環境教育とは|学校での事例を推進される背景とともに紹介
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環境への取り組みが増えている昨今、「環境教育」が重視されていることを知っていますか。
「環境教育」は様々な企業や学校において取り組まれています。
本記事では、学校で子どもたちが取り組んでいる「環境教育」について、推進されている背景とともに事例をご紹介します。
環境教育とは
まずは、環境教育とは何なのかをご説明します。
環境教育とは
環境教育とは、私たちが自主的かつ積極的に環境保全活動に取り組んでいくために、様々な機会を通じて環境問題について学習する教育です。
温暖化や自然破壊など地球環境の悪化が深刻化している現在において、環境問題への対応が重要な課題となっています。
豊かな自然環境を守り、引き継いでいくためには、エネルギーの効率的な利用など環境への負荷が少なく持続可能な社会を構築することが大切です。
環境への負荷が少なく持続可能な社会を構築するために環境教育は注目されています。
環境教育推進の背景
1972年6月、ストックホルムで開催された国連人間環境会議で人間環境宣言が宣言されました。人間環境宣言における「共通の信念」のひとつとして、環境教育が挙げられたことで国際的に関心が高まりました。
日本では2003年7月に「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」=通称「環境教育推進法」が成立し、本格的に環境教育が行われるようになりました。
国民一人一人の環境保全に対する意識や意欲を高め、持続可能な社会づくりにつなげていくために成立した環境教育推進法は、2011年6月に全面改正され、「環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律」=通称「環境教育等促進法」となりました。
環境教育等推進法には、学校教育における環境教育の充実を推進する規定が整備され、改正をきっかけにさらに学校教育において環境教育が推進されるようになりました。
環境教育のねらい
- 環境に対する豊かな感受性の育成
- 環境に関する見方や考え方の育成
- 環境に働きかける実践力の育成
上記の3つが、環境教育のねらいです。私たちが自主的かつ積極的に環境保全活動に取り組むために必要な要素ともいえます。
これらの力を育むことを目標に、日本中の学校で環境教育が実践されています。
日本の教育での事例
では、日本の学校教育における環境教育の事例を紹介します。
けやの森学園
けやの森学園では、5歳児を対象に、「水はどこから生まれてどこへ行くのだろう」という子どもの身近な生活の疑問から、水のめぐりを究明するという 1 年間の生活の流れをつくっています。
活動の一例として、7月の川が海につながっていることを確認し、海の生き物と出会う磯遊び、12月の水について学んだことを絵画や造形で表現する生活作品展などが挙げられます。
このように水をテーマに、循環や自然との共生について幼児期から学べる体験型の環境教育を実施しているのです。
また、子どもが感じた疑問を率直に意見交換できる「子どもなんでも会議」をつくり、子どもたちが主体的に学ぶ姿勢を身につけられるようにしています。
また、けやの森学園の取り組みは、令和元年度環境教育体験活動優良事例に選ばれています。
広島県福山市立内海小学校
内海小学校では、次世代を担う子どもたちが「限りある資源を有効に使うために責任ある選択と行動ができる資質や能力を養う」ことを目指して環境教育に取り組んでいます。
子どもたちにとって身近な環境である「海」を学びの場として、
- 低学年は、身近な自然を楽しみ、自然のよさに気付くこと
- 中学年は、身近な自然や環境を守るための方法や取組について考えること
- 高学年は、身近な生活や環境から解決すべき課題について自分たちにできることを考えること
をテーマに活動をしています。
学びの中で子どもたちは、内海の環境の変化は温暖化によるものだけではなく、ごみのポイ捨てや山林の荒廃による藻場の減少、漁法の変化による獲り過ぎなど様々な原因から生じていることに気づきました。
内海の環境を守るために、地球温暖化の原因であるCO2削減や環境保全について自分たちにできることを考えて実践し、地域への情報発信も行っています。
新潟県三条市立大島中学校
大島中学校では、平成29年度からSDGsの視点を取り入れたエネルギー・環境教育に取り組んでいます。
環境教育の一環として、以下のような活動を行いました。
