排出量取引とは│日本でも二酸化炭素排出量取引がスタート!その枠組を解説
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昨年末にNHKが、企業間の二酸化炭素排出量取引について日本でも2026年度からスタートさせると報じました。EU(欧州連合)では、2005年からスタートしている企業間の二酸化炭素の排出量取引が、日本でもとうとうスタートします。
NHKのニュースによると、経済産業省が開催した審議会でカーボンプライシングの導入時期などの案が示され、了承されたとのことです。
二酸化炭素の排出量取引が2026年度からスタートするだけでなく、2028年度には化石燃料を輸入している石油元売り会社や商社などに一定の負担を求める「賦課金」を導入し、2033年度からは化石燃料の利用が多い電力会社に対し有償の排出枠を割り当てて負担を求めるということです。
参考サイト:NHK
排出量取引のスタート時期と参画企業
排出量取引のスタートまで数年間の猶予がありますが、2026年度から一気にスタートするわけではありません。すでに2022年9月から実証実験がスタートし、市場を形作る準備がすでに進んでいます。
そのため、2026年度にスタートする時点で、取引に関する明確なルールや、ある程度の規模の市場ができあがっていることでしょう。実証実験に参画していない企業でも、2026年度までに排出量取引ができるように対応しておく必要があります。
実証実験の名は「グリーントランスフォーメーション(GX)リーグ」です。電力、鉄鋼、化学、石油、自動車などの企業・440社が参画しています。この参画企業の二酸化炭素排出量は国内全体の3割に相当するそうです。さらに、このGXリーグは今年4月から本格稼働します。
GXリーグでは、以下の3つの取り組みを通して、2026年度の排出量取引スタートに向けた準備を進めていきます。
参考サイト:GXリーグ
1.未来社会像対話の場 – GX FUTURE MAP
2050CN(2050年にカーボンニュートラル)が実現した未来の経済社会システムを「ビジネス機会」として描き、官民ルールメイキングや賛同企業の中長期の経営戦略・事業開発・研究テーマ開発などに活用できるものとしてまとめます。(バックキャスティングによる将来機会開発)
2.市場ルール形成の場 – GX WORKING GROUP
「市場ルール形成の場」とは、将来のビジネス機会を踏まえ、新市場創造に向けて官と民でルール形成を行う場です。
テーマ別に設定するルールワーキング・グループ(WG)では、ルールの設計から、実証、さらには世界に向けた発信等を行っていくことを目指します。
3.自由な創発・交流の場 – GX STUDIO
2050年CNを実現するための連携や創発、共創を推進するための、特に自由な「交流」の場。
主に賛同企業間における情報連携、相互理解・創発を行うための対話の場です。
GXスタジオでは月に1度テーマを定めたディスカッションや情報交換を行っています。
先行する欧州での市場
日本ではこれから市場が形成されていくのですが、先行するEUの状況を見ることで、日本のこれからを勉強しておくことはできます。
排出量取引を2005年からスタートしているEUですが、市場を形成するのが難しいことがわかります。
スタートした2005年は二酸化炭素1トンあたり15〜20ユーロで取引されて順調に開始したように見えましたが、その後急落し、2007年には同1ユーロという状況に陥っています。
その後、2008年には同30ユーロちかくまで急騰しますが、リーマンショックや省エネ政策の強化などから2009年は同10〜15ユーロで推移しています。なかなか価格が安定しない時期が続きます。2011年頃からはさらに取引価格が下がり、同3〜8ユーロでの取引となります。この価格が2017年まで続き、やっと価格が安定したようにみえました。
しかし、2018年から価格が上がってきており、2018年12月には同25ユーロとなります。2020年後半からさらに価格は上がり、2020年12月は同30ユーロを超え、2021年後半には一時、同80ユーロにも達しました。同100ユーロに達するのではないかと言われていましたが、同100ユーロまでには行かず現在では同80ユーロあたりとなっています。
このように、2005年からスタートしているEUでも価格が乱高下したり、外部要因や政策によって価格が低迷したりしています。日本ではやっと市場がスタートするところですので、中小企業なども2026年度の二酸化炭素排出量取引のスタートに向けて、このGXリーグの動きや、どのように取引をされているのかを確認しておくと良いでしょう。
まとめ
排出権取引はもともと二酸化炭素ではなく、二酸化硫黄を削減する際にアメリカで用いられました。
二酸化硫黄の削減では効果が見られたため、二酸化炭素の排出量削減にも効果が見られるか注目です。