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日本は「移民政策に反対している国」というイメージを持たれがちです。ニュースやSNSでは日本国内で移民が事件を起こすたびに非難の声が挙がることも多く、移民(外国人)の受け入れに対しては主要政党のなかでも賛否が分かれます。
一方で「日本はこのまま移民受け入れをしていくのだろうか」「外国人労働者の受け入れは増加するのだろうか」と疑問に感じる人も多いのではないでしょうか。実際、日本では外国人労働者の受け入れが進んでいる一方で、海外の移民政策とは異なる制度設計が取られています。
日本が本当に移民に反対しているのかどうかを理解するには、感情的なイメージだけでなく、実際の制度や海外との比較を見る必要があります。この記事では、日本の移民政策の現状、反対意見の背景、歴史的経緯、そして今後の展望について詳しく解説します。
3分で分かる日本の移民政策
移民とは、出生国や国籍のある国を離れ、一定期間または永続的に他国へ移り住む人を指す言葉です。国際的に統一された法的定義はなく、国や機関によって対象や範囲が異なります。
そのため、日本で議論される「移民政策」も、外国人労働者の受け入れを指す場合と、永住・定住を前提とした受け入れを指す場合があり、文脈によって意味が変わります。まずは、「移民」と混同されやすい言葉との違いを理解することが重要です。
移民と外国人労働者の違いは、「生活の拠点を移す人」を指す概念か、「働くための在留資格を持つ人」を指す制度上の区分かという点です。
移民は、仕事や家族、教育などを理由に他国へ移り住み、長期間または永続的に生活する人を指します。一方、外国人労働者は、日本で働くために在留資格を取得し、一定期間就労する外国人を指します。
外国人労働者の中には、長期間日本で暮らし永住許可を取得する人もいますが、日本政府は外国人材の受け入れと移民政策は別のものと位置付けています。そのため、制度上は両者は区別されています。
移民と難民の違いは、自らの意思で移住するか、保護を必要として避難するかという点です。
移民は、就労や家族との生活、教育などを目的として他国へ移り住む人を指します。一方、難民は、戦争や紛争、政治的迫害、人権侵害などにより自国で安全に暮らせず、国際的な保護を求めて避難した人です。
また、両者は法的な位置付けも異なります。難民は1951年の難民条約などに基づき保護されますが、移民は各国の入国管理制度や在留資格制度に基づいて受け入れられます。そのため、多くの国では、移民政策と難民保護は別の制度として運用されています。
日本政府は、「移民」について法律上の明確な定義は設けていません。2024年の内閣答弁書では、「移民」や「移民政策」はさまざまな文脈で用いられるため、「一概に定義することは困難」としています。
その上で、政府は現在も「いわゆる移民政策は採らない」という方針を維持しています。政府がいう「移民政策」とは、「一定程度の規模の外国人及びその家族を、期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策」を指すと説明しています。
一方、日本では人手不足への対応として、特定技能制度や育成就労制度などを通じて外国人材を受け入れています。政府は、これらの制度は在留資格ごとに活動内容や在留期間を定めて運用するものであり、「移民政策」には当たらないとの見解を示しています。

まずは、日本の移民政策の現状がどうなっているかについて解説します。
日本政府は長年、「日本は移民政策をとっていない」との立場を貫いてきました。これは政治的な表現であり、国民感情への配慮や、移民に対する社会的不安を和らげる目的が背景にあると考えられます。
しかし現実には、経済のグローバル化と人口減少への対応として、外国人労働者の受け入れが進んでいます。実際には多くの外国人が、日本社会の基盤を支える存在となっており、政策と現実との間には明らかなズレが生じています。
特に2019年に導入された「特定技能制度」は、これまで「単純労働者の受け入れはしない」という方針から大きく転換するもので、建前としての「非移民政策」と、実際の外国人受け入れとの矛盾が浮き彫りとなりました。
その後、制度の運用はさらに拡大し、2023年の見直しで特定技能2号の対象分野が広がったことで、長期就労を前提とした在留外国人が今後さらに増えていくことが想定されます。
このように、表向きの言葉とは裏腹に、日本は事実上、移民政策を進めていると言える状況にあります。

