11月はエコドライブ推進月間|制定の経緯や「10のすすめ」、自治体で確認された効果を解説

環境問題
11月はエコドライブ推進月間|制定の経緯や「10のすすめ」、自治体で確認された効果を解説

毎年11月は「エコドライブ推進月間」です。エコドライブとは、急発進や急加速を避けたり、車間距離にゆとりを持ったりすることで、燃料消費量やCO₂排出量を抑える運転方法のこと。「環境にやさしい運転」というイメージがあるかもしれませんが、燃料代の節約や安全運転にもつながる取り組みとして、国や自治体が普及を進めています。

しかし、なぜ11月がエコドライブ推進月間なのでしょうか。その背景をたどると、2005年に発効した京都議定書と、日本が温室効果ガス削減目標を達成するために進めた地球温暖化対策へ行き着きます。

この記事では、エコドライブ推進月間が制定された経緯から、現在推奨されている「エコドライブ10のすすめ」、さらに自治体の講習などで実際に確認された燃費・CO₂削減効果まで紹介します。

11月の「エコドライブ推進月間」とは

11月の「エコドライブ推進月間」とは

エコドライブ推進月間とは、警察庁、経済産業省、国土交通省、環境省からなる「エコドライブ普及連絡会」が、エコドライブの普及・啓発を重点的に行う期間です。

環境省はエコドライブを「環境負荷の軽減に配慮した自動車の使用」と位置づけています。理由は意外とシンプル。11月は紅葉や行楽などによって自動車を利用する機会が増えるシーズンだからです。

2006年に作成された「エコドライブ普及・推進アクションプラン」には、交通量が増える行楽シーズンなど、自動車を運転することが多くなる時期である11月を目途に、シンポジウムや講習会を集中的に実施することが明記されています。さらに国だけでなく、地方公共団体とも積極的に連携することが盛り込まれました。

2006年10月31日には環境省・国土交通省などが、同年11月を「エコドライブ推進月間」と位置づけることを発表。ポスターやチラシによる啓発、講習会などを通じて全国的な普及活動が始まりました。

現在ではすっかり毎年恒例の環境施策となっていますが、その出発点は約20年前にあります。

エコドライブ推進月間はなぜ始まった?制定の経緯を振り返る

エコドライブ推進月間はなぜ始まった?制定の経緯を振り返る

エコドライブ推進月間が始まった背景を理解するには、2000年代前半の日本の温室効果ガス排出状況を見る必要があります。

背景には京都議定書の「6%削減約束」があった

2005年2月、「京都議定書」が発効しました。京都議定書では、先進国などに温室効果ガスの削減目標が課され、日本は基準年である1990年度と比べて6%削減することを国際的に約束していました。

ところが、エコドライブ普及・推進アクションプランによると、2004年度の日本の温室効果ガス総排出量は、1990年度より8.0%多い状態でした。「1990年度から6%減らす」という目標に対して、実際には8%増えていたため、目標との差は14ポイントにまで広がっていたのです。

特に問題視されたのが、エネルギー利用によって発生するCO₂。そこで日本政府は2005年4月、「京都議定書目標達成計画」を閣議決定します。この計画のなかで、エコドライブは「環境に配慮した自動車使用の促進」のひとつとして位置づけられました。

警察庁、経済産業省、国土交通省、環境省の4省庁が連携し、国民への広報やエコドライブを実践しやすい環境づくりを進めることになったのです。

2003年にはすでに「エコドライブ10のすすめ」が誕生

政府によるエコドライブの普及活動そのものは、推進月間より少し前から始まっています。2003年度には4省庁による「エコドライブ普及連絡会」「エコドライブ普及検討会」が設置され、最初の「エコドライブ10のすすめ」が策定されました。

ただし、当時は自治体や関係団体によってエコドライブの説明や効果を示す指標にばらつきがありました。「アイドリングを何分やめるとどの程度燃料を節約できるのか」「どのような運転をエコドライブと呼ぶのか」といった情報が必ずしも統一されていなかったのです。

そのため、2006年のアクションプランでは、エコドライブの定義や効果指標を整理し、国や自治体、企業、輸送事業者などが共通した情報を使って普及活動を行うことも掲げられました。

2006年に「エコドライブ普及・推進アクションプラン」を策定

こうした流れを受けて、2006年6月にまとめられたのが「エコドライブ普及・推進アクションプラン」です。当時は2008年から始まる京都議定書の第1約束期間を前に、エコドライブを社会に定着させることが急務でした。

