夏休み、学童の代わりを探すあなたへ│子どもの「居場所」と「体験」を考える8つの選択肢

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もうすぐ夏休みが始まります。幼児や小学生の子どもがいる家庭にとっては、幼稚園・保育所や学校の代わりになる子どもたちの居場所探しが、少々悩ましい問題かもしれません。最近は、学校以外の子どもたちの居場所として学童が一般的になってきています。

しかし、その学童もさまざまな問題を抱えていることは、親御さんにとっては、もはや常識となっていることでしょう。

ここでは学童の現状を振り返りつつ、学童以外の子どもたちの居場所の選択肢について解説していきます。

学童が使えない夏、なぜそんな家庭が増えているの?

学童が使えない夏、なぜそんな家庭が増えているの?

ここ数年、学校以外の子どもたちの居場所として定着している学童。子どもを持つ家庭にとっては、ありがたい存在ですが、最近は学童が利用できないという問題もよく耳にします。

学童とはどのような施設?

ところで、そもそも学童とはどのような施設でしょうか。

学童とは、仕事などの事情により、保護者が自宅にいない児童を一定期間預けられる施設やサービスのこと。こども家庭庁が管轄する「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)」の一種で、「学童保育」「学童クラブ」などと呼ばれることもあります。

2000(平成12)年、全国の学童施設は10994ヵ所、登録児童数は392893人でしたが、2024(令和6)年には施設が25635ヵ所、児童数1519952人となっています。施設の運営は公営6176ヵ所、民営19455ヵ所です。(こども家庭庁調べ。2024年5月1日現在)

定員オーバーなどの問題

着実に増えている学童の施設ですが、学童を利用したい児童数はさらに増えていて、学童の施設は不足しているのが実情です。

学童をはじめとした「放課後児童健全育成事業」を利用できなかった待機児童は全体で17686人(2024年のこども家庭庁データ)となっています。

以前にも増して共働き世帯が増えていることが、待機児童増加の一因と考えられていますが、親の働き方が多様化しているのに対し、学童の施設がそのニーズに対応できていないのが根本的な原因だとされています。

学童に行きたくない子どもたちも

「学童へは行きたくない」という子どもたちも少なくないようです。

定員オーバーにより、仲の良い友達と一緒に学童へ行けなくなったケースがあるほか、学童のカリキュラム自体が好きではなかったり、「部屋がうるさすぎる」など学童の環境そのものが嫌いという例もあげられています。

中には、さまざまなトラブルを回避するための学童施設側から届いた細かなルールを目にして、行きたくない気持ちになった子どももいるとのことです。保護者の側が、学童そのものに対して考え直すこともあります。細かなルールを嫌がる子どもを無理に学童に行かせる親はいないでしょう。学童の環境、指導員との関わりなども気になるところです。

自分の子どもが楽しく過ごせる場所であることは、何よりも大切な条件なのではないでしょうか。

安心して預けられる「民間サービス」の選択肢

安心して預けられる「民間サービス」の選択肢

もちろん、子どもにとってもいい環境であり、定員などの問題がなければ学童を利用するのがいいでしょう。

しかし、さまざまな理由で夏休みに学童が利用できない場合でも、その代わりとなる選択肢はいくつかあげられます。ここでは8つの例をご紹介しましょう。

1.民間の放課後預かり・サマースクール

代表的なのは、民間のサービスです。ここ数年で、サービスの内容は多彩で充実してきています。

注目されているのはSTEAM(スティーム)教育でしょう。STEAMとはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering’(工学)、Arts(芸術・教養)、Mathematics(数学)の頭文字を取った言葉。

進化し続ける情報科学やテクノロジーに対応する理数系の教育ではありますが、Artsが入っているように創造性や問題解決能力の育成も重視されています。英語とSTEAMが一体となったプログラムは特に人気を集めているようです。

そのほかの民間サービスでも、多様なプログラムが登場していて、子どもの関心分野に合ったプログラムを選ぶこともできます。サービスの時間なども、学童より柔軟に対応ができるケースが多いようです。ただ、料金の面では公立の学童よりは高くなります。

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2.一時預かり保育(幼稚園/保育園)