日本の移民政策の歴史は、戦後にまでさかのぼります。
第二次世界大戦後、日本は焼け野原からの復興を進める中で、海外に移住していた日系人の一部を帰還させる政策を取りました。
特に南米、ブラジルやペルーなどに移住していた日系人が、1980年代以降に「日系人」として日本に戻ってくるケースが増えました。これらの人々は、比較的日本文化に馴染みやすいと見なされ、労働力不足を補う形で製造業などに従事しました。
しかし、実際には言語の壁や生活習慣の違いから、日系人であっても日本社会に完全に溶け込むことは簡単ではありませんでした。この経験は、日本社会にとって「見た目が似ていても文化的背景が違えば摩擦が起きる」という認識を広め、移民受け入れへの慎重論を強める一因となったと考えられます。
1990年代に制度化された「技能実習制度」は、開発途上国の人々に日本の技術を学んでもらい、それを母国に持ち帰って活かしてもらうという国際貢献を目的として始まりました。
しかし、実際には日本の人手不足を補うための労働力確保の手段として利用されるケースが多く、過酷な労働環境や低賃金、パワハラや人権侵害といった問題も多数報告されています。
このような制度の運用実態は、国内外から批判を受けることも多く、「制度の建前」と「現実の運用」とのズレが移民政策全体への不信感を生む要因ともなっています。近年では、技能実習制度の見直しや廃止、より実態に即した「特定技能制度」への移行などが検討されており、日本の移民政策のターニングポイントとなっています。
日本では、「移民」という在留資格は存在せず、外国人は目的に応じた在留資格ごとに受け入れられています。就労や留学、家族との同居など、活動内容に応じて在留資格が設けられており、それぞれ就労の可否や在留期間、家族帯同の条件などが異なります。そのため、日本の外国人受け入れ制度を理解するには、「移民」という言葉だけではなく、どのような在留資格で受け入れているのかを確認することが重要です。
| 在留資格・制度 | 主な対象 | 就労の可否 | 在留期間 | 家族帯同 | 永住との関係 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 専門職等 | 可 | 要確認 | 条件により可 | 要件を満たせば申請可能 |
| 特定技能1号 | 人手不足分野 | 可 | 原則通算上限あり | 原則不可 | 制度上の条件を説明 |
| 特定技能2号 | 熟練技能を持つ人 | 可 | 更新可能 | 条件により可 | 要件を満たせば申請可能 |
| 技能実習 | 技能移転 | 可 | 上限あり | 原則不可 | 育成就労へ移行予定 |
| 育成就労 | 人材育成・人材確保 | 施行後に運用 | 最新資料を確認 | 最新資料を確認 | 特定技能との接続を説明 |
| 永住者 | 永住許可を受けた人 | 制限なし | 無期限 | ― | 永住資格 |
表のとおり、日本の外国人受け入れ制度は、一つの制度で構成されているわけではありません。専門人材を対象とする在留資格、人手不足分野で働く人を対象とする制度、人材育成を目的とした制度など、それぞれ目的や対象が異なります。また、在留期間や家族帯同の可否、永住許可との関係も制度ごとに異なるため、外国人受け入れの仕組みは在留資格ごとに理解する必要があります。
出入国在留管理庁によると、2025年末時点の在留外国人数は412万5,395人で、過去最多となり、初めて400万人を超えました。在留資格別では「永住者」が最も多く、次いで「技術・人文知識・国際業務」「留学」「技能実習」「特定技能」となっており、日本では目的に応じた在留資格制度のもとで外国人を受け入れていることが読み取れます。
厚生労働省によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人となり、届出が義務化された2007年以降で過去最多を更新しました。前年から26万8,450人増加しており、外国人を雇用する事業所数も37万1,215か所と過去最多となっています。また、在留資格別では「専門的・技術的分野の在留資格」が最も多く、次いで「身分に基づく在留資格」「技能実習」「資格外活動」の順となっています。
在留外国人数と外国人労働者数は、集計対象が異なるため同じ人数にはなりません。
在留外国人数は、日本に中長期間在留する外国人全体を対象とした統計で、就労者だけでなく、留学生や家族滞在者、永住者なども含まれます。一方、外国人労働者数は、厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出に基づき、日本で実際に働いている外国人を集計したものです。
このように、対象とする外国人の範囲が異なるため、在留外国人数と外国人労働者数は一致しません。

