいない」は、食べ物を残したときや、まだ使える物を捨てようとしたときなどに、日本で昔から使われてきた言葉です。
この言葉を世界に広めるきっかけをつくったのが、ケニアの環境活動家であるワンガリ・マータイさんです。マータイさんは来日した際、「もったいない」という言葉に感銘を受け、Reduce、Reuse、Recycleの3Rに加えて、地球資源へのRespectの気持ちも含まれていると考えました。
その後、国連本部でも「MOTTAINAI」を広めようと呼びかけ、日本の言葉が環境を守る国際的な合言葉として注目されました。「もったいない」は単なる節約ではなく、物や自然を大切にする心を表す言葉です。SDGsの「つくる責任 つかう責任」にもつながる日本らしい考え方といえるでしょう。
「三方よし」とは、近江商人の考え方として知られる「売り手よし、買い手よし、世間よし」という商売の精神です。商売をする人だけが得をするのではなく、買う人にとってもよく、さらに社会にとってもよい状態を目指す考え方です。
この考え方は、現代のSDGsにも通じています。持続可能な成長を考えるうえでも、売り手・買い手・社会のすべてに利益がある「三方よし」の考え方は、現代にも通じる理念として注目されています。
つまり「三方よし」は、利益だけを追い求めるのではなく、人や社会との関係を大切にしながら事業を続ける考え方です。これは、企業が本業を通じて社会課題の解決に取り組むSDGsの姿勢とも重なります。
日本の商いには、昔から「自分だけがよければいい」という考えではなく、周りの人や社会全体と共に豊かになるという価値観が根づいていたのです。
| 文化・考え方 | 具体例 | 対応するSDGs目標 |
| ①自然と共に生きる「里山」の知恵 | 里山・鎮守の森 | 目標15:陸の豊かさを守ろう |
| ②食を無駄にしない「一汁三菜」と発酵文化 | 糠漬け・味噌・もったいない精神 | 目標12:つくる責任つかう責任 |
| ③水を大切にする「禊」と水利用の知恵 | 棚田・用水路・禊の文化 | 目標6:安全な水とトイレを世界中に |
| ④職人の「一生もの」という価値観 | 修繕文化・金継ぎ・江戸のリサイクル | 目標12・目標11 |
| ⑤共同体で支え合う「結(ゆい)」の精神 | 結・講・寄合 | 目標1・目標10:不平等をなくそう |
| ⑥女性・子ども・高齢者が輝く祭りと芸能 | 祭り・伝統芸能の継承 | 目標5:ジェンダー平等/目標4:質の高い教育 |
| ⑦森と生きる林業・木の文化 | 木造建築・杉・ヒノキの持続的活用 | 目標13:気候変動に具体的な対策を |
日本の伝統文化には、自然との向き合い方や食べ物を大切にする工夫、地域で支え合う仕組みなど、現代のSDGsにも通じる知恵が多く残されています。
もちろん、すべての伝統文化が直接SDGsのために生まれたわけではありません。しかし、その中には、持続可能な暮らしを考えるうえで参考になる価値観や仕組みがあります。ここでは、日本の伝統文化とSDGsの接点を7つの視点から見ていきましょう。
里山は、農地やため池、樹林地、草原などが組み合わさった、人の暮らしに近い自然環境です。里地里山は長い歴史の中で人の働きかけによって形成され、食料や木材の供給、生物のすみか、文化の伝承など多様な役割を担ってきました。
大切なのは、自然をただ放置するのではなく、草刈りや間伐など適度な管理によって生物多様性が守られてきた点です。これはSDGsの「陸の豊かさも守ろう」にもつながります。里山の知恵は、自然と人が共に豊かになるための現代的なヒントになります。
和食の基本とされる「一汁三菜」は、ご飯と汁物に主菜・副菜を組み合わせる食事の形で、栄養バランスのよい食生活につながるとされています。さらに、日本では味噌や醤油などの発酵調味料も発達してきました。発酵は食材のうま味を引き出すだけでなく、塩の力で腐敗を防ぐ保存の知恵とも関わっています。
こうした食文化は、食材を無駄にせず、おいしく長く活用する工夫として見ることができます。食品ロス削減や健康的な食生活を見直すきっかけになります。
日本では古くから、水は生活に欠かせない資源であると同時に、心身を清めるものとしても大切にされてきました。神社で参拝前に手や口をすすぐ手水も、禊に由来する作法とされています。
また、農業用水は田畑を潤すだけでなく、使われた後に河川や地下水へ戻り、下流で再び利用されるなど、水循環と結びついてきました。 こうした水との向き合い方には、限りある水を地域で守りながら活用する知恵が見られます。現代の水資源管理を考えるうえでも、参考になる視点です。
日本の伝統工芸には、気に入ったものを修理しながら長く使い、親から子、子から孫へ受け継ぐ文化がありました。伝統工芸品の一つである漆器は、塗り直しによって新しく生まれ変わり、陶磁器は金継ぎで補修できるなど、職人の技術があるからこそ使い続けられます。
この価値観は、大量に買ってすぐに捨てる暮らしを見直すきっかけになります。必ずしもすべての物を一生使えるわけではありませんが、「直して使う」「長く愛用する」という姿勢は、資源を大切にする現代のものづくりにも活かせる考え方です。
「結(ゆい)」とは、田植えや稲刈り、家の建設や屋根の葺き替えなど、人手が必要な作業を地域で助け合う共同労働の仕組みです。白川村では、合掌造りの維持にも「結」が大きな役割を果たしてきたとされています。
この精神は、単なる昔の助け合いではなく、地域の暮らしや文化を維持するための知恵でもあります。現代でも、災害時の支援や地域活動など、人と人とのつながりが必要な場面は多くあります。「結」は、持続可能な地域づくりを考えるうえで参考になる考え方です。
