サステナビリティ・リンク・ボンドとは?SDGsに取り組む企業が発行する債券
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近年、SDGsを推進する国、地方自治体、企業が増えています。
国、地方自治体、企業がSDGsの目標を達成することを目的にし、活動資金を調達する債券「SDGs債(ESG債と呼ばれる)」というものがあります。
今回は、SDGs債、ESG債の一つである「サステナビリティ・リンク・ボンド」について、解説していきます。
サステナビリティ・リンク・ボンドとは
サステナビリティ・リンク・ボンドとは、SDGs債に並ぶ環境債の一つ。直訳すると、「持続可能性に連動する債券」であり、国や地方公共団体・企業が設定したサステナビリティに関する目標の達成度合いによって変動する可能性のある債権のことです。
SDGsに取り組む企業が発行する債券「SDGs債」
国、地方自治体、企業が発行する「債券」とは、そもそもどんなものなのでしょうか。
会社が必要とするお金を集めるとき、銀行から借りる以外に、債券を発行してお金のある人(投資家)から借りる方法があります。投資家は会社や国がお金を借りた証明書として発行する債券を買うことで、お金を貸したことになります。
引用元:大和証券グループ
つまり、SDGs債とは、貧困や地球環境などの社会問題の解決に使う資金を調達するために、地方自治体や企業が発行する債券のことです。
環境対策を目的としたグリーンボンド
SDGs債の中で、環境対策を目的とした債券を「グリーンボンド」と言います。
サステナビリティ・リンク・ボンドもグリーンボンドの一つの形です。
グリーンボンドには、大きく分けて2つの組み立てがあります。
- 使用目的が決められているもの
- 使用目的は決められていませんが、ゴールとなる数値が決められているもの
前者の例では、太陽光発電のための設備投資や環境負荷の少ない設備への入れ替えための投資といったものが挙げられます。
この場合、想定のCO2削減量などを知ることはできますが、実際に削減できているかどうかまでは見られません。
後者の例では、債券を発行した企業・団体が、2030年までに2010年度比でCO2を50%削減といった目標値を立てます。目標値をサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)と呼びます。
そのため、目標値が実際に達成されたかどうかが明らかになります。債券の条件が達成できた場合と、なかった場合で変わってくるのも特徴です。
サステナビリティ・リンク・ボンドの発行事例
サステナビリティ・リンク・ボンドは「債券の条件が変わる」というのが特徴なのですが、少しわかりづらいので具体的な事例で見ていきましょう。
東急不動産が2021年に、サステナビリティ・リンク・ボンドを発行しています。SPTsとしては、2030 年度に温室効果ガス46.2%削減(SPT1)と2025 年度にカーボンマイナス(※)を達成(SPT2)の2つの目標を立てています。
そして、目標が実現できなかった場合は、償還日に「緑をつなぐプロジェクト」に関連した寄付先、その他類似の環境貢献団体等に支払うとしています。
支払う金額もSPT1、SPT2のそれぞれで社債発行額の0.25%と明示されています。
※自社の CO2 排出量を再生可能エネルギー創出などによる削減貢献量が上回る状態
このように目標値が達成できているかまで確認できるのがサステナビリティ・リンク・ボンドのメリットで、債券を発行する企業や団体に、実現の責任を持たせることができます。
滋賀県が地方自治体では世界初のサステナビリティ・リンク・ボンドを発行
滋賀県は今年、環境対策に使用するための資金を調達するサステナビリティ・リンク・ボンドを発行すると発表しました。
日本証券業協会によると、日本国内で公募されたサステナビリティ・リンク・ボンドは、2019年が初めてで2件、2020年は7件となっています。
さらに、滋賀県のプレスリリースによると、地方公共団体がサステナビリティ・リンク・ボンドを発行するのは世界で初めてということです。
滋賀県は今年4〜5月に発行し、発行額は50億円
滋賀県が発表したサステナビリティ・リンク・ボンドについて見ていきましょう。
市場公募債で、発行額:50億円です。
10年債(満期一括償還)となります。今年4〜5月に発行予定。取扱証券会社(主幹事)は、みずほ証券と野村證券になっています。
滋賀県がサステナビリティ・リンク・ボンドを発行した理由
滋賀県がサステナビリティ・リンク・ボンドの発行を発表した背景には、県が進める環境対策のタイミングがあります。
滋賀県では現在、CO2ネットゼロ推進のため、「CO2ネットゼロ社会づくり推進計画」の策定を進め、平成10年に策定した行動計画「環境にやさしい県庁率先行動計画(GOS)」の改定作業も行なっています。
GOSは、県のオフィス活動だけでなく、上下水道事業、学校、病院の運営といった県の事業全般における温室効果ガス排出量の削減を進めるための計画となっています。策定している計画実現のための資金調達となります。
一部報道では、滋賀県はSPTsを県庁の30年度のCO2排出量を14年度比50%削減としています。
SPTsを達成できなかった場合は、カーボンクレジット(炭素排出枠)の購入や環境関連団体への寄付、県の環境基金を積み立てることなどを考えているようです。
また、国際資本市場協会(ICMA)が定めるSLB原則に基づいて第三者機関の認証も得る予定です。
まとめ
環境問題に関する目標値が実際に達成されたかどうかが明確となる「サステナビリティ・リンク・ボンド」
地方自治体として初めてのサステナビリティ・リンク・ボンドを発行する滋賀県が、今後どのような環境対策をしていくのか興味深いです。