電動キックボードのひき逃げ事件!乗る際のリスクや今後の法整備などの点から安全性を解説

電動キックボードのひき逃げ事件!乗る際のリスクや今後の法整備などの点から安全性を解説
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近年、都市部を中心に急速に普及が進んでいる電動キックボード(例:LUUP)。移動手段として手軽でエコな印象がある一方で、ひき逃げを含む交通事故が増加していることをご存知でしょうか?

2023年以降、全国各地で電動キックボードによる接触事故や逃走事件が報道され、「誰でも簡単に乗れる反面、責任意識が希薄になっているのでは?」といった不安の声も高まっています。

この記事では、「電動キックボードのひき逃げ事件」をテーマに、起こりやすいリスク、実際の事件事例、そして今後求められる法整備や安全対策について、分かりやすく解説していきます。

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増加する電動キックボードの事故とひき逃げ

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電動キックボードは、原動機付自転車(いわゆる原付)と同様の扱いを受けることも多く、法律上は車両として分類されます。しかし、そのことを知らずに無免許・ノーヘルで運転するケースも後を絶ちません。

特に問題となっているのが、「接触事故を起こしたあとに現場から立ち去る=ひき逃げ」という行為です。自転車の延長のような感覚で使っている人が多いため、事故の重大さを自覚せず「そのまま走り去る」ことが多発しているのです。

たとえば、2024年に東京・渋谷で発生した事件では、歩行者と接触し転倒させたにも関わらず、運転者はそのまま逃走。後日監視カメラの映像から身元が特定され、道路交通法違反(ひき逃げ)の容疑で書類送検されました。

電動キックボードのひき逃げ事件の実例

電動キックボードのひき逃げ事件の実例

ここでは、電動キックボードで起こってしまったひき逃げ事件の実例をご紹介します。

名古屋市中区での逆走ひき逃げ事件

2024年2月3日、名古屋市中区栄で、男性が電動キックボードにはねられ、鎖骨を折る重傷を負う事件が発生しました。​加害者は一方通行を逆走し、歩行者と衝突した後、その場から逃走しました。​事件の様子は防犯カメラに捉えられており、後日、加害者は逮捕されています。 ​

東京都豊島区での歩道走行中のひき逃げ事件

2023年9月、東京都豊島区東池袋の歩道で、電動キックボードを運転していた23歳の男性が、商業施設から出てきた60代の女性と衝突し、肋骨骨折などの重傷を負わせました。​加害者はその場から立ち去りましたが、後日、道路交通法違反(ひき逃げ)などの疑いで逮捕されています。 ​

京都市右京区での雨天時のひき逃げ事故

京都市右京区では、雨天時に電動キックボードを運転していた男性が、前方の歩行者に気づかず衝突し、転倒させる事故が発生しました。​加害者は救護措置を取らずに現場を離れましたが、後日、警察からの連絡を受け、過失運転致傷罪および道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで取り調べを受けています。

電動キックボードに潜む3つのリスク

電動キックボードに潜む3つのリスク

上記の実例のように、電動キックボードにはリスクが潜んでいます。ここでは3つに分け、リスクについて紹介します。

1. 法律の理解不足による「無意識の違法行為」

電動キックボードの多くは、「特定小型原動機付自転車」として扱われ、最高速度20km/h以下・車道走行が義務付けられています。にもかかわらず、歩道を走ったり、信号を無視したりと、交通ルールを守らない運転が目立ちます

また、ヘルメットの着用が努力義務に留まっていることもあり、「安全運転の意識」が低下しがちです。こうした背景が、事故の多発やひき逃げの温床になっています。

2. 事故時の責任が重いことを知らない

「車と同じ扱い」である以上、電動キックボードによるひき逃げは重大な交通犯罪です。加害者には「救護義務違反」や「道路交通法違反」だけでなく、場合によっては刑事責任・民事責任・行政罰が課されます。

ひき逃げが認定された場合、懲役や罰金だけでなく、損害賠償額も数百万円単位になるケースがあります。軽い気持ちで運転してしまったことが、一生を左右するような事態につながるのです。

3. 加害者・被害者ともに保険の対象外になるケースも

万が一の事故に備えて、電動キックボード専用の保険に加入していないと、治療費や修理費を自腹で負担しなければなりません。さらに、シェアサービスを利用していた場合、事故時の補償範囲が限られていることも多く、加害者・被害者ともに泣き寝入りになるリスクもあります。

サステナビリティの視点から見た電動キックボードのメリット

サステナビリティの視点から見た電動キックボードのメリット
ひき逃げ事件や事故リスクが注目されがちな電動キックボードですが、一方で、環境負荷の軽減や都市の未来像に寄与する乗り物としても評価されています。特に以下のような面で、サステナブルな社会の実現に貢献する可能性を秘めています。

1. CO₂排出量の削減

電動キックボードは、ガソリンを使用せず電力のみで駆動するマイクロモビリティの代表格です。自動車に比べてCO₂排出量が圧倒的に少なく、短距離移動における脱炭素化の手段として注目されています。

都市部では「5km未満の移動」が非常に多くを占めており、こうした距離を電動キックボードに置き換えることで、公共交通や車に依存しないクリーンな移動が可能になります。