幼稚園や保育園などでは、子どもの一時預かりを行っています。児童福祉法の「一時預かり事業」に基づいて各自治体が実施している制度で、民間のサービスも実施されています。

基本的に「理由にかかわらず利用できる」とされていて、仕事などのほか、病気、冠婚葬祭や美容院、ショッピングなどの際にも利用可能です。

利用料金や子どもの対象年齢などは、自治体や企業によりさまざま。「ひとり1時間につき500円」「基本4時間まで2000円」「3歳未満2000円、3歳以上1200円」「1日3000円」など細かく異なるので、事前に確認が必要です。

なお、幼稚園等でのサービスなので幼児が対象と思われがちですが、施設によっては小学6年生までという場合もあり、小学生可の施設は増えてきているようです。

3.地域のファミサポ(ファミリーサポートセンター)

ファミリーサポートセンターは、子育ての手助けをしてほしい人(利用会員)と、手助けを行いたい人(協力会員)が、地域の中で子育ての相互援助を行う組織のことです。

各自治体で実施されていて、料金は自治体ごとや時間帯などによって異なります。例えば東京都杉並区の場合、早朝(午前6時~9時)1000円/時間、通常(午前9時~午後8時)800円/時間、夜間(午後8時~10時)1000円/時間となっています(2025年5月現在)。

杉並区の場合は「おおむね10歳まで子ども」とされていますが、料金的には格安で、地域の支援が得られるので、自治体などのサイトで確認しておきましょう。

「自宅+外出型」で安心と成長を両立

自宅を中心とした居場所のバリエーションもいろいろと考えることができます。

在宅ワーク家庭なら?午前は家庭学習・午後は習い事やイベントへ

現在は、以前に比べると在宅ワークも増えてきています。両親のどちらか(もしくは、どちらも)が家にいれば、子どもたちへの目も届きます。

例えば、午前中は家で宿題などの勉強をして、午後は習い事やイベントなどに出かけるというのは理想的なスケジュールでしょう。

ただし、在宅ならではの難しさもあります。サイト上では、両親のさまざまな苦労もうかがうことができます。家庭内のストレスをためないためには、スケジュールにこだわるのではなく全体像を見ることが大切との声も。細かいことだけを気にするのではなく、子どもの自主性を育む余裕が必要とされるようです。

学習塾や習い事の「夏期集中コース」

学習塾などの「夏期集中コース」を大きな柱とするのは、夏休みの王道といえるでしょう。

少なくとも学力面については任せておくことができるので、基礎力や応力など学力が伸びていくことが期待できます。習い事の場合も同様に、子どもの集中力が養われ、大きな躍進が期待できることでしょう。

何よりも、それらの夏期コースが生活のリズムを一定にしてくれることが重要。親がうるさく言うよりも、夏休みを有意義に過ごすことができるはずです。

博物館・図書館・子ども向け体験イベント

夏休みには、さまざまな施設で子ども向け体験イベントが開催されるのは恒例となっています。大都市部などでは、予約が殺到する人気プログラムも少なくありません。

地域の図書館でも、イベントの内容は多彩になってきています。工作教室やクワガタ教室など、親子参加型のワークショップも充実していますし、映画上映、民話や怪談を聴く会などが開催される図書館もあります。

多種多彩なイベントがある中、夏休みに向けて、子どもが興味を持つイベントを一緒に探すというのも楽しいのではないでしょうか。

一歩進んだ選択:「短期サマーキャンプ」や「体験民泊」

さらに夏休みならではの体験としては、キャンプなどがあげられます。現在では、その内容もバリエーション豊か。子どもたちはさまざまな体験をして、大きく成長していきます。

サマーキャンプ:自然体験、集団生活、冒険心を育む

夏休みのキャンプは、学校主体のものから民間のツアーまで、その内容はより多彩になっています。

幼児、小学生、中学生を対象とした、子どもだけのサマーキャンプは、日帰りから数泊するものまで。海、山など行き先の選択肢も充実しています。大自然が満喫できて冒険心がくすぐられるのはもちろん、集団生活を送ることで人間関係の構築、自立心の確立など、学校生活だけでは育まれない心の成長も期待できます。

親元を離れて、知っている友達や初対面の子どもたちと一緒に過ごすサマーキャンプは、不安と期待が入り混じった不思議な体験。わずか数日だけでも、子どもを成長させてくれます。