祭りや伝統芸能は、地域の人々が世代を超えて役割を持てる場でもあります。たとえば三浦市の「チャッキラコ」は、大人の女性が唄い、5歳ほどから12歳までの少女が踊る民俗芸能として受け継がれてきました。
また、前橋市の富田祇園祭では「子どもから高齢者まで」主体的に関われるよう役割を細分化していることや、会津彼岸獅子で小学校への伝承指導が行われています。 こうした取り組みは、教育や地域参加の機会を広げる点で、「質の高い教育」や「ジェンダー平等」とも重なる部分があります。
日本では、住宅や寺社建築、家具などに木を活用する文化が受け継がれてきました。林野庁によると、木材利用は炭素を長く貯蔵することに加え、鉄やコンクリートなどに比べて製造・加工時のエネルギー消費が少なく、CO₂排出削減にもつながるとされています。
また、木材の利用は「伐って、使って、植えて、育てる」森林資源の循環利用として捉えられています。 木を使うことは、必ずしも森を減らすことではありません。適切な森林管理と組み合わせることで、地域経済や脱炭素にも役立つ可能性があります。森と共に生きてきた木の文化は、現代の建築や暮らしにも活かせる知恵に繋がっています。

日本には、壊れたものや古くなったものをすぐに捨てず、直したり、別の形に作り替えたりして使い続ける文化があります。
それは単なる節約ではなく、ものに新しい価値を与える考え方でもあります。ここでは、現代のサステナブルな暮らしにもつながる日本の知恵を見ていきましょう。
| 伝統の知恵 | アップサイクル的要素 |
| 金継ぎ(kintsugi) | 割れた陶器を金で修復→傷が”景色”になり価値が上がる。世界で最も有名な日本のアップサイクル |
| boro(ぼろ) | 江戸〜明治の農民が布切れを何度も継ぎ当て→現代ではデニムブランドが参照するファッション文化に |
| 風呂敷の転用文化 | 包む・運ぶ・飾る・着るなど一枚の布が用途を変えながら使い続けられる |
| 古材・古民家再生 | 解体した古民家の梁や柱を新しい建築やインテリアに転用する動き |
| 端切れ文化(残布活用) | 着物の端切れ→小物・パッチワーク→現代のハギレブランドへ |
金継ぎは、壊れた器を金や銀、漆などの材料を使って修復する技術です。割れた部分を金や漆でつなぐことで、美しい継ぎ目を生み出します。金継ぎされた器は新たな価値と個性を持っているので、自分だけの器として愛着も増します。最近では体験ワークショップや、自宅で始められるキットもあるので、お気に入りの器が割れたら自分で直してみてはいかがでしょう。
boro(ぼろ)は、古い布や衣服を継ぎはぎしながら使い続ける日本の衣文化です。神戸ファッション美術館の展示では、限られた端切れをつなぎ、重ねて作られた衣服や布類が、世代を越えて大切に使われてきたことが紹介されています。近年では「BORO」として海外でも知られ、現代ファッションの分野でも注目されています。
もともとは物が十分にない時代の生活の知恵でしたが、現在では布を捨てずに活かすアップサイクル的な価値として見直されています。古さや補修の跡を魅力に変える点で、現代の消費のあり方を考えるヒントになる文化です。
風呂敷は、物を包んで運ぶための一枚の布ですが、包む物の大きさや形に合わせて何度も使える点が特徴です。包装紙やレジ袋とは違い、使ったあとも折りたたんで持ち運べるため、暮らしの中で繰り返し活用できます。
また、風呂敷は買い物袋、贈り物の包装、収納、インテリアなど、用途を変えながら使える柔軟さも魅力です。一枚の布を工夫して使い続ける風呂敷文化は、使い捨てを見直し、身近なところからごみを減らす行動に繋がります。
古材とは、古民家の解体や改修の際に取り出された、まだ使える木材のことです。梁や柱などの古材は、品質や安全性を確認したうえで、住宅や家具、インテリアなどに再利用できます。古材を廃棄せずに活かすことは、ごみの削減や温室効果ガスの排出抑制にもつながります。
また、古民家そのものを地域の施設や交流拠点として活用する動きもあります。古い建物をただ残すだけでなく、現代の暮らしや地域づくりに合わせて再生することで、歴史や景観を未来へつなぐ選択肢になるでしょう。
端切れや古布を活かす文化の一つに、青森県の伝統工芸である南部裂織があります。南部裂織は、江戸時代に着古した着物や布を再生する技法として生まれた織物です。綿が貴重だった寒冷地で、布を細く裂いて横糸にし、こたつ掛けや帯などに作り替えていました。
現在でも、思い出の浴衣や着物を使った体験やオーダーメイドが行われています。小さな布や古い布にも新しい役割を与える考え方は、捨てる前に活かす工夫として、現代のアップサイクルにも通じるでしょう。

SDGsの基本的な考え方や、日本文化とのかかわり、伝統文化の中にある持続可能な暮らしの知恵について紹介してきました。
SDGsというと難しく感じるかもしれませんが、「もったいない」と思う心や、ものを長く使う工夫、自然や地域とのつながりを大切にする姿勢は、日本人が昔から大切にしてきた価値観でもあります。
日々の生活の中でも、食べ物を無駄にしない、壊れたものを直して使う、風呂敷や古布を活用する、地域の行事に関心を持つなど、できることはたくさんあります。まずは身近なものを大切にすることから、サステナブルな暮らしを始めてみてはいかがでしょうか。
福岡在住。雑誌編集、ECサイト運営を経て現在はライターとして活動。地球温暖化やゴミ問題に関するトピックに興味あり。得意分野は旅行、本、サステナブル。プラスチックやゴミを減らす生活をゆるく実験・実践中。
