三松堂印刷株式会社の「水なし印刷」に見る、印刷業界のCSR
強みに持つ「水なし印刷」とは
従来の印刷方法では水用添加剤を含んだ「湿し水」を使用しますが、水なし印刷とはそういった廃液を一切放出しません。「湿し水」の循環冷却といった作業がなく、刷版・印刷工程における二酸化炭素 排出量の削減にも寄与します。
地球環境に負荷をかけないこの印刷方法は、多くのお客様の環境レポートや会社案内のパンフレットなどに使用されています。
なぜ水なし印刷を始めたのか
三松堂印刷株式会社(以下、同社)が水なし印刷を始めたのは、およそ10~15年前ほどにさかのぼります。その頃から印刷業界的に環境意識の高まりがありましたが、まだそこまで進んでいなかったため、同社は印刷業界における水なし印刷のパイオニアとなる結果になりました。
同社では最も主力な工場が板橋にあり、その板橋工場にある巨大な機械2台を水なし印刷用として使っています。
水なし印刷を強みに持つ三松堂印刷の魅力
プロフィールでも記述したとおり、同社が持つ最大の強みは創業から120年という絶大な安心感。お客様に対する大きなアピールポイントでもあり、今後もその信頼性が拡大していくでしょう。
水なし印刷事業に積極的に取り組むことによって、同社の水なし印刷を目的として依頼をするお客様も多いといいます。主に金融機関をはじめとした業種の企業が多く、水なし印刷で作られた印刷物は「バタフライマーク」と呼ばれる環境に優しい認証マークを得られるために依頼も増えているそうです。
書籍の中で占める水なし印刷物の点数はそれほど多くないものの、会社案内のパンフレットをはじめとした印刷物に使われています。
印刷業界全体に言える「今後の課題」とは?
同社が今後の課題として抱いているのは、水なし印刷に対する消費者からの認知度の低さと印刷物のロスです。お客様に水なし印刷のサービス説明をしてもなかなか受け入れられない面もあり、また印刷物を受け取る側もバタフライマークという言葉すらも知らないことが多々あります。こういった認知度を上げていく取り組みが期待されます。
また、印刷物は販売・配布しきれなかった場合には廃棄されることも少なくありません。印刷物のロスは環境破壊に直接的につながってしまうため、需要と供給のバランスを取っていくことも今後の課題であると同社は考えているそうです。
印刷物に関してよく世間から言われている環境問題をなくしていくには、ただ1社のみが努力するだけではあまり意味を成しません。このため、同社は印刷業界が一丸となって環境に対する意識を改革していく必要があると考えています。今後取り組もうとしているCSR活動はまだ外に出せない情報が多いものの、今後も環境負荷削減のために活動を拡大していくことが予想されるでしょう。