農家民泊や地域留学プログラム

サマーキャンプと同じく、子どもたちを成長させてくれるのは民泊や地域留学でしょう。

民泊は農家や漁家などに宿泊し、地域の文化、料理などに触れることができ、人気を集めています。地元の農家や漁師の方などと話しをし、その生活を体験することができるのは、民泊ならではの醍醐味であり、魅力です。

地域留学も近年注目を集めています。山村や漁村に滞在したり、離島に滞在するプログラムなど、その内容も広がりを見せています。ある程度の期間、その地域に滞在することから、子どもの成長ぶりに目を見張る親も少なくありません。

子どもの性格・家庭の事情に合わせて選ぶためのチェックポイント

子どもの性格・家庭の事情に合わせて選ぶためのチェックリスト

8つのさまざまな選択肢を紹介してきましたが、どれを選ぶかは、当然、子どもの性格や家庭事情によって異なってきます。

子どもの性格や得意なことは?

子どもが積極的で活動的な性格であれば、学童やサマースクールなど、ほかの子どもたちと楽しめる場所に送り出しても、それほど心配はないでしょう。

得意なことを理解しておくことも大切です。習い事やイベント、博物館や図書館での子ども向けプログラムでは、ぜひ興味を持っていることに参加させたいものです。

子どもが人見知りの場合はどうでしょうか? もちろん、子どもの関心が高いようでしたら、思い切って背中を後押ししてみることもいいかもしれません。

どうしても積極的に参加することが難しいようであれば、しっかりと情報を集めてみることがおすすめです。どのような雰囲気なのか、どのような子どもたちが参加しているのかなど、先方に確認して、できる限り具体的なイメージを子どもが描けるようにしてあげましょう。

受け入れる側は、何人もの子どもたちを相手にしてきたプロですから、その人たちの意見を聞くことも大切。多様な解決策が見つかるはずです。

現実的な問題や環境も

費用面などの現実的な問題も重要です。魅力的なプログラムが組まれた内容であれば、費用が高い場合も少なくありません。施設の場所が遠いというケースもあるでしょう。

単に、「費用が高額=レベルが高い」というわけではありません。自分の子どもにとって価値があるか、という点が最も優先して考えなければならないことです。

家庭の環境によっても事情は変わります。兄弟姉妹がいる場合、年齢差や性格の違いなどもありますが、一緒の場所やプログラムに参加するのがいい場合もありますし、違う体験を選ぶという場合もあるでしょう。当然、親の働き方も関係してきます。

子どものことを中心に、それぞれの家庭の状況をチェックしていき、選択肢を考えることになりますが、公共、民間ともに子どもを取り巻く環境は日々進化しています。夏休みの過ごし方についても、最新の情報を確認するように心がけましょう。

まとめ│子どもにとって「思い出」と「安全」のどちらもあきらめない夏へ

まとめ│子どもにとって「思い出」と「安全」のどちらもあきらめない夏へ

2024年の『子ども白書』(日本子どもを守る会編著)には、子どもの居場所について特集が組まれています。

現代では、空き地は減り、公園にはさまざまな制限が設けられ、子どもが自由に過ごせる場所は減少しており、子どもの居場所は意図的につくる社会であると、そこには記されています。また居場所とは、公園や児童館だけではなく、推し活やオンラインゲーム、信頼できる人など、「物理的な場以外の多様な居場所も存在する」とあります。

つまり、子どもの数だけ、それぞれの居場所があり、居場所のあり方は非常に多様であるというわけです。

今回紹介した選択肢のサービスの内容は地域によっても、主体となる事業主によっても、実に多種多彩です。しかし、共通しているのは、子どもたちを受け入れるために、いずれも最善を尽くし、サービス内容のアップデートを心がけ、何よりも、子どもたちに楽しく過ごしてもらうよう努力しているということでしょう。

「自分の子どものためにはどれが最もいいのか?」それを選び、決断するのは、本当に難しいことです。それでも、子どもたちがかけがいのない思い出を安全につくることができる居場所は必ずあるはずなので、前向きに考えていくことが大切です。

そうすることで、子どもは自分自身の居場所を見い出し、一歩大人に近づける夏を過ごすことができるに違いありません。

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