そこで2006年度から2008年度までの3年間を「エコドライブの重点的な普及・推進期間」とし、政府だけでなく、地方公共団体、関係団体、自動車メーカー、輸送事業者、ドライバーなどが一体となって取り組む方針が打ち出されました。

その普及・啓発策のひとつとして設定されたのが、11月の「エコドライブ推進月間」だったのです。つまり、エコドライブ推進月間は単なる交通安全キャンペーンとして誕生したわけではありません。

もともとは、京都議定書という国際的な温室効果ガス削減の約束を、日本国内の「一人ひとりの運転」という具体的な行動まで落とし込むためにつくられた施策だったといえます。

カーボンニュートラルや日本の脱炭素政策について詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。

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現在の「エコドライブ10のすすめ」とは

では、具体的にどのような運転をすれば「エコドライブ」になるのでしょうか。

エコドライブ普及連絡会では現在、「エコドライブ10のすすめ」を示しています。最初の10項目は2003年度に策定されましたが、その後複数回の見直しが行われ、現行版は2020年1月に改訂されたものです。2025年の政府発表でも、この10項目をもとに普及活動を続ける方針が示されています。

項目 内容
1 自分の燃費を把握しよう
2 ふんわりアクセル「eスタート」
3 車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転
4 減速時は早めにアクセルを離そう
5 エアコンの使用は適切に
6 ムダなアイドリングはやめよう
7 渋滞を避け、余裕をもって出発しよう
8 タイヤの空気圧から始める点検・整備
9 不要な荷物はおろそう
10 走行の妨げとなる駐車はやめよう

「エコドライブ」には、燃費を記録することや、渋滞を避けるために事前にルートを確認すること、タイヤを適切に整備すること、不要な荷物を積まないことまで含まれています。

たとえば松戸市では、「ふんわりアクセル『eスタート』」を心がけることで10%程度の燃費改善が期待できると紹介しています。また、タイヤの空気圧が適正値より50kPa不足すると、市街地では2%程度、郊外では4%程度燃費が悪化するとしています。アクセルの踏み方から車両のメンテナンスまで、いくつもの小さな行動を組み合わせるのがエコドライブの特徴です。

エコドライブにはどんな効果がある?

エコドライブにはどんな効果がある?

エコドライブが長年推進されてきた最大の理由は、燃料消費量を減らすことで、自動車から排出されるCO₂を抑えられることです。ただし、メリットは環境面だけではありません。

CO₂や大気汚染物質の排出を減らせる

ガソリンや軽油を使う量が減れば、それに伴ってCO₂排出量も減少します。

また、2006年のアクションプランでは、エコドライブは自動車から排出される窒素酸化物などの削減にもつながり、大気汚染対策にも役立つものとして位置づけられていました。地球規模の気候変動だけではなく、道路周辺の大気環境とも関わる取り組みなのです。

燃料代を抑えられる

燃費が向上すれば、同じ距離を走るために必要なガソリンや軽油の量も減ります。エコドライブは追加の設備投資をしなくても始めやすい点が特徴です。EVや低燃費車への買い替えにはまとまった費用が必要ですが、アクセル操作や車間距離、ルート選択などは、現在使っている車でも見直せます。

環境対策と家計・事業コストの削減を同時に狙える点は、エコドライブが長く続いてきた理由のひとつといえるでしょう。

安全運転にもつながる

急発進や急ブレーキを避け、車間距離に余裕を持つ運転は、安全運転とも共通します。警察庁も、エコドライブについて、環境保全だけでなく交通事故防止にも一定の効果が期待できるとして普及啓発を続けています。

環境に配慮するために安全と交通の流れを優先しつつ運転することが、そのまま安全性にもつながる。ここもエコドライブの特徴です。

エコドライブは本当に効果がある?自治体の取り組みを紹介

エコドライブは本当に効果がある?自治体の取り組みを紹介

「少しアクセルの踏み方を変えただけで、本当に燃費は変わるの?」と感じる人もいるでしょう。

実際、エコドライブ普及・推進アクションプランでも、エコドライブは「瞬時に効果がわかりにくい」ことが課題として挙げられていました。そこで政府は、燃費計や評価システムなどを活用し、「どれくらい燃費が変わったのか」を可視化することを重視しました。

さらに自治体で実施されているエコドライブの事例を分析・共有し、優れた取り組みを他地域へ広げることもアクションプランに盛り込まれています。自治体を対象としたモデル事業を実施し、一定期間エコドライブによる効果を調査する方針も示されました。ここでは、実際の効果測定例を見てみましょう。

