バックキャスティングとフォアキャスティング|ビジネスに活用できる思考や未来像の作り方を解説

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現在、企業などでも導入されているバックキャスティング思考。初めてこの言葉に触れた人もいるのではないでしょうか?
本記事ではバックキャスティング、そしてフォアキャスティングという2つの考え方について解説していきます。
理想の未来を叶えるための思考方法について、一緒に学んでいきましょう。
バックキャスティングとは何か?
バックキャスティングとは、先に実現したい未来を掲げ、その次に目標達成するためには「今、何をするべきか?」と逆算して考える思考法のことです。従来の予測型の計画手法とは異なり、望ましい未来の姿から現在を振り返ることで、より革新的で効果的な解決策を見出すことができます。
例えば、「5年後に売上高100億円の企業になる」という目標を立てた場合、まずその時点でどのような状態であるべきかを具体的に描き出します。
その上で「4年後までに必要な売上は?」「3年後までに開発すべき商品は?」「2年後までに構築すべき体制は?」「1年後までに着手すべき施策は?」というように、段階的に現在にさかのぼって必要なアクションを特定していきます。
このアプローチの特徴は、単なる現状の延長線上での改善ではなく、あるべき未来を起点に発想することで、従来の制約にとらわれない創造的な解決策を導き出せる点にあります。
特に環境問題や社会課題など、現状の延長では解決が難しい複雑な問題に対して効果を発揮し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた計画立案などでも広く活用されています。
ただし、実践においては明確で具体的な目標設定が重要で、単なる理想論に終わらないよう、実現可能性と目標の妥当性を十分に検討する必要があります。また、社会情勢や技術革新など、外部環境の変化に応じて柔軟に計画を見直していくことも大切です。

バックキャスティングが必要となる背景
バックキャスティングは、長期的な目標達成に向いている思考法であり、現状から大きく変化した未来を創りたい場合に効果的です。
現代は、ビジネスにおける環境が目まぐるしく変わっており、将来の見通しを立てることが困難になっています。
ビジネスの側面だけに留まらず、現在日本では環境問題や少子高齢化など長いスパンで解決しなければならない課題に直面しています。
そのような状況においては、理想の未来像を設定し、そこから遡ってプランを立てていくバックキャスティングは、非常に役立つ思考法です。まさに、バックキャスティングは現代に必要とされている考え方といえるでしょう。
バックキャスティングとフォアキャスティングの違い
では、バックキャスティングとフォアキャスティングの違いについて見ていきましょう。
先述の通り、バックキャスティングは「まず達成したい目標を定め、その後に目的を果たすための行動計画を遡って決める思考法」のことです。
反対に、フォアキャスティングとは「過去のデータや現状をもとにして、目標達成のために現時点でできることから着実に進めていくという考え方」のことです。
バックキャスティングとは違い、不確実要素の低い短期的な目標達成にふさわしい思考法です。目的に合わせて、バックキャスティングとフォアキャスティングを使い分けできるとよいでしょう。
バックキャスティングの4つのメリット
バックキャスティングについて、ここでは4つのメリットを挙げてみましょう。
目標達成への明確な道筋を描ける
あるべき未来のビジョンを先に描くことで、そのために何をすればよいかということが明確化されます。
目標達成に向けて、ブレのない一貫した行動計画を立てられることがメリットといえるでしょう。
革新的なアイデアを生み出しやすい
バックキャスティングは、現在置かれている状況に左右されることなく施策を考えることができるため、枠にとらわれないユニークな発想ができるのがポイントです。
その結果、革新的なアイデアが生まれやすくなります。
課題の優先順位を明確にできる
目標達成のために何をすべきかが決まったら、いつまでに行うかなど具体的なプランを立てます。
そうすることで、課題の優先順位も明らかになり、計画のなかでも緊急性や重要性の高いタスクから取り組むことができるのです。
持続可能性への貢献
近年、身近になっているSDGsもバックキャスティングの思考が採用されています。
SDGsで掲げられている17の目標は、現状では実現が難しいものも含まれており、目標達成のためには世界規模で大きな改革が必要です。
そのため、未来から逆算して今クリアしていくべき課題を見つけていくバックキャスティングの考え方は、持続可能な社会の実現に有効なのです。
バックキャスティングのデメリット
次に、バックキャスティングのデメリットについても見ていきましょう。
現実的な実行可能性の確保が難しい
バックキャスティングでは、最初に理想とする未来像を設定しますが、現状と目指すゴールに大きなギャップが生じているケースがあります。
そのため、現実的な実行可能性の確保が難しくなり、実現見込みが低くなってしまうリスクがあります。
リソースと時間の負担が大きい
バックキャスティングは、目指す未来に向け斬新な発想でプランを練ることができます。
しかし、理想を追求しすぎるがゆえに、現実的ではない計画に多くの時間やリソースを費やしてしまう可能性があります。
目標設定の困難
バックキャスティングは、何よりもまず目標を決めないことには始まりません。
理想の未来がどのようなものかを明確にする必要がありますが、そもそもどのような目標を設定すればよいのかと、最初の段階でつまづいてしまうケースもあります。
バックキャスティングの事例
では、バックキャスティングの事例として2社を見ていきましょう。
三菱電機
三菱電機株式会社では、2021年での目標達成を目指し「環境ビジョン2021」を2007年に制定しました。同社は、環境経営の重要項目として「低炭素社会の実現への貢献」を掲げ、環境計画を3年ごとにプランニングしてきました。
グローバル環境先進企業になるために、バックキャスティングの手法を用いて環境経営を進めています。
オーラライト
オーラライト社はスウェーデンの会社で、元々は電球の製造販売をしていましたが、ライティングソリューションプロバイダーへと姿を変えた企業です。
同社は、LEDの流通拡大を危惧し、バックキャスティングによる改革を始めました。
具体的には、5年で売上2倍、営業利益率2倍という大きな目標を2007年に立てたのです。
そして、高まっていく省エネ需要に応じた製品の販売や事業の拡大を図っていきました。
その結果、2014年にはヨーロッパでライティングソリューションプロバイダー企業としての地位を得ることになり、その後も成長を続けていったそうです。
まとめ
みなさんには、達成したい目標や将来なりたい姿はありますか?人生の岐路に立つとき、漠然とした不安や迷いを感じることは誰にでもあるでしょう。しかし、バックキャスティングは、思い描いた未来を手にするうえで、大いに役立つ思考法といえます。
この手法を使えば、「いつか」「なんとなく」という曖昧な目標を、具体的な行動計画へと転換することができます。
例えば、「3年後に起業したい」という目標があれば、そこから逆算して「2年後までに必要な資金を貯める」「1年後までに業界での経験を積む」「半年以内に必要な資格を取得する」といった具体的なマイルストーンを設定できます。
このように時間軸に沿って必要なステップを明確にすることで、日々の行動に確かな意味と方向性を持たせることができるのです。
ぜひ、みなさんも今日からバックキャスティング思考を実践してみてください。まずは1年後の自分を具体的にイメージすることから始めてみましょう。
そして、その未来に向かって、今週、今日、この1時間で何ができるのかを考えてみてください。小さな一歩の積み重ねが、確実にあなたの描く未来への道を切り開いていくはずです。