プラスチックごみ問題を微生物が解消!現状や今後の課題を解説
プラスチックは私たちの日常生活に欠かせない素材ですが、その廃棄物としてのプラスチックごみは、地球環境に深刻な問題を引き起こしています。
そんな中、プラスチックを分解する微生物の存在が注目されています。この記事では、プラスチックごみの現状から、プラスチックを分解する微生物について、また生分解性プラスチックのメリット・デメリットまでを詳しく解説します。
環境問題を深刻化させるプラスチックごみの現状や展望について理解し、豊かな地球環境創出への第一歩にしましょう。
プラスチックごみの現状
プラスチックごみの蔓延は深刻な環境問題です。毎年数百万トンが生産され、多くが海洋や自然環境に廃棄されます。
国際的には、8億トン超のプラスチックが1960年以来生産され、その約79%が埋立地や自然環境に堆積していると報告されています。この問題の解決策として生分解性プラスチックが近年注目を集めています。
生分解性プラスチックとは
生分解性プラスチックとは、自然界の微生物による作用で水と二酸化炭素等に分解される特性を持つプラスチックのことです。ここでは生分解性プラスチックの歴史や種類について解説します。
歴史
生分解性プラスチックの開発が始まったのは1970年代です。この時期、環境保護に対する関心が高まりを見せていました。従来のプラスチックは石油ベースであり、環境への悪影響が問題視されていたため、自然に戻ることが可能な新しいタイプのプラスチックを生み出すことが求められていたのです。
1980年代に入ると研究者たちは自然分解が容易な特殊な素材を開発することに成功し、1990年代にはそれらの生分解性プラスチック製品が市場に登場し始めました。この動きは、私たちが現代で環境に配慮した選択を増やすことに繋がっており、将来的にはさらに環境に優しい素材の開発が進むことが期待されています。
種類
生分解性プラスチックにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。
ポリ乳酸(PLA)
PLAは、とうもろこしやサトウキビなどの再生可能な植物資源から作られます。透明性が高く、食品包装材料や使い捨て食器などに利用可能です。しかし、分解には比較的高温が必要であり、家庭のコンポストでは分解が進まないことがあります。
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)
PBATは、石油由来の原料を使用しながらも、優れた生分解性を持っています。柔軟性が高く、袋やフィルムとしての応用が可能です。PBATは、土壌中で比較的速やかに分解されるため、農業用マルチフィルムなどに用いられることもあります。
ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)
PHAは、微生物によって生産される天然のポリエステルであり、海水中でも分解する能力があります。このため、海洋生物にとっての安全性が高いとされており、水産業での利用が期待されています。
熱可塑性デンプン(TPS)
デンプンを主成分とし、加工性を向上させるためにプラスチック化合物を添加している素材です。TPSはコストが低く、食品包装などに広く用いられていますが、耐水性にはある程度の限界があります。
これらの生分解性プラスチックは、従来の石油由来プラスチックと比べて環境負荷が少なく、土壌や水中で自然に分解される特性を持っています。それぞれの用途や特性に応じて選ばれることが多いです。
生分解性プラスチックのメリット・デメリット
生分解性プラスチックの使用にはいくつかのデメリットもあります。ここでは、生分解性プラスチックのメリットとデメリットを紹介します。
メリット
メリットは以下のとおりです。
自然界において微生物によって分解される特性
最大のメリットとして挙げられるのが、自然界において微生物によって分解される特性です。自然分解されることで、廃棄後の環境汚染リスクが低減され、プラスチックによる海洋汚染や土壌汚染の抑制に寄与します。
廃棄時の環境負担減少
従来のプラスチックと比較して、生分解性プラスチックは廃棄時の環境負荷が大幅に減少します。自然環境に放出された際に、数年で微生物によって分解されるため、プラスチックごみによる汚染問題の緩和につながるのです。
石油資源に依存しない種類もある
