地球環境にやさしい自然冷媒|弱点を克服し、猛暑の中でも工場・倉庫で活用
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夏になると、毎年のように「猛暑」「酷暑」という言葉を聞くようになりました。
それとともに熱中症で救急搬送される方のニュースや、熱中症対策のニュースを見るようになります。
熱中症の対策では水分補給だけでなく、塩分などの摂取、昼間の外出・運動を控えることなど、昔に比べるとより詳細な情報が出るようになっています。
また、室内で熱中症になる方も多く、エアコンなどで室温を調整することが重要な対策となります。
猛暑の中で大活躍するエアコンですが、どのように冷たい空気が出てくるかご存知でしょうか?
エアコンが、冷たい空気を作るうえで欠かせないのが冷媒です。
室内の空気が持つ熱を冷媒が奪うことで、冷たい空気がエアコンから出ます。冷媒の熱は室外機を通して外に出されて、また室内の空気を冷やすために循環します。
冷媒の歴史は環境対策の歴史
最初に冷媒として活躍したのはフロンです。
様々な種類のフロン冷媒がエアコンや冷凍機、電気冷蔵庫に使用されてきました。
しかし、ご存知のようにフロンは現在、使用が禁止されています。
1970年代にオゾン層を破壊することが分かり、1996年に生産の中止・全面廃止が決まりました。
オゾンホールはフロンの生産が中止された現在でも8-9月ごろに発生し、11-12月ごろに消滅することを繰り返しています。
オゾンホールの最大面積は毎年計測されており、現在は横ばいが続いていますが、米航空宇宙局によると、今世紀末までにはオゾンホールは消滅すると予測されています。
(表)オゾンホール面積の年最大値(万km2)
オゾンホールが問題になってから、フロンと同じような性質を持つ別の物質の開発が進みました。それが「代替フロン」です。しかし、この代替フロンも問題が残りました。代替フロンではオゾン層の影響が軽微になりましたが、温室効果ガスとして地球の温暖化への影響が大きかったのです。一部の代替フロンにも、生産が中止になっているものがあります。
注目される自然冷媒
このような中で自然冷媒と呼ばれるものが、オゾン層にも温暖化にも優しいということで、注目されています。
代表的なのは、アンモニアや炭酸ガス、窒素、プロパンガス、ブタンガスなどです。
もちろんデメリットもあり、外気温が暑すぎると、望むほどの冷却効果が得られないというのがありました。
この酷暑のなか、そのデメリットが克服されつつあります。
株式会社ニチレイフーズ
例えば冷凍食品などで有名なニチレイフーズは、山形県天童市の工場で自然冷媒を使った冷凍機を使って、冷凍食品の製造をしています。
2030年までに全国の工場の冷凍機を、すべて自然冷媒を使ったものに切り替える計画です。
LOGI FLAG COLD 船橋Ⅰ
工場だけでなく、冷蔵・冷凍倉庫でも自然冷媒を使用した冷凍機の導入が進んでいます。
今年2月に千葉県船橋市に竣工した「LOGI FLAG COLD 船橋Ⅰ」は、延床面積約2,105坪(冷蔵:568坪、冷凍:1,371坪、事務所等:165坪)で、二酸化炭素を使った自然冷媒の冷凍機を使用。2030年のフロン規制を見据えた環境配慮型として打ち出しています。
株式会社福岡運輸ホールディングス
また、九州に本社があり、冷蔵・冷凍物流網を持つ福岡運輸ホールディングスは今年7月、自社の主要冷凍冷蔵機器のうち、今後新規導入する機器の100%を自然冷媒機にすることを目指すと発表しました。
すでに昨年4月に竣工した大阪茨木配送センターでは、「環境にやさしい冷凍冷蔵倉庫」をコンセプトにCO2冷凍機(自然冷媒)を採用しています。
そのほか、倉庫屋上全面に太陽光パネルを設置した環境に配慮した冷蔵庫にしたことで、大阪府から「おおさか環境にやさしい建築賞」を実施しています。
まとめ
このように、産業で使う大型冷蔵・冷凍機器については、少しずつ自然冷媒へと移行が進んでいます。
一方で、私たちが使うエアコンや冷蔵庫などの家電では技術的に難しく、自然冷媒を使った製品は出てきていないようです。
家電量販店などで「環境にやさしい自然冷媒使用」といったPOPが出てくるのが待ち遠しいですね。