「燃やさない」選択|三豊市とエコマスターの出会いで始まった取り組み

バイオマス資源化センターみとよ

この取り組みを行っている企業・団体

株式会社エコマスター

株式会社エコマスターは、香川県三豊市で日本初となる「トンネルコンポスト方式」によるごみ処理施設「バイオマス資源化センターみとよ」を運営する企業です。廃棄物の生物分解処理や堆肥化のノウハウを有する株式会社パブリックと、固形燃料製造の西日本最大手の1つであるエビス紙料株式会社の共同出資により2010年に設立され、2017年に「バイオマス資源化センターみとよ」が稼働しました。現在香川県三豊市の事業所や家庭から出る年間約1万トンのごみを処理しています。

「燃やさない」選択|三豊市とエコマスターの出会いで始まった

三豊市は2006年に市町村合併で発足した香川県西部の新しい市です。合併当時、市域のごみ焼却炉は更新時期を迎えて、新しい焼却炉の建設がほぼ決まっていましたが、初代市長であった横山忠始氏は先進的な考えを持っており、「新しいごみ焼却炉は作らない」と宣言し焼却炉建設の計画を白紙撤回しました。

これを受け、三豊市は「燃やさない」ことを条件とした新たなごみ処理方式をプロポーザル方式で公募したのです。時を同じくして、2005年頃エコマスターの先代社長がトンネルコンポスト方式というごみ処理方法にイタリアで出会い、なんとか事業化できないかと検討していました。

予期せず三豊市の燃やさないごみ処理施設を建設したいことと、エコマスターのトンネルコンポスト方式によるごみ処理の事業化したいという2つの思いが、この時期に重なり合っていたのです。

エコマスターは三豊市のプロポーザルに応募し、厳正な審査の結果、日本初となるトンネルコンポスト方式が採用されました。

振り返れば、三豊市の「燃やさない」というプロポーザル公募とエコマスターの先代社長「トンネルコンポスト方式」との出会いがほぼ同時だったことは奇跡のタイミングだったといえるでしょう。このタイミングの合致が、その後日本初のトンネルコンポスト方式のごみ処理施設「バイオマス資源化センターみとよ」設立につながりました。

日本初の方法を進める上で立ちはだかった壁

壁と人型の模型

何事も初の取り組みには困難が付きまといますが、2011年から2017年の稼働開始までの6年間は、多くの人から「本当にそれでできるのか?」と言われ続けたといいます。市長がどれほど「やりたい」と言っていても、自治体の行政においては市議会で議決されなければなりません。当時の三豊市議会では、実績を重んじる議員が多く、日本初の試みに対しては大きな反発があり、理解を得るまでかなりの困難がありました。

もともとイタリアの技術だったため、新技術懐疑派からは、「日本とイタリアでは生ごみの内容が違う」「主食にしてもイタリアはパスタで日本は米と大きく違うのだから、イタリアでうまく運用されているからといって日本でも可能かはわからないではないか」という意見が寄せられました。

そこで反対派にも納得してもらうために行ったのは、小型のテストプラントを輸入して実際に三豊市のごみを使って処理することでした。

香川大学・山梨大学をはじめとする専門家の協力を得て、3年間にわたり数十回の実験を重ねた結果、燃やさず、臭気を出さず、排水を出さずに処理できる技術であることが客観的に実証され、採用されることようやく決まったのです。

原動力になったのは、「燃やせるごみを燃やさずに処理できたら間違いなく地球環境のためになる」という思いがエコマスターにあったからです。日本で前例がないことを行うのは多くの困難がありますが、現在ではごみを資源に変える全国初のモデル事業として高く評価されています。

「ごみを燃やす国・日本」から「ごみを資源にする国・日本」へ

一般廃棄物を焼却している国(上位10カ国)

世界中の7割のごみ焼却施設が日本にあるということをご存じでしょうか。

 ごみは埋め立てることが世界的な常識ですが、国土の狭い日本では埋め立て場がすぐにいっぱいになってしまいます。そこでごみの容量を減らす方法として焼却する方法が長年取られており、世界有数のごみ焼却国となっています。しかしこれは世界的にみると常識ではありません。

 また水分を含む生ごみなど多様なごみを一度に焼却する場合、化石燃料を使って高熱で燃やす必要があり、多くの二酸化炭素を排出してしまうのも懸念点です。とはいえこのごみ処理で排出される二酸化炭素は、日本全体の排出量の3%といわれています。ほとんどの二酸化炭素は石炭や石油など化石燃料を使った火力発電等のエネルギー産業が排出しているのです。

エコマスターの思いは、ごみ処理の3%という排出量を減らすというだけにとどまらず、ごみから生産される燃料を化石燃料の代替として世に送り出すことを進めていくところにあります。

 実際、昨今の脱炭素社会への移行や化石燃料の高騰なども後押しし、ごみから作り出す新しい燃料に対する注目も集まっています。

地域と共に成長する、エコマスターの循環型社会への今後の展望

空と道路

エコマスターでは、このトンネルコンポスト方式を多くの人に知ってもらうこと、さらに導入を検討している自治体や事業者へのアドバイスなども事業のひとつと考えています。

複雑な焼却施設と違ってトンネルコンポスト方式の施設は比較的単純な造りのため、建設整備が大手ゼネコンである必要はありません。その中でごみと微生物をどう混ぜるのか、ごみが燃料になるまで17日間どのように管理するのかといったノウハウを伝授しています。

 また年間3000人もの施設見学者も受け入れています。地域の児童、学生も見学にやってきますが、嬉しいのは学校でごみ処理を警察や消防と同じように市民の生活に欠かせない「社会的責任のある仕事」として紹介されていることです。

日本中に微生物を使ったトンネルコンポスト方式のごみ処理施設が増えて、環境問題やエネルギー問題などの解決の一助になり、サスティナブルな社会づくりを実現することが、エコマスターが目指す未来です。

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