移民政策を実行させようとする政党が多い一方で、反対の声もあります。なぜ反対の声が多いのか、詳しく見ていきましょう。
移民政策に対する反対の声には、いくつかの典型的な懸念があります。もっとも多く挙げられるのは、治安の悪化への不安です。特にメディアなどで外国人による犯罪が報道されると、それが大きく印象に残り、「外国人=危険」といった価値観を助長することがあります。
また、言語や文化、宗教などの違いが、地域社会との摩擦を生むのではないかという声も根強くあります。例えば、ゴミの出し方や地域のイベントへの参加の仕方など、生活習慣の違いによってトラブルが起きることもあります。こうした違和感や不安が積み重なることで、「移民は歓迎できない」という感情が形成されやすくなるのです。
経済的な側面でも、移民受け入れに対する不安は根強く存在しています。特に低賃金の外国人労働者が増えることで、日本人の仕事が奪われるのではないかという懸念や、労働条件の悪化が進むのではないかという不安があります。中小企業などで外国人労働者が急増した地域では、実際に地域経済や賃金水準に影響を及ぼすケースも報告されています。
また、外国人労働者が社会保障制度にどのように関与するのかという点でも、誤解や不信が生まれやすい傾向にあります。税金や保険料を適正に納めているにも関わらず、「ただで医療や福祉を受けている」と誤解されることもあり、これが偏見や差別を助長する要因ともなっています。
移民政策をめぐる議論では、「外国人が増えると犯罪が多発するのではないか」という懸念がしばしば語られます。統計上、外国人の検挙率が日本人よりわずかに高く見えることもありますが、これは移民に犯罪率が高くなりやすい若年男性が多いといった人口構成の違いによる影響が大きく、外国人であること自体が犯罪につながるわけではありません。
また、言語の壁や不安定な雇用など、社会的に不利な環境に置かれやすいことが、結果として犯罪リスクを高めている可能性も指摘されています。加えて、外国人犯罪が報道される際に国籍が強調されやすい点も、不安や偏見を増幅させる要因となっています。こうした背景が重なり、実態以上に治安悪化への懸念が広がっている側面があります。
日本が外国人の受け入れを進める理由は人手不足の解消だけではありません。経済・産業の成長、国際的な人材獲得競争への対応、そして将来にわたって国力を維持するための戦略など、複数の目的があります。以下では、それぞれの理由を詳しく解説します。
日本が外国人材の受け入れを進める理由の一つとして、少子高齢化による深刻な人手不足への対応が挙げられます。
日本では生産年齢人口(15~64歳)が減少を続けており、介護、建設、農業、宿泊業など幅広い分野で人材不足が課題となっています。こうした状況を受け、政府は外国人材を受け入れる制度を段階的に拡充してきました。
2024年には、技能実習制度に代わる新たな制度として「育成就労制度」を創設する法改正が成立しました。政府は、育成就労制度について「人材育成」と「人材確保」の両立を目的とした制度と位置付けており、国内産業を支える人材の確保を目指しています。
外国人材の受け入れは、日本の経済成長や産業の維持・活性化にも効果的です。
その理由は、企業の事業継続や生産活動が安定することで、地域経済や関連産業への波及効果が生まれるためです。
例えば、製造業や宿泊業、介護分野などでは、外国人材が現場を支えることでサービスや生産体制の維持につながっています。また、外国人材が地域で生活することで、住居や消費などを通じた地域経済への貢献も期待されています。
このように、外国人材の受け入れは労働力の確保だけでなく、日本経済や産業の成長を支える重要な役割も担っています。
また、世界的な人材獲得競争の激化も、日本が外国人の受け入れを進める理由の一つです。
近年はAIや半導体、デジタル分野などを中心に、高度な知識や技術を持つ人材の需要が世界中で高まっています。そのため、各国ではビザ制度の見直しや永住制度の改善などを進め、優秀な外国人材を積極的に受け入れる政策を打ち出しています。
日本もこうした国際的な動きを踏まえ、高度外国人材ポイント制の拡充や「J-Skip(特別高度人材制度)」の創設など、海外人材を受け入れやすい制度を整備しています。国内の人手不足への対応だけでなく、国際競争の中で優秀な人材を確保することも、日本が外国人受け入れを進める重要な理由の一つです。
外国人材の受け入れは、個別の人手不足対策ではなく、日本の将来を見据えた国家戦略の一つとしても位置付けられています。
政府は、外国人材を単なる労働力として受け入れるだけではなく、日本で安心して働き、生活できる環境を整備することで、社会全体の活力維持を目指しています。その考え方は、「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」にも示されており、日本語教育や行政サービスの充実、地域社会との共生などを進める方針が掲げられています。
このように、日本の外国人政策は、労働力の確保だけでなく、将来にわたって活力ある社会を維持するための長期的な国家戦略として進められています。