2. 都市の混雑緩和とスマートシティ化への貢献

電動キックボードは自動車ほどスペースを取らず、駐車場も小規模で済むため、都市部の交通混雑や駐車スペースの問題の緩和にも貢献します。シェアリングサービスを活用すれば、必要なときだけ使える効率的な移動手段として、都市のモビリティ全体の流動性向上にもつながります。

将来的には、IoTやGPSを活用したスマートシティ構想とも連動し、人の移動データの可視化や都市インフラの最適化にも役立つとされています。

3. 車に頼らないライフスタイルのきっかけに

気候変動や資源枯渇が叫ばれる今、車中心の移動手段を見直し、「徒歩+マイクロモビリティ」という新しいスタイルへの転換が求められています。電動キックボードは、その導入ハードルの低さから、誰でもすぐに試せるサステナブルな選択肢となります。

特に若年層や観光客を中心に「環境にやさしい移動」を意識する人が増えており、都市における新たなエコカルチャーの形成にもつながっていく可能性があります。

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現行の法規制と今後の課題

それでは、電動キックボードに関する現行の法整備はどのようになっているでしょうか。以下で見ていきましょう。

電動キックボードの分類と適用されるルール

電動キックボードは、最高速度や車体の仕様により以下のように分類され、それぞれ適用される交通ルールが異なります。​

  • 一般原動機付自転車:​最高速度が20km/hを超えるもの。運転免許、ヘルメット着用が義務付けられ、車道走行が基本となります。​
  • 特定小型原動機付自転車:​最高速度20km/h以下で、一定の基準を満たすもの。運転免許は不要ですが、16歳以上での運転が求められ、ヘルメット着用は努力義務となっています。​

しかし、これらの分類やルールが十分に周知されておらず、利用者の理解不足が事故増加の一因となっています。 ​

今後の法整備の方向性

電動キックボードの安全な利用を促進するため利用者への​交通ルールやマナーに関する啓発活動の充実、事故発生時の被害者救済のため保険加入の義務化が考えられます。

海外ではどうなっている?電動キックボードの導入事例と規制の比較

海外ではどうなっている?電動キックボードの導入事例と規制の比較

電動キックボードは日本だけでなく、世界中の都市で導入が進んでいます。特に欧米を中心に、都市のサステナブル化や渋滞緩和策の一環として利用が広がっていますが、その一方で事故やマナー問題も浮き彫りになっており、各国でさまざまな法規制が導入されています。

ここでは代表的な国の事例を紹介し、日本との違いについても比較してみましょう。

フランス|パリ市、シェアキックボードの「全面禁止」へ

かつてはキックボード大国とも言われたフランス・パリですが、2023年にシェアキックボードを全面禁止するという大きな決断を下しました。

背景には、速度超過・歩道走行・2人乗り・飲酒運転などのマナー違反の多発と、死亡事故の増加があります。市民からも「危険すぎる」という声が高まり、パリ市では市民投票の結果を受けて撤去を決定。現在、私有のキックボードは利用可能ですが、公共のシェアサービスは終了しています。

アメリカ|都市によって対応がバラバラ

アメリカではシェアキックボードのスタートアップが多数登場し、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨークなど大都市を中心に導入が一気に拡大しました。しかしその反動で、路上放置や事故、利用マナーの悪化が深刻化しています。

各都市で以下のような対応が取られています。

  • サンフランシスコ:シェア業者の台数制限+市の認可制
  • ロサンゼルス:ジオフェンシング(一定エリア以上では自動停止)
  • ニューヨーク:一部エリアでのみ許可制導入

全米で統一されたルールがあるわけではなく、「都市ごとの規制」で運用をコントロールしているのが特徴です。

利用者としてできる安全対策は?

誰でも手軽に乗れるからこそ、ひとりひとりの意識が重要です。以下は、今日からできる安全対策です。

  • 運転前に交通ルールを確認する(走行可能エリア、速度制限など)
  • ヘルメットを着用する(自分の命を守る最も簡単な手段)
  • 保険に加入しておく(賠償責任保険・自転車保険など)
  • 歩行者や車両への配慮を忘れない(思いやりが事故を防ぐ)

また、事故を起こしてしまった場合は、絶対に現場から立ち去らないこと。すぐに救護・警察への通報を行うことが、責任ある行動です。

電動キックボードの未来は“ルールと共に進化する”

ひき逃げ事件やルール違反といったネガティブな側面ばかりがクローズアップされがちな電動キックボード。しかし、正しいルールのもとで利用されれば、環境にも都市にも優しい移動手段としての大きなポテンシャルを持っています。

今後は、交通安全教育や法整備と同時に、その社会的価値や持続可能性を正しく伝えることが求められます。便利さと危険性のどちらかだけで語るのではなく、その“バランス”をどうとるかが、利用者・行政・社会全体に問われています。

まとめ|電動キックボードは便利だが、“軽い気持ち”が命取りになる

まとめ|電動キックボードは便利だが、“軽い気持ち”が命取りになる

電動キックボードは、都市生活において非常に便利な移動手段ですが、それと同時に一歩間違えば重大事故につながる車両であることを忘れてはいけません。

「ひき逃げ」などの事件を防ぐためには、利用者ひとりひとりが交通ルールを守り、安全と責任を持って乗ること。そして、制度としての整備も追いつかせることが急務です。

あなたが次に電動キックボードに乗るとき、その一台が「安全とルールの象徴」になれるよう、今一度、自分の運転を見直してみてください。

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