廃自動車の窓ガラスをアップサイクル「再生」を通じて硝子の魅力を次世代へ

この取り組みを行っている企業・団体

富硝子株式会社

1948年創業。戦後の東京で、ガラスの香水瓶の輸出からスタートし、ガラス商社として輸出入のノウハウを活かし、食器やトロフィーなど幅広いガラス商品の企画・デザイン・販売を行っています。一方、老舗ならではのネットワークを活かし、日本各地のガラス工場を結んでガラス製品の新たな価値の創造にも積極的に取り組んでいます。

「小樽再生ガラス」とは?

「小樽再生ガラス」は、北海道で使用済み自動車から手作業で窓ガラスを回収し、再融解してガラス食器にしたものです。

 再生ガラスの色を活かしたシーグラスのような色味が特徴です。厚さ約2mm以下の口元は一点一点、職人が吹いてつくるハンドメイドの証。再生ガラスは不純物が混じるため無数の気泡が入り、色もサイズもひとつずつ微妙に違う味わいがあります。

 製造過程で使われる冷却水は雪解け水を使用し、パッケージにも「カカオミックス」というカカオの廃殻の入った紙を使うなど、細部にまでサスティナブルにこだわった商品となっています。

「再生ガラス」に取り組むことになったきっかけは再生されない廃車ガラス

「小樽再生ガラス」は、富硝子と北海道小樽市のガラス工場「株式会社深川硝子工芸」によるコラボ商品。

 再生ガラスの商品づくりは、2017年に北海道最大の総合リサイクル会社である株式会社マテックさんから同じく北海道にある深川硝子工芸へ相談を持ち掛けられたことからはじまりました。

 株式会社マテックさんは、物が過剰に生産され、消費され、廃棄される中で、まだ使用できるはずの資源や素材を何らかに活かしていきたいという想いから丁寧に1台1台手作業で部品等を回収し、再生資源として活用することはもちろん、各素材をプロフェッショナルの職人と組んで新たな商品に生み出しています。

 「使用済み自動車」として破棄される自動車は年間で約350万台。ただしその部品の95%以上は資源としてリサイクルされています。

しかし、多くの部品のうち窓ガラスに限っては、主に断熱材しか再利用用途がなく、その結果、細かく砕いたシュレッダーダストの状態で埋め立てられることがほとんどでした。その理由は、ガラスに求められる透明度です。窓ガラスは求められる透明度や性能が高い一方で、廃車の窓ガラスはメーカーや車種により形状も材料も微妙に異なり、融かして再生しても混じり合って品質を守ることが困難で、自動車や建築産業の中ではリサイクル先が確立できていなかったのです。

そのような状況で「工芸品としてなら、特徴を活かして窓ガラスをアップサイクルできるのでは?」と考えたマテックさんから深川硝子工芸さんに相談があり、この取り組みが始まりました

 富硝子は、当時世間ではまだ珍しかった自動車窓のリサイクルガラスについて、販路を拡大したいと深川硝子工芸さんから依頼を受け「小樽再生ガラス」に関わることになったのです。

食器からSDGsにプチ貢献

「人にも地球にも優しい世界中が目指すゴール」というSDGs。

 実は、この事業に関わるまで富硝子では「SDGs」「サスティナブル」などを詳しくは知らなかったのですが、この件を通じSDGsの掲げる理念に共感し、小樽再生ガラスというアイテムを店頭や食卓へつなげることで「地道ながら少しでもゴールに近づければ」と考え、取り組みをスタートしました。

 事が物を生み、我々の感動を繋げてくれるこの事業が成果をあげることにより、アップサイクルや職人の技を楽しむことやひとつの食器を大切に使い続けるという意識、価値観の醸成に繋がれはすばらしいことだと思っています。

「小樽再生ガラス」への反響

気泡が入る・色の個体差がある等、これまで量産品ではあまり良しとされなかった特徴がある再生ガラス。トミガラスでは動画やSNS、クラウドファンディング等でその魅力や想いを伝えていくことで、再生ガラスの認知度やイメージアップに励んでいます。その甲斐もあって「小樽再生ガラス」は、ありがたいことに多くのテレビをはじめ多くのメディアでも紹介され話題になりました。

 最近では、自動車ディーラーなど自動車関連の企業から記念品の依頼が増えています。商品そのものだけではなく、その背景やストーリーを理解し共感してくれるお客様が増えているようにも感じます。

 特に自動車業界の方にはWEBで限定発売しているリアウィンドウを使ったスモークカラーのグラスが大人気となっています。シックな雰囲気がおしゃれで男性に好まれているようです。

今後の展望、目標 ーーー硝子の魅力を次世代へ

現在、硝子業界をとりまく状況はよいとはいえません。

まずはコロナ禍で結婚式をはじめとするお祝いごとにまつわる贈答品の需要が低下するなど全体的に市場の規模は縮小傾向にあります。

またガラスの製造には1,500℃程度の高温が必要で、職人はその過酷な環境下で作業することになります。これは本当にガラスが好きでないと務まらない仕事で、なかなか若い人でこの仕事をやりたいという人も少ないのが現状です。

 その一方で、環境問題の対策のひとつとして「ガラス製品」というものが再び注目を集めています

ガラス製品は、もともとサスティナブルな存在です。古代メソポタミアやエジプトの昔から人々の生活に寄り添ってきたガラス製品は、環境問題が深刻になる以前からリユース、リサイクル、リデュースの「3R」が自然と行われてきました。

ガラスは変質しにくい素材で、原料も砂などの無機物であるため、海洋汚染等が問題になっているプラスチック製品の代替となりえる存在です。

 その中で弊社ができることとして、この「小樽再生ガラス」事業をはじめとした、硝子の魅力を次世代へと繋げて業界全体の活性化を促すことを行っていきたいと考えています。

 すでに70年を超える硝子商社としての知見をもとに、各硝子産地の工場と協力して新たな製品の企画・開発を進めています。各産地、各工場の特性をよくわかっている弊社だからこそできる貢献だと自負しています。また企画やデザイン、販売方法などの面のみならず、失われつつある技術や技法の継承や向上にも携わり、若手の雇用も生み出していくことが今後の目標です。

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1948年創業。戦後の東京で、ガラスの香水瓶の輸出からスタートし、ガラス商社として輸出入のノウハウを活かし、食器やトロフィーなど幅広いガラス商品の企画・デザイン・販売を行っています。一方、老舗ならではのネットワークを活かし、日本各地のガラス工場を結んでガラス製品の新たな価値の創造にも積極的に取り組んでいます。

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