教育が変えるアフリカの未来|知っておきたい現状と取り組み
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近年めざましい発展を遂げているアフリカ。
多くの国で年率5%を超える経済成長を続けており、「アフリカの世紀」と呼ばれる21世紀の有望な新興市場として世界から注目を集めています。
経済成長を続けているアフリカですが、依然として多くの課題が残されている地域でもあります。貧困、飢餓、インフラ整備の遅れ、政情不安など、さまざまな社会問題が山積しています。
そのなかで大きな課題の1つが教育問題です。初等教育の就学率は改善傾向にあるものの、依然として約6,000万人の子どもたちが学校に通えていないと言われています。特に女子教育や地方部での教育機会の格差は深刻な問題となっています。
本記事では、アフリカの教育の現状や、各国政府・国際機関による取り組み、そして今後の展望についてご紹介します。
アフリカにおける教育の現状と課題
まずは、アフリカにおける教育の現状と課題について見ていきましょう。
教育へのアクセス
ここでは教育へのアクセスについて解説します。
就学率と中途退学率
アフリカの就学率は国によって差がありますが、教育を受けられない子どもの数が最も多いのがサハラ以南のアフリカ地域です。ここでは子どもたちの約5人に1人は小学校に通えていません。
また初等教育の修了率は約60%なのに対し、前期中等教育の修了率は約40%となっており、通学できても途中で退学をしてしまう子どもも多くいるのが現状です。
地域格差とジェンダー格差
アフリカの一部の地域では、学校までの距離が遠すぎるために通学を諦めるケースや通学路が整備されていないために、子どもが通うのには危険と親が判断し通学が困難な場合もあります。
また、女の子は結婚や出産のために学校へ通う必要がないという考えが残っている地域もあるため、男女平等に教育の機会を与えられていないことも問題となっています。
紛争や貧困の影響
内戦や紛争の勃発により、学校が破壊されたり占領されたりしたことによって学校に通えなくなった子どもも大勢います。また、生活を追われ難民になり教育を受けられないケースもあります。
またアフリカでは貧困層も多く、子どもを学校に通わせられるだけの経済的な余裕がない家庭も多いです。
教育の質
次に、アフリカの教育の質についてみていきましょう。
教員不足
アフリカでは学校や教員の数が子どもの数に対して不足しており、特に都市部から離れたエリアでは教員不足が深刻な問題となっています。
教育訓練を十分に受けられないまま教員になった大人も多くいるため、それが教育の質の低下にも繋がっています。
学習教材と教育環境の整備
アフリカは人口が増加し続けている地域です。子どもの数に対して学校数が少ないという問題を抱えていますが、ただ単に学校の数を増加しても教材や学校設備の不足が起こります。
また、いまだに安全な水や清潔なトイレの設備が整っていない学校が多いことも問題となっています。特に女の子たちにとって影響が大きく、トイレ設備が不十分なために月経中は学校を休まねばならず、授業に遅れをとってしまうという問題にも繋がっています。
教育と社会課題
教育と社会課題にも、複数の要素が絡み合っています。
児童労働と教育
アフリカの多くの家庭では農業を収入の柱としていますが、近年の気候変動で洪水や干ばつが起こり貧困状態に置かれています。
このような地域では、子どもを労働力とみなしている場合が多くあります。幼いころから家計を支えるために働く子どもたちは、教育を受けるチャンスを奪われてしまっているのです。
早婚と女子教育
アフリカでは18歳未満で結婚する児童婚が多く、それは女の子が教育を受けられない要因となっています。たとえ通学できていたとしても、妊娠を機に学校を中退しなければならない場合もあります。
HIV/AIDSと教育
エイズ孤児(エイズによって親を失った18才未満の子ども)の多くが、サハラ砂漠以南のアフリカ地域にいます。
HIV/AIDSは健康上の問題だけでなく教育に大きな影響を与えます。例えば、親が発病したり死亡したりした場合は子どもが家計を支えなくてはならないため、学校に通うことを諦めざるを得ません。ユニセフの調査によれば、もっとも影響の大きい国々(ボツワナ、レソト、スワジランド、ジンバブエ)
ではとくにそれが顕著です。
学習の機会を奪われた子どもたちは、大人になってから就職の機会も得られず、経済的に貧しいまま生活をすることになるのです。
アフリカの教育における希望となる取り組み
近年、アフリカでは教育問題改善のためにあらゆる取り組みが行われています。
革新的な教育アプローチ
ここでは、教育のアプローチ方法についてみていきましょう。
ICTを活用した教育
ICTとは「Information and Communication Technology」の略称で、情報通信技術を意味します。つまり、ICT教育とはPCやタブレット、インターネットを用いた教育方法のことです。
特にルワンダは国を挙げてICT教育に力を入れています。その1つとして、インターネットを使用できるようにしたり、子どもたちへPCを無償で配布したりする取り組みが行われました。
遠隔教育とオンライン学習
新型コロナウィルスの感染拡大で対面授業の廃止や学校閉鎖の影響により、日本だけでなくアフリカでもオンライン授業のニーズは高まりました。
オンライン学習の導入は、さまざまな理由により通学できずにいた子どもたちにも質の高い教育を受けられるよいチャンスとなります。
しかし、都会から離れた農村部では、インターネットの普及が十分でない地域もありオンラインの授業に参加できない子どもたちもいるのが現状です。
NGOや国際機関の取り組み
世界中からアフリカのためにさまざまな支援が行われています。NGOや国際機関の取り組みをみていきましょう。
学校建設と教育支援
アフリカでは、子どもの数に対して学校が少ないという問題の改善のために、学校を建設し、多くの子どもたちが学校へ通えるような支援をしています。
また、学校があっても校舎が老朽化しているというケースも多くあります。古い校舎の修繕を行うことで、子どもたちが安全な学び舎で学習できるようにサポートしているのです。
教員養成と能力開発
アフリカでは教員のスキル向上のため研修を行うことで、質の高い授業を行えるよう支援しています。このような支援活動は、子どもたちにとって基礎学力を確実に定着させられることにも繋がります。
奨学金制度と教育機会の拡大
アフリカには、成績優秀で向上心を持ちつつも経済的理由により進学が難しい学生もいます。そのような学生のために、奨学金を提供し留学をサポートする団体もあります。
奨学金制度は、彼らが夢を諦めることなく勉強に励める希望の制度となることでしょう。
まとめ|教育が変えるアフリカの未来
持続可能な開発目標(SDGs)では「質の高い教育をみんなに」が目標の1つとして掲げられています。質の高い教育を受けることは、将来安定した収入の仕事に従事し貧困から抜け出すことにも繋がっていきます。
そしてそれは、アフリカの発展にも好影響をもたらすのです。全世界の子どもたちには教育を受ける権利があります。
夢や希望に満ちた子どもたちが、自分が望む未来を歩んでいけるように教育機会を充実させることは、世界に課せられた重要なミッションです。