昆虫食の「食用コオロギ」の問題点とは|味やデメリット、給食利用などの話題を解説
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昆虫食は、世界的な人口増加にともなう食糧危機問題の解決法のひとつとして注目されています。
近年、さまざまなスーパーマーケットやショップなどにも並ぶようになってきているので、目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
昆虫食の中でもコオロギは栄養価が高く、雑食で飼育もしやすいなどの理由から昆虫食の中でもメジャーな存在となりつつあります。
日本でも昆虫食ベンチャー「グリラス」などがチャレンジを行ったことは話題になりました。
また、2022年から2023年にかけて食用コオロギの粉末やエキス入りのメニューが学校給食で提供されたことをきっかけに、メディアや多くの人々の間で話題になりました。
環境に優しいなど食用コオロギの良い面がある一方、危険性があるなどの情報も多く出回っています。
そこで、この記事では食用コオロギの味やメリット、また注意点と話題になっているポイントについて解説します。
食用コオロギとは?
食用コオロギとは、食材として利用されるコオロギのことです。
食用として飼育され、高タンパク質で、必須アミノ酸を含んでいるため、牛や豚などの動物性たんぱく質の代替として利用されています。
基本的に食用コオロギは、粉末に加工されて他の食材に混ぜやすくした状態で使用されています。
飼育スペースが少なくて済み、成長が早く、生産効率が非常に高いため、持続可能な食糧源として注目されています。
コオロギが注目されている理由
ここでは、食用コオロギが注目されている理由を3つの観点から紹介します。
人口増加に伴う食糧の確保が必要
2050年には世界人口が100億人になることが予想されており、それに伴う食糧不足への対策が重要な課題となっています。
特に人間の生活において大切な栄養素であるタンパク質が不足すると言われています。
栄養素が高い
家畜の代替えとして、昆虫食が注目されている中、100gあたりのたんぱく質量が家畜よりも大きいコオロギが注目されています。
日本食品分析センターによると、コオロギのパウダーに含まれているたんぱく質量は
たんぱく質が多く含まれていることで有名な鶏のむね肉よりも多いそうです。
そのため、貴重なタンパク源の代替として注目されています。
環境への負担を軽減させるため
食用コオロギが注目されている理由はたんぱく質の量だけではありません。
昆虫を飼育する際に必要となる水や餌の量は、家畜と比べて圧倒的に少ないことから、環境への負担も軽減されると言われています。
食用コオロギのメリット・デメリット
食用コオロギには多くの利点がある一方、安全性などの不安点も指摘する声が上がっています。
以下で詳しい内容についてまとめてみました。
メリット
1高タンパクなど栄養が豊富である
牛肉や鶏肉よりもタンパク質が多いことがコオロギの特筆すべき栄養素です。
低脂肪であり、ビタミン・ミネラルや食物繊維も多く含まれていることから途上国における妊婦や子どもたちへの栄養改善食への転用も模索されています。
2SDGsへの貢献
まずは、コオロギは食糧問題に対応する食材であると言えます。
食用コオロギは、フェイクミートやフェイクフィッシュなどに並ぶ代替食品の一種として位置付けられるもの。
気候変動による農業への悪影響、世界情勢によるサプライチェーンの混乱などの背景がある中で、人口増加に備えることが必要不可欠となる今、食料として活用されてこなかった「未利用食材」としてコオロギが着目されています。
次に、地球に優しいことがポイントです。
飼育時の水資源消費や二酸化炭素の排出量が少ない点や、雑食であるコオロギは飼料の選択肢が多く、食品ロスとなっている食材の活用も可能な点から持続可能な食材として期待されています。
デメリットや課題
1 健康面への懸念
懸念事項として、重金属類(カドミウム等)が生物濃縮される問題が指摘されています。
コオロギはカドミウム、ヒ素など人体に有害な重金属を含む可能性があり、人間が食用とすると人体に健康被害が出るのではないか、といった疑念があります。
さらに、ゲノム編集や遺伝子組み換えによる人体への影響が未知数であるという点も挙げることができます。
コオロギを商業的に養殖するためには、ゲノム編集や遺伝子組み換えが用いられることとなります。
本来は食用コオロギのデメリットを改善するために使用されますが、発がん性のリスクやアレルギー反応を生み出す可能性も否定できません。
国内のコオロギベンチャー企業は安全なゲノム編集をしているとしていますが、日本はゲノム編集食品の表示義務がないことから、今後消費者が選択することが難しくなる懸念もあるのです。
2エサの確保やエネルギー問題
コオロギのメリットで紹介した「食品ロス解決」はデメリットにもなり得ます。
そもそもコオロギのエサとなる廃棄食品の調達や、乾燥したエサを好むコオロギの特性上エサとなる食品を乾燥させるためのエネルギーが必要となる問題もはらんでいます。
またコオロギに適した生育気温は約30度です。養殖時には年間を通して気温や湿度を管理する空調設備が必須となり、再生可能エネルギーの供給体制を整えることを前提としないと温室効果ガスの排出による環境負荷は避けられません。
食用コオロギを食べるにあたって注意点
食用コオロギを食べるにあたっての注意点はアレルギー反応が出るケースがあることです。
コオロギの皮部部に含まれる成分がエビやカニと同じであることから、甲殻類アレルギーのある人は特に注意する必要があります。
また、コオロギは古くは西日本の一部や中国で漢方として用いられてきました。
利尿の効用などがある一方で、「微毒性」を持つ漢方であるとされており妊婦には禁止されているため、注意が必要になります。
「毒」と聞くと毒薬など人間の生命を脅かすものとイメージされますが、漢方など東洋医学的な意味では「人間が本来持つ生体機能を補助する形で解毒を促す」と位置付けられています。従って微毒性であるとされているコオロギ漢方や食用コオロギは、ケースによっては注意が必要ですがいわゆる毒物ではないのです。
日本で昆虫食が流行るのは夢のまた夢?
2024年11月、食用コオロギの生産や商品開発を手掛けていたベンチャー企業が自己破産したことがわかりました。同社は食用コオロギの有用性についてSDGsなどの観点から発信していましたが、さまざまな誹謗中傷があり、最終的に資金繰りに行き詰まってしまったそうです。
「コオロギの安全性や衛生面は大丈夫なのか」「なぜ子どもの給食でなければいけなかったのか」などといった声がSNSで寄せられました。
給食はフードロスを減らす観点からも重要なシステムではありますが、虫に対して嫌悪感を示す人も少なくありません。そういった観点から、非難が浴びせられたという解釈もできます。
昔からイナゴや蜂の子など等の昆虫食を食べてきた日本ですが、現在はほどんどお店などでは見かけなくなりました。
地方の地域に行けば家庭の食卓で見られますが、食事のスタイルも海外の文化が多く取り入れられるようになり、昆虫食という形も受け入れがたくなっている状態にあるのかもしれません。
まとめ
食用コオロギは環境問題や食料危機に対応する昆虫食として期待がある一方、人間の食品としての安全性や流通システムの構築など課題は山積みです。
食の選択肢、多様性を増やす意味ではメリットが大きいですが、肉や魚に代わる持続可能なタンパク源としてはまだまだ発展途上の存在でしょう。
しかし、人口増加による食糧不足の問題は約25年後の未来まで近づいてきています。
ひとりひとりがこの地球に長く暮らしていくために、食べ物を残さず食べるなどのSDGsの取り組みに取り組んでいくことが大切になってくるのではないでしょうか。