トランプ政権によって変わる「LGBTQ」|企業の施策にも変化が

トランプ政権によって変わる「LGBTQ」|企業の施策にも変化が
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2025年1月に米国の大統領が共和党のトランプ氏に交代しました。

これにより、前政権のバイデン政権から大きな政策の変更が行われています。それは米国の行政の効率化という名の人員の解雇、各国との貿易の関税の設定移民の排除公衆衛生や環境への予算削減芸術・文化面への予算削減などがあります。その中には、性的マイノリティへの対応も入っています。

これらの政策の発表により、各国だけでなく、企業、米国国民も対応に動いています。特に米国内の企業の多くが、LGBTQをはじめ環境などのSDGs施策については、大きく方向転換をしていっています。

まずは、LGBTQに関してバイデン政権の政策を見ていき、それをトランプ政権がどのように揺り戻しているのかを確認していきましょう。

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バイデン政権が推し進めたLGBTQの保護・推進施策

バイデン政権が推し進めたLGBTQの保護・推進施策

まず、バイデン政権は2021年の就任すぐにLGBTQの平等法案の成立を目指しました。これは下院では可決しましたが、上院では可決しなかったことは特筆すべき点です。

そのあと、2022年6月に「LGBTQの平等推進の行政命令」を発しました。これには、LGBTQの人たちの医療アクセスの保護や、コンバージョン・セラピーの禁止、教育機関での支援強化といった内容でした。

医療アクセスの保護

連邦政府の資金を受ける医療機関や保険会社に対し、性自認や性的指向に基づく差別を禁止しました。

コンバージョン・セラピーの禁止

コンバージョン・セラピーとは、同性愛者やトランスジェンダーに対して”矯正”、”治療”と称して、悪魔祓い、認知療法、ショック療法、拷問(虐待)のような様々な手段を使って、自らの性的指向/性自認を憎悪するよう仕向ける行為のことです。

これを連邦政府の資金を受けるプログラムで禁止し、連邦取引委員会(FTC)に対して詐欺的な商業行為として取り締まりました。

教育機関での支援強化

バイデン政権下では、教育省に対し、LGBTQの学生を支援するための政策やガイドラインの策定を指示しました。

このようなことをバイデン政権が打ち出したのは、一方でLGBTQに反対するような内容の州法が各地の州でできあがってきたということもあったようです。

このことからも、バイデン政権によって推し進められたLGBTQの保護・推進について、米国全体が認めたわけではなく、反対意見も少なからずあったことが分かります。

軍隊や政権ポストでも多様性を推進

そのほか、バイデン政権では軍隊におけるトランスジェンダー兵士の待遇改善も行われました。トランスジェンダーの兵士が軍隊に従事し、必要な医療を受ける権利を保障し、軍隊内での性別適合医療が再開されました。

多様性を象徴するように、政権のポストにLGBTQと公にしている人材の登用も進めました。運輸長官や、保健社会福祉省長官、大使、ホワイトハウス顧問などの役職で登用されました。

トランプ政権はバイデン政権の78の大統領令を無効化

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一方で、トランプ氏が大統領に就任してまず行ったのが、バイデン前政権が発令した78の大統領令の無効化。その中には、人種的平等の支援や、ゲイやトランスジェンダーに対する差別と闘う12の施策が含まれていました。

前述しましたが、バイデン政権下でも反LGBTQに関する州法が成立するなど、LGBTQへの考え方は一定ではありませんでした。特に共和党の強い州では、このような影響が強かったようです。そして、共和党のトランプ政権が立ち上がったことで、反LGBTQへの施策が動きだしました。

「性別は男性または女性のみ」とする政策の導入

トランプ大統領は大統領就任すぐの2025年1月に「Defending Women from Gender Ideology Extremism and Restoring Biological Truth to the Federal Government(ジェンダー・イデオロギーの過激主義から女性を守り、連邦政府に生物学的真実を取り戻す)」という行政命令に署名。

この命令により、連邦政府は性別を「男性または女性」の2つに限定し、性自認に基づく認識を撤回することが求められました。具体的には、パスポートやビザなどの公式文書で性別を「X」とする選択肢を排除し、性別適合手術やホルモン治療の推進を禁止したのです。

LGBTQに対する差別禁止規定の撤廃

バイデン政権下で制定されたLGBTQに対する差別禁止規定を撤廃する行政命令が発出されました。これにより、教育、医療、雇用などの分野でのLGBTQの権利保護が後退し、連邦政府の機関や契約者がLGBTQに対する差別を行うことが合法と見なされる可能性が高まりました。

未成年者への性別適合医療の制限

Protecting Children from Chemical and Surgical Mutilation(子どもたちを化学的および外科的な切除から守る)」という行政命令にトランプ大統領が署名しました。

この命令は、19歳未満の未成年者への性別適合手術やホルモン治療を連邦政府の資金で提供することを禁止するもの。医療機関に対してこれらの治療を行わないよう指示したのです。

DEI(多様性・公平性・包括性)プログラムの廃止

トランプ政権は、連邦政府の機関や高等教育機関におけるDEIプログラムを廃止しています。これにより、LGBTQを含むマイノリティグループへの支援が削減され、教育機関での多様性を促進する取り組みが後退したといえるでしょう。

今後の動向|LGBTQやDEIの活動を自粛・縮小する企業が現れている

今後の動向|LGBTQやDEIの活動を自粛・縮小する企業が現れている

このような米国での政策転換を受けて、今まで行ってきたLGBTQへの施策やDEIの活動を縮小する米国企業が増えてきています。

例えば、小売りのウォルマートや、ファーストフードのマクドナルド、自動車メーカーのフォード、飛行機メーカーのボーイングなどがすでに自社の活動の自粛を発表しています。

また、日本の自動車メーカーのトヨタもLGBTQ関連イベントのスポンサーシップを停止しました。影響は米国企業にとどまらず、米国に進出している日本企業にも広がってきています。

一方で、以前のまま活動を行うと発表した企業もあります。IT大手のアップルは、株主総会でDEIの取り組みの廃止を求めた株主提案を否決し、引き続き多様性を重視する姿勢を示しています。

今回の件でLGBTQに対する米国民の考え方は一様ではないことが分かりました。バイデン政権の保護政策が急すぎたための揺れ戻しという考え方もできます。

そのため、LGBTQについては、米国の政権によって今後も大きく揺れ動くことになるのが予想されるでしょう。世界有数の大国であるアメリカの動きは、世界が今後フォーカスされ続けます。日本に住んでいる私たちも、ぜひこの機会にLGBTQやジェンダーなどといった社会課題への知識を深めてみませんか。

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