16〜27歳のHPVワクチン接種がまだの人は確認を|定期接種で無料接種するために

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近年、若い女性の子宮頸がんの罹患が増えています。そのため、性的接触のある女性でHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンをまだ接種していない方は、2024年9月末までに1度目の接種を済ませると費用が無料になります。

接種の選択は自由ですが、無料にできる該当の年齢の女性、もしくはその年齢の子どもを持つ方は、本記事のHPVワクチンの重要性について読んでみてください。

そもそもHPVワクチンとは何か

HPVワクチンは、接種することで、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を防ぐことができます。HPVワクチンは2価・4価・9価という複数の種類があります。ヒトパピローマウイルスには複数の型があるため、2価はそのうち2種類の型のヒトパピローマウイルスに対応したものです。9価は9種類の型に対応しています。

ヒトパピローマウイルスへの感染はよくあることで、性経験のある女性の50%以上が、生涯で一度は感染すると言われています。そして、ヒトパピローマウイルスの感染が、子宮頸がんをはじめ、肛門がん、膣がんなどのがんや、尖圭コンジローマなどの病気の原因の一つとなっていることが分かっています。

ワクチンを接種することで、ヒトパピローマウイルスの感染から身を守ることができ、将来的に子宮頸がんなどの病気になりにくくなります。なお、日本産科婦人科学会によると、日本では子宮頸がんにより毎年約3,000人の女性が死亡しています。

しかし、このワクチンの難しい点は、現在流行している感染症に罹患することを抑えたり、重症化を抑えたりというものではないということです。効果は10年後、20年後のがんの罹患を抑えるものであり、効果がすぐに明確になるというものではありません。

複雑な定期接種の接種対象と接種回数

日本では、HPVワクチンの接種は定期接種となっており、対象者は無料で接種することができます。しかし、この対象者が非常に複雑になっているのでご自身もしくは娘、孫が対象なのかどうか、しっかりと確認しましょう。年齢によっては、今年度末までが定期接種の対象になっている可能性があります。

1つ目の枠|小学6年生~高校1年生の女性

まず1つ目の枠です。小学校6年生~高校1年生の女性が定期接種の対象です。この枠は、定期接種の枠として継続して存在します。現在、中学3年生の方は、来年度も無料で接種できます。小学校5年生の方は、来年度から接種ができます。

2つ目の枠|平成9年度生まれ~平成19年度生まれの女性

もう1つの枠が、平成9年度生まれ~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女性ですこれは後述しますが、一時期、国がHPVワクチンの積極的勧奨を差し控えており、その時期のワクチン接種率が大幅に低い状況になったためです。現在は積極的勧奨に戻っています。

この枠は、積極的勧奨を差し控えていた時期に接種を逃した方を対象としており、キャッチアップ接種と呼ばれています。そして、このキャッチアップ接種は今年度(2024年度)で終了します。

そのため、現在16歳~27歳の方で、まだHPVワクチンを接種していない方は、無料で定期接種を受ける最後のチャンスとなります。また、現在高校1年生の方も、来年度(2025年度)は無料で定期接種を受けることはできません。

なお、定期接種が終了しても、自費で接種は可能ですが、9価ワクチンの場合、全3回で10万円程度かかるとされています。接種する病院・クリニックによって多少金額が前後しますし、自治体によっては補助が出る可能性もあります。

接種回数は年齢によって異なる

接種回数も年齢によって異なります。接種の際に、医師にしっかりと確認しましょう。まず、ワクチンの効果を得るためには、複数回の接種が必要で、現在使われている9価のHPVワクチンは、15歳になるまでに接種する場合は2回接種です。

15歳になってから接種する場合は3回接種となっています。2回接種(15歳になるまでに接種)の場合、1回目と2回目の接種間隔を6か月空ける必要があります。3回接種(15歳になってから接種)の場合、1回目と2回目の接種間隔を2か月、2回目と3回目の接種間隔を4か月開ける必要があります。そのため、どちらの場合も、接種完了までに最短で6か月必要です。

なぜ今、HPVワクチンが問題になっているのか

HPVワクチンは一時期、積極的勧奨が差し控えられていました。これは副反応の疑いに関する報道が行われたことによります。HPVワクチンを接種した方に全身の疼痛、知覚障害、運動障害、記憶障害などの生活に支障をきたすような重い副反応の疑いが出た人が複数あると報道されました。