石油資源に依存しない生分解性プラスチックもあります。これらは、トウモロコシやサトウキビなどの再生可能な生物資源から作られるため、化石燃料の枯渇問題への対策にもなります。
廃棄物の処理コスト削減
生分解性プラスチックは、廃棄物の処理コスト削減にも貢献します。自然分解するため、焼却や埋め立てといった処理が不要になり、それに伴うエネルギーやコストの削減につながります。
海洋プラスチックではありませんが、下記の企業は「燃やさない」ことを条件とした新たなごみ処理方式を採用し、取り組みを行っています。ゴミ問題のCSRに関心がある方ほご覧ください。
企業イメージの向上
生分解性プラスチックを使用することで企業の環境に対する責任を示すことができ、消費者の環境意識が高まっている現代において、企業イメージの向上にもなります。
デメリット
次に、デメリットについて紹介します。
分解するためには特定の条件が必要
生分解性プラスチックは分解するために特定の条件を満たすことが必要です。
例えば工業的なコンポスティング施設での高温や特定の微生物がいる環境がなければ、通常のプラスチックと同様に自然界での分解には長い年月を要します。
家庭のコンポストでは分解されにくいため、一般のごみとして処理されることが多く、その場合、生分解性プラスチックのメリットはほとんど活かされません。
製造に自然資源を使用
生分解性プラスチックの製造には、従来のプラスチックと同様に、化石燃料を始めとする自然資源を使用することがあります。
これにより、温室効果ガスの排出や資源の消費といった環境問題を引き起こす可能性があるのです。
また、生分解性プラスチックを製造する過程で、農業用地を利用することがあり、食料生産との競合問題も指摘されています。
耐久性に劣る
生分解性プラスチックは従来のプラスチックと比べ、耐久性に劣ることがあります。
結果として製品の寿命が短くなり、頻繁な交換や買い替えにつながってしまうかもしれません。
環境に優しいとされる素材であっても、使用量が増えればそれだけ廃棄物が増えることになり、結果的に環境への負荷が大きくなる可能性があるのです。
有害な物質放出の可能性
生分解性プラスチックが環境に分解される際、有害な物質を放出する可能性があります。
これらの物質は土壌や水質を汚染するリスクがあり、生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されています。
リサイクルが難しい
生分解性プラスチックはリサイクルが難しいという問題があります。従来のプラスチックと混在するとリサイクルプロセスを妨げ、品質の低下を招く原因となります。
そのため、分別収集やリサイクル施設の整備が追いついていない現状では、適切な処理が難しいのが実情です。
分解できる微生物たち
プラスチックを分解する微生物は、実は自然界に多く存在しています。プラスチックをエネルギー源として利用し、分解する酵素を持っているのです。例えば「Ideonella sakaiensis」や「Rhodococcus属」「Pseudomonas属」などが挙げられます。
マイクロプラスチックの分解には、微生物が生成する酵素を活用して高分子鎖を小さな分子に分解するプロセスが含まれますが、すべてのプラスチックが分解されるわけではありません。また、分解速度も自然環境下では非常に遅いため、実用化には環境や条件の調整が必要です。
これからの課題
生分解性プラスチックやプラスチックを分解する微生物の研究は進んでいますが、実用化にはまだ課題があります。分解速度を上げることや、分解後の副産物が環境に与える影響の評価などを考える必要があるからです。
また、生分解性プラスチックの普及には、消費者の意識改革や法的な規制も必要です。
まとめ
生分解性プラスチックは、環境保護において重要な役割を果たしますが、その効果は私たちの取り組み方次第ともいえるでしょう。
消費者としての日々の選択は、環境影響という点で大きな力を持っています。毎日手に取る飲料のペットボトルや買い物袋など、使い捨てプラスチックの使用量を減らすことで、廃棄物の削減と資源の保全に寄与できるのです。
特に、生分解性プラスチック製品に切り替えることは、通常のプラスチックが引き起こす長期間にわたる環境への悪影響を抑える有効な手段です。
地球を守るための小さな一歩として、生分解性プラスチックを選んでみませんか?