移民政策を巡る議論は、各政党の理念や支持基盤によって大きく異なります。ここでは、主要政党がどのような立場を取っているかを整理し、政治的な視点から移民政策の将来を考察します。

与党・自民党は、表向きには「移民政策は採らない」との立場を維持しつつも、人手不足への対応などを目的とした外国人材の受け入れは進める立場です。
一方で、2026年の政権公約では、外国人政策について「国民の不安と不公平感に正面から応える」ことを掲げ、出入国在留管理制度の見直しや税・社会保険制度の適正化、外国人による住宅・土地取得に関するルールの見直しなど、制度運用の厳格化を進める方針を示しています。このように、自民党は、外国人材の受け入れを進める一方で、在留管理や制度運用の厳格化を重視する立場を示しています。
また、立憲民主党と公明党が組んで新しく誕生した中道改革連合は、外国人材の受け入れについて、外国人が安心して働き、暮らせる環境整備を重視する立場です。政策では、外国人労働者の適正な受け入れ、日本語教育や生活支援、外国人の子どもの教育環境の整備などを掲げています。外国人を単なる労働力として扱うのではなく、地域社会を構成する一員として受け入れる仕組みづくりを進める考えを示しています。

一方、日本共産党は外国人労働者の権利保障や労働環境の改善を重視する立場を示しています。
2026年の政策では、外国人労働者を低賃金の労働力として扱うのではなく、日本人と同等の権利や労働条件を保障することを求めています。また、技能実習制度については、人権侵害や労働搾取につながる問題があるとして見直しを求めており、外国人労働者の受け入れ制度全体の改善を主張しています。そのため、現在の制度上の課題を解消しないまま受け入れを拡大することには慎重な立場を取っています。
参政党も、外国人受け入れの拡大には慎重な立場を示しています。同党の政策では、「日本人ファースト」の考え方を掲げ、日本人の雇用や所得向上を優先するとともに、外国人政策を一元的に管理する「外国人総合政策庁」の設置を提案しています。特定技能制度や育成就労制度については、日本語習得条件の厳格化や、高度な技術・専門知識を持つ人材を優先する仕組みへの見直し、非熟練・単純労働者の受け入れ制限などを掲げています。外国人材の受け入れ自体を一律に否定するのではなく、受け入れ規模や条件を厳格に管理することを重視する立場です。

日本政府は、「いわゆる移民政策は採らない」と説明しながらも、在留資格制度に基づいて外国人材の受け入れを進めています。実際に、日本に在留する外国人数や外国人労働者数は増加しており、外国人は日本の経済や社会を支える存在の一つとなっています。
一方で、外国人受け入れには、少子高齢化や人手不足への対応という側面がある一方、労働環境の整備、日本語教育、子どもの教育、地域社会との共生など、解決すべき課題も存在します。また、技能実習制度については、制度上の課題を踏まえ、育成就労制度への移行が予定されており、外国人材の育成と適正な受け入れを両立する仕組みづくりが進められています。
今後の外国人政策では、受け入れ人数の拡大や制限だけを議論するのではなく、制度の透明性、外国人労働者の権利保護、日本語教育や地域社会との関係づくりなど、多面的な視点から検討することが重要です。未来の日本に必要なのは、外国人受け入れを単純に推進・抑制するのではなく、人手不足への対応、社会制度への影響、受け入れる側と暮らす側の双方の視点を踏まえ、どのような制度が望ましいのかを慎重に判断していく姿勢です。