そのため、HPVワクチンの接種率はそれまで70%程度だったのが、0.4%や0.0%というように大幅に下がりました。

しかし、今では積極的勧奨に戻ってきています。これは、報道されていた副反応の疑いがワクチンによるものであることが必ずしも断言できないことが分かったためです。

まず、副反応の疑いで言われている症状は「機能性身体症状」と考えられ、HPVワクチン接種歴のない女子でも、HPVワクチン接種歴のある女子に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する人が一定数(12〜18歳女子では10万人あたり20.4人)存在することが分かりました。
※参考:第69回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、 令和3年度第18回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会

さらに、名古屋市で行われたアンケート調査(無記名)では、24種類の「多様な症状」の頻度がHPVワクチンを接種した女子と接種しなかった女子で有意な差がなかったことが示されました。このアンケート調査は、子宮頸がんワクチン被害者連絡会の要請もあり行われており、調査項目についても被害者連絡会の意見が反映されています。

このようにして、報道された副反応の疑いがワクチンによるものではないということが明らかになりましたが、積極的勧奨を差し控えた期間、ワクチンを打たなかった対象者が多く発生しました。現在のキャッチアップ接種は、この期間の方々をフォローアップするものです。

接種する・しないは個人の自由

もちろん、HPVワクチン接種でもコロナワクチンと同様に、発熱や疼痛といった一時的な副反応があります。その副反応の軽重は個々人によって異なるので、接種することによる副反応と、接種しないことによる将来的なリスクを比べて、自分で接種しないと判断するのも一つの考え方です。

しかし、現状では、キャッチアップ接種やいわれていた副反応の疑いの症状とワクチンの関係性が否定されたことなどの情報がいきわたっているとは言えず、接種率も伸びてきていません。

無料で接種できる期間が今年度末(2024年度末)までとなっており、1回目は9月までに接種することが必要となってきています。もし、「なんとなく」といった理由でHPVワクチンを接種していないのであらば、一度情報収集をしてみてください。

先行してHPVワクチンを接種している海外では効果が出ている

HPVワクチンを日本より先行して接種しているスウェーデンでは、HPVワクチンを接種することで、浸潤性子宮頸がんにかかるリスクを63%低下したことが報告されています。

これは、10~30歳の女性1,672,983例を対象にした調査結果です。接種年代別の調査では、17歳未満で接種した場合、リスクは88%低下し、17~30歳で接種した場合でも53%低下しました。

実際の浸潤性子宮頸がんの累積罹患率も出ています。HPVワクチンを接種していない人では、30歳までに10万例あたり94例でした。一方、17~30歳でHPVワクチンの接種を開始した人では、同54例、17歳未満でHPVワクチンの接種を開始した人では、28歳までに10万例あたり4例でした。

日本では男性への接種を補助する自治体も

東京都で男性のHPVワクチン接種についての補助もスタートされました。また、東京都以外でも以前から補助を出している自治体があります。海外ではHPVワクチンは女性だけのものではなく、男性も接種している国があります。そのため、日本でも男性への接種も進んでいくと考えられます。

男性は子宮を持たないので、子宮頸がんにかかることはありませんが、HPVワクチンを接種するメリットはあります。まず、子宮頸がん以外にもHPVワクチンが原因となる病気があります。男性の場合は、中咽頭がん、肛門がん、尖圭コンジローマなどです。

さらに重要なのが、男性がHPVワクチンを接種して、感染予防をすることで、性交渉によるHPV感染から女性を守り、子宮頸がんの予防にもつながります。自分の身体だけでなく、大切なパートナーの身体を守るという観点でも接種を検討してみてください。なお、男性の場合は4価のHPVワクチンの接種となります。

まとめ

子宮頸がん予防のためのHPVワクチン接種は、若い女性にとって重要な健康対策です。現在、特定の年齢層の女性は2024年9月末までに1回目の接種を済ませれば無料で受けられます。HPVワクチンは、子宮頸がんの主な原因であるヒトパピローマウイルスの感染を防ぎ、将来的ながんリスクを低減します。

過去の副反応報道により一時的に接種率が低下しましたが、現在は安全性が確認され、積極的勧奨が再開されています。海外の研究では、ワクチン接種により子宮頸がんリスクが大幅に低下することが示されています。

接種の判断は個人の自由ですが、無料接種の機会を逃さないよう、正確な情報収集をおすすめします。男性への接種も広がりつつあり、パートナーの健康を守る観点からも検討する価値があります。

最後に強調したいのは、HPVワクチン接種に関する決定は、十分な情報に基づいた自己判断が重要だということです。信頼できる医師や公的機関からも情報を収集し、自身の状況や価値観を踏まえて慎重に検討することをおすすめします。

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