私たちの生活に欠かせない物流業界の環境問題に対する取り組みを解説
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コロナ禍で人の消費行動が大きく変わり、EC(通販)の利用が大きく増えました。
中には、海外から荷物が届くこともあります。それを支えるのがトラックをはじめとした物流です。荷物量が増えても、トラックや飛行機、船、鉄道を駆使して、正確に荷物が届きます。
しかし、物流でもガソリンや軽油などを使用することで二酸化炭素を排出しています。
調査によると、2020年度の日本の部門別二酸化炭素排出量で物流部門は、17.7%を占め、産業部門(工場など)に次いで大きな割合です。
そのため、物流業界にも環境対策の波が押し寄せています。
物流業界の環境に対する取り組み
国内の物流ではトラックが主に使われ、そのほかにJR貨物などの鉄道、船も利用されています。
飛行機は日本の国内物流では離島などの特殊な地理的要因のある場所以外では、ほとんど利用されません。
それでは、国内物流においてトラック、鉄道、船で、二酸化炭素排出量が多いのはどれでしょうか?
トラック、鉄道、船の二酸化炭素排出量は?
国土交通省によると、1トンの荷物を1キロ運ぶのに発生する二酸化炭素の量は、自家用貨物車が1,215グラムで一番大きく、ついで営業用貨物車が216グラム、船が43グラム、鉄道が21グラムとなっています。
トラック
国土交通省のデータによると、トラックは自家用貨物車と営業用貨物車に分かれています。
自家用貨物車とは、自社の荷物のみを運ぶトラックのことです。営業用貨物車は日通やヤマト運輸、佐川、福山通運、西濃運輸などの会社が運行しているトラックのことになります。
営業用貨物車は、一台のトラックに多くのお客さんの貨物を載せることができるため、一台のトラックに乗せている貨物量を多くすることができます。さらに、戻りの貨物もあるため、往復で貨物を載せて運ぶことができ、積載効率が良いと言えます。
一方で自家用貨物車は、自社の荷物だけのため、トラックに満載にすることが難しく、さらに帰りは空で帰ってくることも多くなります。
そのため、貨物あたりの二酸化炭素の排出量が大きくなってしまいます。
船、鉄道
船や鉄道の二酸化炭素の量が少ないのは、大量の貨物を一気に運ぶことができるからです。
船、鉄道共に出力も大きいので、一隻や一編成での二酸化炭素の排出量は大きいですが、それ以上に大量の貨物を運ぶことができるので、1トンの荷物の平均をとると、環境に優しい輸送モードとなります。
しかし、船は港と港の間、鉄道は駅と駅の間でしか運ぶことができないのがネックです。さらにダイヤが決まっているため、貨物の発送、到着時間が限定されてしまいます。そのため、今までは、利用が限定的でした。
より環境に優しい輸送モードに転換する「モーダルシフト」
現在、物流業界では環境対策の波が押し寄せ、より環境に優しい物流を考えるようになって来ています。
そこで船や鉄道などの環境に優しい輸送モードが注目されています。
具体的には、長距離輸送の一部をトラックから鉄道や船に“輸送モード”を変える「モーダルシフト」が進んでいます。港や駅まではトラックで運び、そこから船、鉄道で運び、その先はまたトラックに戻って輸送を行います。
そうすることで長距離トラック輸送するより、物流の二酸化炭素を削減することができます。
トラックドライバーの労働環境も改善する
モーダルシフトを行うことは、環境対策だけでなく、トラックドライバーの労務環境も改善しています。
鉄道を利用する場合、ドライバーの輸送距離が短くなります。船の場合、鉄道と同じように荷物だけ船に載せて到着した先で別のトラックが荷物を運ぶ場合もありますが、トラックごと船に載せることもできます。
その場合、ドライバーは船に乗っている間は寝ることができ、疲労度は格段に少なくなります。
飛行機で進む環境対策
国際物流の場合は、飛行機と船が必須です。
飛行機の方がスピードは格段に早いですが、二酸化炭素排出量では船の方が少ないです。環境対策としては船を利用する方が良いですが、飛行機も環境対策を進めています。
飛行機を運用している航空会社では、既存の化石燃料と比べて二酸化炭素排出量を削減できるSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の利用を進めています。
SAFの原料は、原油ではなく、バイオマス由来であったり、飲食店や生活の中で排出される廃棄物・廃食油などであったりです。
これらを精製して、航空燃料として使用しています。実際には、化石燃料にSAFを混ぜて使用していますが、SAFの安全性は認められており、問題はコストとなっています。
しかし、航空各社も環境対策をする必要があり、SAFの導入目標数値などを公表しています。
まとめ
コロナ禍で、物流量が大幅に増えているなかで、物流でも環境対策が確実に進んでいます。
輸送モードを変更したり、燃料をより環境負荷の小さいものにしたりしています。
物流は身近ですが、あまり脚光をあびることはありませんが、それぞれ対策をしているので、皆さん、チェックをしてみてください。