- 市民生活にかかるエネルギーとエネルギーの供給量を学習する取組として、地域不要日用品販売やエコキャップ・アルミ缶回収運動、シュレッダーゴミで紙薪づくり、使用済み割り箸での割り箸炭づくり体験
- ゴーヤグリーンカーテンの作成やエコクッキングなど、農村地帯の特色から、農作物の育成を通して食とエネルギーの関係を考える活動
- 地域の防災の現状から、防災時における発電を考えることで、エネルギーの重要性についての正しく理解することで行動力を高める学習
今後は学校内だけでなく、家庭や地域とも協働して活動を行っていくそうです。
また、大島中学校は、令和2年度新潟県環境賞を受賞しています。
世界の教育での事例
では、世界の学校教育における環境教育の事例をご紹介します。
ドイツ
ドイツでは就学前教育の1つとして、「森の幼稚園」という幼稚園があります。
一般的な幼稚園とは異なるのは、園舎を持たず、毎日森へ出かけていくスタイルであることです。
森の幼稚園では、自然の中で楽しく遊びながら様々なことを学び、人間性が培われます。
森の幼稚園を体験した子どもたちは、小学校の学習に適応し意欲的な生活を送っているという報告があります。
環境教育のねらいである「感性の育成」「自然に対する愛着心」「問題解決能力の育成」が森の幼稚園では自然に育成されているのです。
アメリカ合衆国
アメリカでは多様な環境教育プログラムが教材として利用されていますが、今回は1974年に始まったPLTをご紹介します。
PLTとは、幼児から高校生を対象にした木を通した環境教育プログラムです。人間が、命あるものとないものからなる世界と調和し生きるために必要な意識や知識、能力を身につけることを目的としています。
最も成功した環境教育プログラムとも言われており、日本でも国際理解教育センターがPLTの研修会を開催して、指導員の育成に取り組んでいます。
GLOBE Program
GLOBE Program(環境のための地球規模の学習及び観測プログラム)は、全世界の幼児・児童・生徒、教員及び科学者が相互に協力しながら、環境観測や情報交換をおこなう、学校を基礎とした国際的な環境教育のプログラムです。
全世界の個々人の環境に関する意識の啓発、地球に関する科学的理解の増進、理数教育においてより高い水準へ到達するための手助けとなることを目的としています。
アメリカを中心として世界各地にひろがっており、日本でも当時の文部省を中心とした指定事業として「環境のための地球学習観測プログラムモデル校指定事業」を開始しています。
環境教育の課題
重要性が高い環境教育ですが、なかなか普及しきらない現状があります。
続いて環境教育の課題をご紹介します。
授業時間の確保が難しい
学校教育では国語や算数といった基礎科目を中心にカリキュラムに則って学習の時間がとられます。
環境教育は主に生活や総合的な学習の時間に行われることが多く、限られた授業時間の中で充分な学習時間を確保することは難しいようです。
適切な教材やプログラム等の準備ができない
環境教育を推進するには、子どもの発達や実態を踏まえて指導計画を適切に作成し、指導を展開する必要があります。
プログラムにおいては、子供が身近な自然や社会、人々と意欲的に関わる多様な活動や体験を重視することが重要です。
活動や体験を中心に、問題解決の見通しを明確に意識させることや、多様な学習形態を取り入れ、子どもが主体的に調べたり話し合ったりする学習を行うことなど、子ども一人一人が問題解決を行うことができるような教材やプログラムを準備しなければなりません。
環境教育に必要なのはこれまで使用してきた”カリキュラムの内容を教える”ような教材やプログラムとは異なり、情報を収集したり活用したりする力、論理的な思考力や表現力など、自ら環境に働き掛け、考え、行動化していく力が形成される学習活動を促す教材であるため、準備が難しいようです。
まとめ
本記事では推進される背景や、事例、課題とともに環境教育についてご紹介しました。
環境教育への理解は深まったでしょうか。
環境教育は、環境問題について取り組むだけでなく、その過程において子どもたちの思考力や課題解決能力、積極性など、今後必要とされる様々な力を育成することが可能です。
学校での取り組みも増えていますが、多くの課題が残り、未だ環境教育が充実しているとは言い難いのが現状です。
学校において、より充実した環境教育を行うには、地域や家庭の協力が不可欠です。
私たちも、近隣の学校や地域団体などで環境教育に協力できると良いですね。
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