身近な洋服が抱える環境問題|購入・使用で私たちにできるエシカル消費

身近な洋服が抱える環境問題|購入・使用で私たちにできるエシカル消費
LIFESTYLE

私たちにとって身近な衣服。

普段着からおしゃれな外出用の服、年に1度着るようなフォーマルな服もあれば、クローゼットの中に何年も寝かしてしまっている服もあるでしょう。

季節によっても服を変えるので、このように考えると一人の人間が持っている服の数は結構な量になります。また、衣服を購入できるお店も数多くあり、いつでも、気に入ったものを購入できます。

しかし、この服の生産工程を見ていくと深刻な環境問題があるのをご存知でしょうか?

綿のTシャツ1枚を作るのに約2,700リットルもの水が使われる

綿のTシャツ1枚を作るのに約2,700リットルもの水が使われる

衣服の原料は様々です。自然の原料で一般的なものは綿で、吸水性、通気性、耐久性に優れています。そのほか植物では麻、動物から作られるウールや絹などもあります。これらを天然繊維と呼び、また原油を原料とした化学繊維ではポリエステルやナイロン、レーヨン、アセテートなどがあります。

天然繊維は自然にやさしく、化学繊維は環境負荷が高いように思われますが、実は異なることを知っていますか?

綿花と水の関係

たとえば、綿の衣服を作るためには、まず綿花を育てる必要があり、そこには大量の水が必要とします。綿花から繊維にする工程や、繊維から衣服にする工程、染色する工程などをへて、一つの衣服が完成します。国連の調査によると、簡単なTシャツ1枚作るだけでも、約2,700リットルもの水が使われているとされています。これは、人が2年半で飲む水の量に相当します

実際に、綿花栽培により、中央アジアにあった世界で4番目に大きいアラル海という湖が大幅に縮小し、干上がってしまいました。

化学繊維も環境負荷は大きい

一方、化学繊維も環境負荷は大きいです。化学繊維を使用した衣料品は約6割を占めると言われています。原油の採掘から精製、輸送、化学繊維の生産に至るまで、多くのエネルギーを消費しています。一説には、ポリエステルTシャツ1枚の製造で排出されるCO2の量は2.7kgともいわれています。

また、化学繊維の場合は、廃棄した際にマイクロプラスチックとして地球に残り、人も含めた生物への影響も懸念されています。このように衣服を生産し、私たちが購入し、廃棄することによって、環境に大きな負荷を与えていることを忘れてはいけません。

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ファッション業界では過去に大量廃棄が問題に

ファッション業界では過去に大量廃棄が問題に

今まで見てきたように、衣服を生産するのに、大量の水を使ったり、CO2を排出したりします。一方で、衣服は大量に生産されており、簡単に廃棄処分になっている現実があります。過去には、様々な企業で問題になりました。

バーバリーの廃棄問題

例えば、2018年にイギリスの高級ブランド・バーバリーが売れ残りを廃棄していたニュースが明るみにでました。過去1年間で約2,860万ポンド(当時のレートで約42億円相当)もの売れ残り商品を焼却・廃棄処分していました

そのほとんどが実際に着ることができたため、仮に焼却・廃棄をせずに定価よりも下げて販売すれば、多くの人が購入したでしょう。しかし、バーバリーは、ブランド価値や希少性を維持するために焼却・廃棄をしていました。

また、ファストファッションのH&Mも、2017年に売れ残った大量の衣服を焼却処分していることが明らかになりました。焼却は、安全上の理由などとしていましたが、大量生産・大量廃棄のサイクルを生み出している現状を改めて浮き彫りにしました。

ここで取り上げたのは、ニュースなどで大々的に取り上げられてものですが、ファッション業界が抱えていた問題の一部でしかありません。

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服の売れ残り品廃棄を防ぐための取り組み

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国内外では、既にこうしたファッション業界の問題を解決するための取り組みが行われています。

世界初はフランス

フランスでは、2022年に売れ残り品の廃棄を禁止する法律が施行されました。

売れ残った衣料品を含む新品の廃棄を禁止するもので、世界で初めての規制でした。企業に対し、売れ残った商品を寄付したり、リサイクル、アップサイクルなどしたりして再利用することを義務付けています。この強力な法規制は、ファッション業界全体に大きなインパクトを与え、他の国々にも影響を与え始めています。

また、EUでも2020年に新循環経済行動計画(New Circular Economy Action Plan)を発表しており、持続可能な製品やサービスのデザインについて法制化しました。この中に、「売れ残った耐久消費財の破壊禁止」や「市場における繊維材料の再利用」といった項目が入っており、ファッション業界に影響があると考えられています。

なお、日本では環境省が「サステナブルファッション」というサイトを開設して、啓発活動を行っているにとどまっています。法律での規制ではないので、私たち消費者一人ひとりの自主的な行動が重要となります。

海外企業は対策を始めている

様々な問題を受けて、アパレル企業も対策に乗り出しています。廃棄処分が問題になったバーバリーは売れ残り商品の焼却処分を禁止すると発表し、毛皮使用も廃止する方針を示しました。

各アパレルメーカーは、オーガニック素材、リサイクル素材、アップサイクル素材、再生ナイロンの採用を拡大させています。また、毛皮使用については、グッチ、シャネル、プラダ、ヴェルサーチ、アルマーニなど、多くのハイブランドも使用廃止を宣言しており、動物福祉と環境負荷低減へのコミットメントを示しています。

まとめ|衣服を買う際には、背景に潜む問題にも目を向けてみよう

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衣服の環境問題は、大量生産・大量消費が生んだ結果とも言えます。そのため、メーカーだけでなく、私たち消費者が考えていくことも重要です。

衣服を購入する際に、本当に必要なものか、長く愛用できるものかを選ぶことが重要です。流行に流されないことも必要です。また、新品ではなく古着やリサイクル品を購入することも検討してみてください。

そして、購入後には手入れを丁寧にすることで、長く着用することができます。洗濯はもちろんのこと、アイロンがけや毛玉取りなど、ちょっとした手間をかけ、保管方法に気を配ることで洋服を長持ちさせます。

仮に、破れたり汚れたりしても、すぐに捨てるのではなく、修理を試してみたり、リメイクしてみたりしてみましょう。お気に入りの洋服を長く着続け、リメイクして別のアイテムとしてさらに長く愛用してみてください。

もし、クローゼットの中に、長く着ていない服があったら、状態を確認してみてください。まだ着られるようでしたら、捨てずにリサイクルショップやフリマアプリで売ったり、慈善団体に寄付したりしてみてください。もちろん洗濯をして、手入れをしてから渡して、次の人に活用できるようにしてください。

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