九都県市|11月の実車講習で燃費32.7%改善、CO₂22.9%削減

埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県と、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市からなる「九都県市」は、エコドライブの普及を共同で進めています。

2014年11月には、埼玉・千葉・東京・神奈川の4会場でJAFと共同のエコドライブ講習会を実施しました。

参加者はまず普段通りの運転で燃費を測定。その後エコドライブについて学び、もう一度同様のコースを走行しています。その結果、11月の講習会では平均燃費が11.5km/Lから15.3km/Lへ向上。改善率は32.7%となりました。

また、測定したCO₂排出量は平均326.6gから251.7gとなり、22.9%減少しています。

かなり大きな差ですが、ここには注意も必要です。九都県市自身もこの数値は信号や歩行者などがいない講習環境で測定したものであり、改善率は車種や交通環境、道路状況などによって変化すると説明しています。

つまり「誰でも日常的に32.7%燃費が良くなる」という意味ではありません。それでも、同じ参加者がエコドライブを学ぶ前後で走行した際に、燃費やCO₂排出量に目に見える差が出たことは、運転方法とエネルギー消費の関係を示すひとつのデータといえるでしょう。

東京都|実車講習の参加者は平均約25%燃費改善

東京都も、九都県市などと連携して実車を使ったエコドライブ講習を行ってきました。東京都議会の2017年の答弁では、当時の過去3回の講習に参加した53人について、講習前後の燃費を比較したところ、平均で約25%改善したことが報告されています。

東京都はエコドライブについて、CO₂や大気汚染物質の削減に加えて、燃費向上や安全運転にもつながる取り組みとして普及を進めています。

現在は「運転の見える化」へ

自治体のエコドライブ施策も、単に「やさしく運転しましょう」と呼びかけるだけではなくなっています。

たとえば京都市は2026年度、京都府が主催するエコドライブコンテストに協力しています。この取り組みでは、普段使っている車でエコドライブを実践し、スマートフォンアプリによって運転挙動や安全運転の度合い、温室効果ガス排出削減量を可視化します。

実はこうした「見える化」という考え方も新しいものではありません。2006年のアクションプランの時点ですでに、瞬間燃費計などによって燃費改善効果をドライバーが確認できれば、エコドライブを継続するモチベーションにつながると指摘されていました。

約20年前に描かれた「自分の運転を数値で確認する」という考え方が、現在ではスマートフォンアプリなどを使った取り組みへ進化しているのです。

エコドライブだけで「移動の脱炭素」は実現できる?

ここまで見ると、エコドライブは非常に手軽で効果のある環境対策に見えます。一方で、エコドライブだけですべての交通由来CO₂をなくすことはできません。

ガソリン車である以上、どれだけ効率的に運転しても燃料を使用すればCO₂は発生します。

そのため現在の脱炭素政策では、エコドライブに加えて、EVなど電動車への転換、公共交通の利用、物流の効率化、鉄道や船舶へ輸送を移す「モーダルシフト」など、複数の取り組みが並行して進められています。

重要なのは、「車に乗るか、乗らないか」という二択だけではありません。車が必要な地域や生活もあります。だからこそ、必要な移動では燃料を無駄にしない。公共交通を利用できる場面では選択肢に入れる。企業の物流では輸送手段そのものを見直す。それぞれの状況に合わせて、移動に伴う環境負荷を少しずつ減らしていくことが大切です。

まとめ|11月をきっかけに、普段の運転を少し見直してみよう

まとめ|11月をきっかけに、普段の運転を少し見直してみよう

毎年11月に行われる「エコドライブ推進月間」は、2006年に策定された「エコドライブ普及・推進アクションプラン」をきっかけとして始まりました。

背景にあったのは、京都議定書によって日本に課された温室効果ガス削減目標です。国際社会で決められた「温室効果ガスを減らす」という大きな約束を、アクセルの踏み方や車間距離、タイヤの空気圧といった日常の運転まで落とし込んだのが、エコドライブという取り組みでした。

約20年が経過した現在でも、11月には国や自治体による啓発が続いています。そして自治体の実車講習では、運転方法を変えることで燃費やCO₂排出量が改善した例も実際に確認されています。

もちろん、エコドライブだけで気候変動問題を解決することはできません。それでも、今ある車を使いながら、特別な設備を購入することなく始められる点は、この取り組みの大きな特徴です。

行楽や紅葉などで車を使う機会も増える11月。遠くの環境問題を考えるだけではなく、いつものアクセルをほんの少しゆるやかに踏む。そんな身近なところから、移動と環境の関係を考えてみてはいかがでしょうか。

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