【SDGs】製薬企業の協力体制についてご紹介します。

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SDGsに関する活動はいろいろあり、各社がSDGsの17のテーマの中からそれぞれ企画を考えて取り組んでいます。しかし、1社でやるよりも業界横断で複数社が共同で同じ取り組みを行った方が、コストを抑えてより影響力が高かったり、効率的に効果が上がったりするものがあります。

そう分かっていても、実際には実現できないのも確かです。今までライバルとしてやってきた企業同士が、本業ではないところとは言え、手を結ぶことはなかなか難しいところでもあります。

そのような中、製薬業界ではライバル企業同士が手を結ぶような活動が続いています。それぞれ面白い取り組みなので、個々に見ていきましょう。

社員、製薬業界全体での啓発を目的としたアライアンス「Pharma for PRIDE」を発足

両手の手のひらに虹色の文字のLGBTQがある

製薬企業のサノフィアストラゼネカアレクシオンファーマは昨年6月、LGBTQ+に関する合同勉強会を実施しました。事前に各社単体で勉強会を実施し、その声を持ち寄ることで、製薬業界全体での動きへと昇華させることに成功しました。

そしてその半年後に、前の3社に加えアッヴィアラガン・ジャパンの計5社によるLGBTQ+アライアンス「Pharma for PRIDE」が発足しました。参加企業の拡大、かつアライアンスの立ち上げに成功しました。同アライアンスの目的は、誰もが安心して働ける職場や業界を実現するためにLGBTQ+に対する正しい理解の促進と、社会への発信を共同で行うことです。

この発足に合わせて、5社合同の勉強会も開催され、のべ900人の社員が参加しました。LGBTQ+の方が恋愛の質問をされた事例やアウティングを耳にした時の対応の事例などを見て、どのように対応すればよいか参加者が考え、その後にLGBTQ+の方がどのように感じるかを説明しました。

なお、この分野に関する製薬企業の関心は高く、今年のレインボープライド東京2023には多くの製薬企業が参加しました。筆者がレインボープライド東京のサイトを確認した限りでは、Diamond Sponsorに1社、Platinum Sponsorに1社、Gold Sponsorに1社、Silver Sponsorに3社、Bronze Sponsorに7社、Sponsorに1社、製薬会社が連なっていました。

このような関心の高さを考えると、今回紹介した5社の活動が今後、参加企業の拡大や、製薬業界固有でLGBTQ+の課題などが浮き彫りにしてくることが期待されます。

内資製薬企業は包装分野で提携

緑色の机に錠剤の薬がまかれている様子

一方、日本に本社を置くアステラス製薬エーザイ第一三共武田薬品の4社は昨年12月に、医薬品包装分野で環境負荷低減を目指し、提携を発表しました。

医薬品の包装は、各社工夫をしているところです。例えば錠剤で見た場合、年配の方でも取り出しやすくしたり、落とした衝撃でも錠剤が壊れないようなパッケージにしたり、複数の錠剤を服用している患者さんが飲み間違えないようにするなど、各社の技術や考え方が詰まっています。

また、環境負荷の低減を考えた場合、包装材の削減や、より環境負荷の低い原料を使用するなども各社で研究しています。

今回の4社の提携は、包装材の環境負荷に特化しています。具体的には、石油由来のプラスチックに代わるバイオマス素材のPTP(Press Through Pack)シートや、包装のコンパクト化、リサイクル包材、リサイクル適性のある包材など、環境負荷低減のための包装技術に関する知見の共有を進めるものです。このような形であれば、包装技術に関する各社の情報が流出することはないので、手を結ぶことができたのでしょう。

こちらについても、他の企業にも連携を呼び掛けているということなので、今後の拡大が期待されます。

物流でも提携が進む。トラック削減でCO2削減と2024年問題に対応

製薬メーカーで製造した医薬品は、医薬品卸に運ばれ、病院や薬局に届きます。ドラッグストアで購入できる風邪薬のような一般用医薬品は、卸を通してと、メーカーから直接小売店に送られるルートもあるようです。どちらの医薬品についても取り扱いは「医薬品の適正流通(GDP:Good Distribution Practice)ガイドライン」で厳しく規定されています。

このように医薬品の物流については、扱いが分かっている企業でないと取り扱いが難しくなります。また、製薬企業に限らず、どの製品がどの程度出荷されているかというのは重要な経営情報となり、他社に知られることは厳禁です。そのため、共同物流という考え方はよく出てくるのですが、実現に向けたハードルは高くなっています。

このようななか今年1月、製薬企業の小野薬品工業田辺三菱製薬塩野義製薬と、医療流通のソリューション企業のエス・ディ・コラボが医療用医薬品の共同物流を発表しました。発表によると、GDPガイドラインに則った共同物流は製薬業界では初ということです。

この共同物流により、下記3つを実現できるということです。

  • 全ての温度帯で温度管理をした輸送を行い、品質担保の向上を図ります。
  • 輸送の積載効率を上げ、運行台数を削減することにより、ドライバー不足を軽減して安定供給を図ります。
  • 運行台数の削減によりCO2排出削減を目指します。

物流業界ではトラックドライバーの長時間労働が問題になっており、特に働き方改革関連法が2024年から適用開始となることで、ドライバーが不足すると問題となっています。これを「物流の2024年問題」と言われています。

今回の共同物流の取り組みは、トラックの使用車両を減らすことでCO2削減を図るだけでなく、2024年問題でドライバー不足を解決し、質の高い物流を維持する一石二鳥の取り組みです。1社だけでは実現できない取り組みでしょう。

まとめ

このように製薬業界では様々な分野で合従連衡の取り組みが進んでいます。

参加企業が今後増えていくのか、同じような取り組みが他業界に拡大していくのか、注目していくと面白いでしょう。

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